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4.愛していないらしいです
しおりを挟む「ちっ、違うわ、やっぱり私はフェリクス様の恋人じゃありません!」
「さっきと言っていることが違うじゃない」
「それは、奥様が悪質な誘導尋問をしたからで、大体どうして急に別人みたいに……」
「何の騒ぎだ」
騒ぐマーベラに若干うんざりしていると横から声がかけられる。
「旦那様!!」
「フェリクス様」
そこには仏頂面のフェリクスが立っていた。
夕食時とは違う格好をしているのはワインで汚れた服を着替えたからだろう。
「奥様が、優位に離婚できるように私を嵌めたのです!」
マーベラが素早い動きでフェリクスの背中に隠れる。
これで恋人でも愛人でもありませんと言われて信じる方が馬鹿だろう。
記憶が戻る前のマリアンなら騙せたかもしれないが、私は違う。
前世でダメ男に引っかかり百万貢がされた上に三股された経験があるもの。
ちなみに浮気相手は偽妹と会社の後輩だった。
マーベラぐらい分かり易ければすぐ気づいてさっさと別れられたのに。
「彼女が自分はフェリクス様に愛されていると勝手に宣言しただけです」
「いや別に愛していないが」
「旦那様?!」
フェリクスのそっけない否定にマーベラは目と口を大きく開けた。
オーバーリアクション過ぎてちょっと笑いたくなったが慌てて表情を引き締める。
彼は愛してないと断言したがそれが真実かなんてわからない。
妻である私の手前嘘を吐いている可能性が当然ある。
それに愛してなくてもやることはやれるだろう。
だったら尚更マリアンに手を出さなかった理由はわからないけれど。
「でも彼女はフェリクス様の恋人なのかと尋ねたらそうだと答えましたよ」
「……何故そんな嘘を吐いた?」
私が追撃すると控えていたシェリアが頷いて同意する。
フェリクスは長い沈黙の後マーベラに尋ねる。声には隠しきれない困惑が滲んでいた。
「だ、だって、私の事をただのメイドだって馬鹿にするから……」
「俺の恋人だと偽って彼女より上の立場だと威張りたかったのか。マーベラ、君を本日付けで解雇する」
「この私をクビ?! あんまりよ、フェリクス!」
完全に立場を忘れたメイドをフェリクスは真紅の瞳で睨んだ。
それは凄い迫力だった。直接睨まれていない私でさえ身が竦んでしまう。
「君を雇い続けたのは乳母への恩と父との約束だからだ。しかしおぞましい嘘を吐く女は要らない」
部屋に戻りさっさと荷物を纏めるように。
フェリクスの冷たい声にマーベラは床に泣き崩れた。
彼女はメイドとして弁えなさ過ぎたのだ。
「さっきと言っていることが違うじゃない」
「それは、奥様が悪質な誘導尋問をしたからで、大体どうして急に別人みたいに……」
「何の騒ぎだ」
騒ぐマーベラに若干うんざりしていると横から声がかけられる。
「旦那様!!」
「フェリクス様」
そこには仏頂面のフェリクスが立っていた。
夕食時とは違う格好をしているのはワインで汚れた服を着替えたからだろう。
「奥様が、優位に離婚できるように私を嵌めたのです!」
マーベラが素早い動きでフェリクスの背中に隠れる。
これで恋人でも愛人でもありませんと言われて信じる方が馬鹿だろう。
記憶が戻る前のマリアンなら騙せたかもしれないが、私は違う。
前世でダメ男に引っかかり百万貢がされた上に三股された経験があるもの。
ちなみに浮気相手は偽妹と会社の後輩だった。
マーベラぐらい分かり易ければすぐ気づいてさっさと別れられたのに。
「彼女が自分はフェリクス様に愛されていると勝手に宣言しただけです」
「いや別に愛していないが」
「旦那様?!」
フェリクスのそっけない否定にマーベラは目と口を大きく開けた。
オーバーリアクション過ぎてちょっと笑いたくなったが慌てて表情を引き締める。
彼は愛してないと断言したがそれが真実かなんてわからない。
妻である私の手前嘘を吐いている可能性が当然ある。
それに愛してなくてもやることはやれるだろう。
だったら尚更マリアンに手を出さなかった理由はわからないけれど。
「でも彼女はフェリクス様の恋人なのかと尋ねたらそうだと答えましたよ」
「……何故そんな嘘を吐いた?」
私が追撃すると控えていたシェリアが頷いて同意する。
フェリクスは長い沈黙の後マーベラに尋ねる。声には隠しきれない困惑が滲んでいた。
「だ、だって、私の事をただのメイドだって馬鹿にするから……」
「俺の恋人だと偽って彼女より上の立場だと威張りたかったのか。マーベラ、君を本日付けで解雇する」
「この私をクビ?! あんまりよ、フェリクス!」
完全に立場を忘れたメイドをフェリクスは真紅の瞳で睨んだ。
それは凄い迫力だった。直接睨まれていない私でさえ身が竦んでしまう。
「君を雇い続けたのは乳母への恩と父との約束だからだ。しかしおぞましい嘘を吐く女は要らない」
部屋に戻りさっさと荷物を纏めるように。
フェリクスの冷たい声にマーベラは床に泣き崩れた。
彼女はメイドとして弁えなさ過ぎたのだ。
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