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【41】悪霊令嬢、フラグを意識する
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「なんで?」
そう不思議そうに尋ねる闇精霊の反応は予想外のものだった。
「なんでって……」
「ローレルたちが何考えてるのかはわからないけど、ルシウスのことなんて好きにさせたらいいじゃん」
あいつはリコリスを突き飛ばした人間だ。そうハイドラに言われて私はそれとこれとは別だと返す。
しかし何が違うのかと即座に反論され、私は内心戸惑った。
「だって、ローレルたちは薬を使って人の感情を操ろうとしているのよ?」
「だから?」
駄目だ。この理由はハイドラにとっては適切ではない。彼の冷たい瞳を見て直感する。
人道的な価値観は余り精霊には通じないのかもしれない。
いや、人間の中にもハイドラと意見を同じくする者はいるだろう。
実際ローレルは考えるだけでなく実行しようとしている。
それに私だってゲームでは深く考えもせず攻略対象の感情をシステムを使って操作してきた。
でも花スク内でルシウスがこのように婚約者に対して盲目状態になったことはない。まるでバグだ。
私の考えを見透かしたように黒髪の青年は優しく肩を抱いてくる。
「別にいいじゃん。アイツのことなんて好きじゃないんだろ?又元通り嫌われようよ」
「……元通り?」
「そう、ルシウスは元通り。でもリコリスは違う。もうアイツに振り回される必要はない。自由だ」
「私の自由……」
ルシウスがゲーム内のように婚約者を嫌って、ヒロインと恋仲になって、そして婚約解消を悪霊令嬢に告げる。
違う。婚約解消を申し出るのは私の方からだ。そうすればリコリスは破滅しなくて済む。
けれど、そんな結末を「世界」は認めるのだろうか。
本当にそれだけで何もかも上手く行くのだろうか。
心臓に刃物を刺し込まれたような悪寒に襲われ私は無意識に自らの胸に手を当てる。
私の意思で動く、私の体。けれど同時に悪霊令嬢リコリスの物でもある。
生まれた時からずっと自分の物だった筈なのに前世の記憶を取り戻してから借り物感が拭えない。
そのせいで知らずにゲーム内の結末に心が縛られ過ぎているような気がした。
私は自らの頬を軽く叩く。
「ハイドラはローレルを信頼し過ぎているわ。彼らが私に都合のいいことをしてくれると思う?」
それにルシウスがおかしくなった理由がわからないのは、矢張り気持ちが悪い。
色々思わせぶりな発言もあった。それにアヤナの暴走や暗躍めいたローレルの行動も気になる。
ゲーム脳で考えれば、今の状態は連続イベントの出だしのようなものだ。
「だって私ルシウスとろくに話していないのよ。それに彼は見舞いにすら来なかった、変よね?」
まずそこから確認しないといけない。私はハイドラにそう告げた。
ここで彼の言う通りローレル任せにすればきっとうやむやのままになってしまう。
ゲーム脳で考えるならフラグを折るという奴だ。
ルシウスとの恋愛フラグなら別にいいが、私の生存フラグの可能性もある。
勘に過ぎないが、それだと後々取り返しがつかないことになる気がした。
そう不思議そうに尋ねる闇精霊の反応は予想外のものだった。
「なんでって……」
「ローレルたちが何考えてるのかはわからないけど、ルシウスのことなんて好きにさせたらいいじゃん」
あいつはリコリスを突き飛ばした人間だ。そうハイドラに言われて私はそれとこれとは別だと返す。
しかし何が違うのかと即座に反論され、私は内心戸惑った。
「だって、ローレルたちは薬を使って人の感情を操ろうとしているのよ?」
「だから?」
駄目だ。この理由はハイドラにとっては適切ではない。彼の冷たい瞳を見て直感する。
人道的な価値観は余り精霊には通じないのかもしれない。
いや、人間の中にもハイドラと意見を同じくする者はいるだろう。
実際ローレルは考えるだけでなく実行しようとしている。
それに私だってゲームでは深く考えもせず攻略対象の感情をシステムを使って操作してきた。
でも花スク内でルシウスがこのように婚約者に対して盲目状態になったことはない。まるでバグだ。
私の考えを見透かしたように黒髪の青年は優しく肩を抱いてくる。
「別にいいじゃん。アイツのことなんて好きじゃないんだろ?又元通り嫌われようよ」
「……元通り?」
「そう、ルシウスは元通り。でもリコリスは違う。もうアイツに振り回される必要はない。自由だ」
「私の自由……」
ルシウスがゲーム内のように婚約者を嫌って、ヒロインと恋仲になって、そして婚約解消を悪霊令嬢に告げる。
違う。婚約解消を申し出るのは私の方からだ。そうすればリコリスは破滅しなくて済む。
けれど、そんな結末を「世界」は認めるのだろうか。
本当にそれだけで何もかも上手く行くのだろうか。
心臓に刃物を刺し込まれたような悪寒に襲われ私は無意識に自らの胸に手を当てる。
私の意思で動く、私の体。けれど同時に悪霊令嬢リコリスの物でもある。
生まれた時からずっと自分の物だった筈なのに前世の記憶を取り戻してから借り物感が拭えない。
そのせいで知らずにゲーム内の結末に心が縛られ過ぎているような気がした。
私は自らの頬を軽く叩く。
「ハイドラはローレルを信頼し過ぎているわ。彼らが私に都合のいいことをしてくれると思う?」
それにルシウスがおかしくなった理由がわからないのは、矢張り気持ちが悪い。
色々思わせぶりな発言もあった。それにアヤナの暴走や暗躍めいたローレルの行動も気になる。
ゲーム脳で考えれば、今の状態は連続イベントの出だしのようなものだ。
「だって私ルシウスとろくに話していないのよ。それに彼は見舞いにすら来なかった、変よね?」
まずそこから確認しないといけない。私はハイドラにそう告げた。
ここで彼の言う通りローレル任せにすればきっとうやむやのままになってしまう。
ゲーム脳で考えるならフラグを折るという奴だ。
ルシウスとの恋愛フラグなら別にいいが、私の生存フラグの可能性もある。
勘に過ぎないが、それだと後々取り返しがつかないことになる気がした。
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