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1・今日から猫です
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彼氏いない歴イコール年齢のアラサー。
趣味はネットと乙女ゲームと動画鑑賞の完全インドア。
テレオペ歴十年、猫撫で声だけは少し自信があります。それ以外は特になし。
死因は空から降ってきた人間の下敷き。
暫くネットで玩具にされそうな死に方だなと思いながら意識を失ったのは覚えている。
_____
「みゃう」
気が付いたら、見知らぬ森の中だった。
夢うつつの中、猫の声が聞こえた気がして目を開いたのだ。
酷く不安そうな子猫の鳴き声だった。
猫ちゃん、どこだろう。
探すつもりになってぼんやりしながら身を起こす。
立ち上がったつもりなのにいつもよりもずっと地面が近かった。
「みぃ?」
また子猫の可愛い声が聞こえる。かなり近い場所にいるようだが見当たらない。
辺りを見回すが木と草しかない。そこで自分がまだ四つん這いでいることに気づいた。
「んみゃっ」
立ち上がろうとして尻もちをつく。やっぱり猫の鳴き声が聞こえる。少し痛そうだった。
もしかして木の上にでもいるのだろうか。
木に登ったはいいものの、下りれなくなって助けを求める猫の動画やニュースは何回か目にしたことがある。
そう考えるとあの大きな木が怪しい。私はジャンプして太い木の幹に抱き着く。爪が引っ掛かって動けなくなった。
「にゅーん……」
もの凄く困った声で子猫が鳴いている。私も同じ気持ちだ。どうしよう。
人気のないこの場所で木にしがみついたまま一人でじっくり乾いて逝くしかないのか。
いや子猫は近くにいるけれど絶対助けにはならない。そもそも最初に助けを求めていたのは子猫だ。
「みゃうーん、みゃう……」
ほら今だって悲し気に鳴いている。助けてあげられそうになくて申し訳ない。
しかしどうしてこんな森の中に子猫が一匹でいるのか。捨て猫だったら捨てた人間は地獄に落ちるべきだ。
誰かこの子猫だけでも助けてあげて欲しい。できれば私のことも助けて欲しい。
私は大人だから両手両足の爪を木の皮からそっと抜いてくれるだけでいい。
そう祈り続けていると草をかき分けながら近づいてくる誰かの足音が聞こえてきた。
「みゃあん!みゃうう!みゅーん!」
それに勇気づけられたのか子猫も頑張って助けを求めている。
しかし本当に可愛いなこの声。売れっ子声優になれると思う。猫役専門の。
いやそもそも可愛くない子猫などいない。小さいものは大抵可愛い。子猫も子犬も人間の子供もだ。
そう結論付けた私の前に、金髪の天使が現れた。
今まで見た子供の中で断トツの美少女だ。彼女は迷わずに私の元へ向かってきた。
「こんな森の中で聞き間違いかと思ったけど、来てみてよかったわね」
ふわりと体が抱き上げられる。なるほど、垂直じゃなく少し持ち上げれば木の皮から爪は簡単に抜けるのか。
「お母様はいないの?ドジな子猫さん」
そう話しかけられて私はきょろきょろと辺りを見回す。やはり子猫はいない。
「ふふ、どこを見ているの。あなたのことよ」
成程。私が猫だったのか。そういや少し前に死んだ気がする。転生って結構早いな。生きてるだけで可愛い存在に転生って勝ち組じゃん。
しかし森の中で子猫一匹で生きていくのは無理ゲーが過ぎる。
私は自分を抱き上げた少女をじっと見つめた。本当に可愛い。そして高級そうな服を着ている。
何より私の鳴き声を頼りにここまで助けに来てくれた。優しい。好き。
よし、この天使様に飼ってもらおう。私は物凄く可愛い声で鳴いた。
「あなた人懐こくて可愛らしいわ。……私が嫌じゃないから、一緒にくる?」
うん。ぜひともそうする。
少女に優しく抱きかかえられたまま私は「んみゃあ」と元気よく返事をする。
ちゃんと返事をするなんてお利口さんね、そう笑うと彼女は子猫に生まれ変わった私を自分の屋敷へ連れて行った。
