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【31】悪霊令嬢、指摘する
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「ノンノン、言いがかりじゃないわよん。ルシウスきゅんの様子がおかしいのは三日前からだもの」
ナズナちゃんが気づいて私に知らせてくれたわ。そう言いつつ彼女は胸の谷間から紙切れを取り出す。
デフォルメされたルシウスやヒロイン、そして私らしきキャラのイラストが描かれたそれを皆に見せつけるようにして彼女は言った。
「これは私が調べたルシウスきゅんの好感度グラフだけれど、急激にアナタへの好意が爆アゲしてるのよぉん」
こんなの魅了の術や薬を使ったとしか思えないわ。豊満な胸を張り女教師は私を指差す。
こちらを犯人と自信満々に決めつけているが、寧ろその手段を行使していたのはゲーム内のヒロインだ。
そして気軽にそれを請け負っていたのはこの女教師な訳で。自分がしていたから他人もすると思い込まないで欲しい。
怒りと呆れと悔しさが綯交ぜになって逆に沈黙してしまう。
そんな私に幼い外見の担任教師がおずおずと話しかけてきた。
「ラディアータさん、人を強く愛した結果衝動的に過ちを犯すことはあると思います。でも、今呪いを解いてくれれば、まだ」
「そう、闇魔法の禁呪に高位の魅縛術があるのも調査済みよん。さあ反省してルシウスきゅんの呪いを解きなさい!」
そんな事を言われても心当たりが全くない。でも私がそう主張したところで信じて貰えない気がした。
だからといってやってもいないことを受け入れるなんて御免だ。反論する為に息を吸って吐く。
「バカバカしい、教師がこれだけ揃っていて恥ずかしくないの?」
今のは私の声ではない。
「ハイドラ……」
「証拠もなく犯人扱いとかマジうける。大体姉貴とそいつは昔から婚約してるんだぜ。何で今更魅了魔法を?」
その通りだ。リコリスがルシウスの心を縛ってでも独占したいなら今じゃなくても良かった。
それこそ学院に入る前に魅了魔法をかけてしまえば生徒たちには不審がられない。
ヒロイン相手に浮気だってされなかった筈だ。
「それはその……最近その魔法を使えるようになったのよん!」
「……馬鹿馬鹿しいこと」
今の台詞は私から吐き出されたものだ。
お助け魔女アヤナのことはゲームをプレイしていた時は嫌いではなかった。
変だけど頼りになっていつでもヒロインの味方で。だから今はこちらを睨みつける眼差しが少し辛い。
「私はそんな禁呪使えませんし、魅了術が使えるから犯人という理屈なら……先生も容疑者に含まれるのでなくて?」
先程の好感度グラフの他に生徒に頼まれて恋のおまじないをしている噂を知っていますけれど。
実際にその場面は見ていないが、ゲーム通りなら彼女は魔法で男子生徒のヒロインに対する好感度を上げることができる。
失敗作だが惚れ薬だって作れるのだ。
それをお気に入りというだけで生徒に譲渡するのだから今考えると大分ろくでもない。
「うっ、うぐぐぐ……なら証拠を持ってくるわよん!」
そう子供のような癇癪を起こして紫の魔女は姿を消した。
後には気まずい顔をした担任教師と、当事者の自覚が薄そうなルシウス。そして私たちと野次馬が残されている。
「男の癖にいつまでも泣いてるんじゃないよ」
「うわっ」
ハイドラがルシウスの顔面に自分のハンカチを投げる。叩きつけると言った方が正しいかもしれない。
さてアヤナはどういう証拠を持ってくるのだろうか。自作の惚れ薬を持ってきたら笑ってしまう。
ゲーム内だとあれは物凄い味で、栄養ドリンクだと勘違いして飲んだ攻略対象が一口で気絶するのだ。
ヒロインがそれを介抱することで好感度が上がりアヤナはそれを惚れ薬の効能だと勘違いする。
私がイベント内容を思い出していると、再び職員室に紫の魔女が出現する。
自慢の縦ロールが乱れていた。余程急いで来たのだろう。
「最初から用意しておけばよかったわん」
そう言いながら又胸の谷間から何かを取り出す。
「それは……」
「そうよ、貴女が渡そうとしたこのマフィンは惚れ薬が仕込まれていたのよん!」
