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【28】悪霊令嬢、見抜く
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私とルシウスは同じ学園で同じクラス。そして成績優秀で人気者の彼は学級委員長だ。
クラス担任が何時まで経っても教室に来なければ代表で様子を見に来てもおかしくはない。
だが、心の準備なしで顔を合わせたくはなかった。
まさか職員室で教師たちが居る中、以前のように突如キスしてくることはないと思うが。
それぐらいの常識は期待したい。そして速やかにこの場から去りたい。
「リコリス……」
「ルシウス、様……ごきげんよう」
繰り返し私の名を呼ぶ相手に仕方なく挨拶を口にする。いっそ無視すれば良かったかもしれない。
向うが呼び捨てならこちらも呼び捨てにするとか。行動をした後で色々思いつく。
内心モヤモヤとしている私を見つめたまま唐突にルシウスが微笑む。それは魅力的とつけても問題のない表情だった。
しかし私は以前のリコリスではない。ヒロインでも、美少年に憧れる女生徒でもない。
今まで嫌っていた婚約者に掌返しで甘い表情をする彼に真っ先に抱くのは警戒心だ。
ハイドラがそんな私をルシウスから隠すように一歩前へ出た。
「自分が突き飛ばしたオンナ前によくヘラヘラ笑えるね。いつもそうやって許してもらってんの?」
顔だけは良いもんな。刺々しさを隠さない台詞に場の空気が張り詰める。
そう相手を皮肉るハイドラも十分に整った顔をしている。
成程、そういった考えもあるのか。私は弟を演じる闇精霊の発言に心の中でポンと手を打った。
それは天啓のようだった。
リコリスに対するルシウスの別人のような対応が全部計算の上で行われていたとしたなら。
「……今後私を愛する代わりに、無かったことにしろってこと?」
ルシウスは一応私を突き飛ばして気絶させたことを不味いと思っていた。
だからその事実をどうにかしようと考えた結果、被害者である私を口説くことにした。訴えられない為に。
きっと彼が廊下で私と会ったのはお互いに想定外のことだったのだろう。
それでもリコリスの様子が今までと違うことに気づき、そこから強引に過去の私を好きだったと告白。
冷静に考えればこれは突き飛ばすくらい嫌っていた相手に掌返しで迫る為の言い訳だったのかもしれない。
昔の明るく優しい君が好きだった。今の君も同じだよね。だから俺のしたことも許してくれるよね。
そう言葉の裏で圧力をかけつつ、今までのリコリスがしていたストーカー行為を引き合いに出し牽制。
最後に呪いが解けたと強引に決定してキス。
これで自分にぞっこんな婚約者は思い通りになる筈。被害者を抱き込めば事件も消える。
そこまで考えて今目の前の彼が私に微笑みかけているのだとしたら。私は口を開いた。
「……どいて頂戴、ハイドラ」
「大丈夫かよ、姉貴」
そう言いつつ長身の闇妖精は私の前から横へと移動する。
私は正面で優雅に笑う婚約者を睨みつける。それでも彼は笑顔を崩さない。
既に嫌いな私にキスまでしたのだ。偽りの愛を捧げる覚悟は既に決まっているのか。
最初からそうしていればとは言わない。だけど。
「ルシウス様、私との婚約を解消してください」
尚更、そんなことが出来る人物と結婚なんてしたくない。
私は深々と頭を下げた。
クラス担任が何時まで経っても教室に来なければ代表で様子を見に来てもおかしくはない。
だが、心の準備なしで顔を合わせたくはなかった。
まさか職員室で教師たちが居る中、以前のように突如キスしてくることはないと思うが。
それぐらいの常識は期待したい。そして速やかにこの場から去りたい。
「リコリス……」
「ルシウス、様……ごきげんよう」
繰り返し私の名を呼ぶ相手に仕方なく挨拶を口にする。いっそ無視すれば良かったかもしれない。
向うが呼び捨てならこちらも呼び捨てにするとか。行動をした後で色々思いつく。
内心モヤモヤとしている私を見つめたまま唐突にルシウスが微笑む。それは魅力的とつけても問題のない表情だった。
しかし私は以前のリコリスではない。ヒロインでも、美少年に憧れる女生徒でもない。
今まで嫌っていた婚約者に掌返しで甘い表情をする彼に真っ先に抱くのは警戒心だ。
ハイドラがそんな私をルシウスから隠すように一歩前へ出た。
「自分が突き飛ばしたオンナ前によくヘラヘラ笑えるね。いつもそうやって許してもらってんの?」
顔だけは良いもんな。刺々しさを隠さない台詞に場の空気が張り詰める。
そう相手を皮肉るハイドラも十分に整った顔をしている。
成程、そういった考えもあるのか。私は弟を演じる闇精霊の発言に心の中でポンと手を打った。
それは天啓のようだった。
リコリスに対するルシウスの別人のような対応が全部計算の上で行われていたとしたなら。
「……今後私を愛する代わりに、無かったことにしろってこと?」
ルシウスは一応私を突き飛ばして気絶させたことを不味いと思っていた。
だからその事実をどうにかしようと考えた結果、被害者である私を口説くことにした。訴えられない為に。
きっと彼が廊下で私と会ったのはお互いに想定外のことだったのだろう。
それでもリコリスの様子が今までと違うことに気づき、そこから強引に過去の私を好きだったと告白。
冷静に考えればこれは突き飛ばすくらい嫌っていた相手に掌返しで迫る為の言い訳だったのかもしれない。
昔の明るく優しい君が好きだった。今の君も同じだよね。だから俺のしたことも許してくれるよね。
そう言葉の裏で圧力をかけつつ、今までのリコリスがしていたストーカー行為を引き合いに出し牽制。
最後に呪いが解けたと強引に決定してキス。
これで自分にぞっこんな婚約者は思い通りになる筈。被害者を抱き込めば事件も消える。
そこまで考えて今目の前の彼が私に微笑みかけているのだとしたら。私は口を開いた。
「……どいて頂戴、ハイドラ」
「大丈夫かよ、姉貴」
そう言いつつ長身の闇妖精は私の前から横へと移動する。
私は正面で優雅に笑う婚約者を睨みつける。それでも彼は笑顔を崩さない。
既に嫌いな私にキスまでしたのだ。偽りの愛を捧げる覚悟は既に決まっているのか。
最初からそうしていればとは言わない。だけど。
「ルシウス様、私との婚約を解消してください」
尚更、そんなことが出来る人物と結婚なんてしたくない。
私は深々と頭を下げた。
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