それが猫として転生した私と、悪役令嬢ベアトリスちゃんの運命の出会いだった。
趣味はネットと乙女ゲームと動画鑑賞の完全インドア。
テレオペ歴十年、猫撫で声だけは少し自信があります。それ以外は特になし。
死因は空から降ってきた人間の下敷き。
暫くネットで玩具にされそうな死に方だなと思いながら意識を失ったのは覚えている。
_____
「みゃう」
気が付いたら、見知らぬ森の中だった。
夢うつつの中、猫の声が聞こえた気がして目を開いたのだ。
酷く不安そうな子猫の鳴き声だった。
猫ちゃん、どこだろう。
探すつもりになってぼんやりしながら身を起こす。
立ち上がったつもりなのにいつもよりもずっと地面が近かった。
「みぃ?」
また子猫の可愛い声が聞こえる。かなり近い場所にいるようだが見当たらない。
辺りを見回すが木と草しかない。そこで自分がまだ四つん這いでいることに気づいた。
「んみゃっ」
立ち上がろうとして尻もちをつく。やっぱり猫の鳴き声が聞こえる。少し痛そうだった。
もしかして木の上にでもいるのだろうか。
木に登ったはいいものの、下りれなくなって助けを求める猫の動画やニュースは何回か目にしたことがある。
そう考えるとあの大きな木が怪しい。私はジャンプして太い木の幹に抱き着く。爪が引っ掛かって動けなくなった。
「にゅーん……」
もの凄く困った声で子猫が鳴いている。私も同じ気持ちだ。どうしよう。
人気のないこの場所で木にしがみついたまま一人でじっくり乾いて逝くしかないのか。
いや子猫は近くにいるけれど絶対助けにはならない。そもそも最初に助けを求めていたのは子猫だ。
「みゃうーん、みゃう……」
ほら今だって悲し気に鳴いている。助けてあげられそうになくて申し訳ない。
しかしどうしてこんな森の中に子猫が一匹でいるのか。捨て猫だったら捨てた人間は地獄に落ちるべきだ。
誰かこの子猫だけでも助けてあげて欲しい。できれば私のことも助けて欲しい。
私は大人だから両手両足の爪を木の皮からそっと抜いてくれるだけでいい。
そう祈り続けていると草をかき分けながら近づいてくる誰かの足音が聞こえてきた。
「みゃあん!みゃうう!みゅーん!」
それに勇気づけられたのか子猫も頑張って助けを求めている。
しかし本当に可愛いなこの声。売れっ子声優になれると思う。猫役専門の。
いやそもそも可愛くない子猫などいない。小さいものは大抵可愛い。子猫も子犬も人間の子供もだ。
そう結論付けた私の前に、金髪の天使が現れた。
今まで見た子供の中で断トツの美少女だ。彼女は迷わずに私の元へ向かってきた。
「こんな森の中で聞き間違いかと思ったけど、来てみてよかったわね」
ふわりと体が抱き上げられる。なるほど、垂直じゃなく少し持ち上げれば木の皮から爪は簡単に抜けるのか。
「お母様はいないの?ドジな子猫さん」
そう話しかけられて私はきょろきょろと辺りを見回す。やはり子猫はいない。
「ふふ、どこを見ているの。あなたのことよ」
成程。私が猫だったのか。そういや少し前に死んだ気がする。転生って結構早いな。生きてるだけで可愛い存在に転生って勝ち組じゃん。
しかし森の中で子猫一匹で生きていくのは無理ゲーが過ぎる。
私は自分を抱き上げた少女をじっと見つめた。本当に可愛い。そして高級そうな服を着ている。
何より私の鳴き声を頼りにここまで助けに来てくれた。優しい。好き。
よし、この天使様に飼ってもらおう。私は物凄く可愛い声で鳴いた。
「あなた人懐こくて可愛らしいわ。……私が嫌じゃないから、一緒にくる?」
うん。ぜひともそうする。
少女に優しく抱きかかえられたまま私は「んみゃあ」と元気よく返事をする。
ちゃんと返事をするなんてお利口さんね、そう笑うと彼女は子猫に生まれ変わった私を自分の屋敷へ連れて行った。
それが猫として転生した私と、悪役令嬢ベアトリスちゃんの運命の出会いだった。
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