彼女の手にはあの日リコリスが朝四時起きで作り、婚約者に受け取りを拒否されたマフィンが高く掲げられていた。
ナズナちゃんが気づいて私に知らせてくれたわ。そう言いつつ彼女は胸の谷間から紙切れを取り出す。
デフォルメされたルシウスやヒロイン、そして私らしきキャラのイラストが描かれたそれを皆に見せつけるようにして彼女は言った。
「これは私が調べたルシウスきゅんの好感度グラフだけれど、急激にアナタへの好意が爆アゲしてるのよぉん」
こんなの魅了の術や薬を使ったとしか思えないわ。豊満な胸を張り女教師は私を指差す。
こちらを犯人と自信満々に決めつけているが、寧ろその手段を行使していたのはゲーム内のヒロインだ。
そして気軽にそれを請け負っていたのはこの女教師な訳で。自分がしていたから他人もすると思い込まないで欲しい。
怒りと呆れと悔しさが綯交ぜになって逆に沈黙してしまう。
そんな私に幼い外見の担任教師がおずおずと話しかけてきた。
「ラディアータさん、人を強く愛した結果衝動的に過ちを犯すことはあると思います。でも、今呪いを解いてくれれば、まだ」
「そう、闇魔法の禁呪に高位の魅縛術があるのも調査済みよん。さあ反省してルシウスきゅんの呪いを解きなさい!」
そんな事を言われても心当たりが全くない。でも私がそう主張したところで信じて貰えない気がした。
だからといってやってもいないことを受け入れるなんて御免だ。反論する為に息を吸って吐く。
「バカバカしい、教師がこれだけ揃っていて恥ずかしくないの?」
今のは私の声ではない。
「ハイドラ……」
「証拠もなく犯人扱いとかマジうける。大体姉貴とそいつは昔から婚約してるんだぜ。何で今更魅了魔法を?」
その通りだ。リコリスがルシウスの心を縛ってでも独占したいなら今じゃなくても良かった。
それこそ学院に入る前に魅了魔法をかけてしまえば生徒たちには不審がられない。
ヒロイン相手に浮気だってされなかった筈だ。
「それはその……最近その魔法を使えるようになったのよん!」
「……馬鹿馬鹿しいこと」
今の台詞は私から吐き出されたものだ。
お助け魔女アヤナのことはゲームをプレイしていた時は嫌いではなかった。
変だけど頼りになっていつでもヒロインの味方で。だから今はこちらを睨みつける眼差しが少し辛い。
「私はそんな禁呪使えませんし、魅了術が使えるから犯人という理屈なら……先生も容疑者に含まれるのでなくて?」
先程の好感度グラフの他に生徒に頼まれて恋のおまじないをしている噂を知っていますけれど。
実際にその場面は見ていないが、ゲーム通りなら彼女は魔法で男子生徒のヒロインに対する好感度を上げることができる。
失敗作だが惚れ薬だって作れるのだ。
それをお気に入りというだけで生徒に譲渡するのだから今考えると大分ろくでもない。
「うっ、うぐぐぐ……なら証拠を持ってくるわよん!」
そう子供のような癇癪を起こして紫の魔女は姿を消した。
後には気まずい顔をした担任教師と、当事者の自覚が薄そうなルシウス。そして私たちと野次馬が残されている。
「男の癖にいつまでも泣いてるんじゃないよ」
「うわっ」
ハイドラがルシウスの顔面に自分のハンカチを投げる。叩きつけると言った方が正しいかもしれない。
さてアヤナはどういう証拠を持ってくるのだろうか。自作の惚れ薬を持ってきたら笑ってしまう。
ゲーム内だとあれは物凄い味で、栄養ドリンクだと勘違いして飲んだ攻略対象が一口で気絶するのだ。
ヒロインがそれを介抱することで好感度が上がりアヤナはそれを惚れ薬の効能だと勘違いする。
私がイベント内容を思い出していると、再び職員室に紫の魔女が出現する。
自慢の縦ロールが乱れていた。余程急いで来たのだろう。
「最初から用意しておけばよかったわん」
そう言いながら又胸の谷間から何かを取り出す。
「それは……」
「そうよ、貴女が渡そうとしたこのマフィンは惚れ薬が仕込まれていたのよん!」
彼女の手にはあの日リコリスが朝四時起きで作り、婚約者に受け取りを拒否されたマフィンが高く掲げられていた。
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