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【19】悪霊令嬢、呪う
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ルシウスへの対応とか今後の生き方とか、悩んでいたのが馬鹿みたいに私はあっさりと死んでしまった。
これはゲームでいうところのデッドエンドというものだろう。
私は突然侵入してきた黒髪赤目の人外美形に魔力やら生命力やらを吸い取られて多分死んだ。
こんな理不尽な死に方させるなんてクソゲー間違いなしだ。
「もしくは周回不可避な死に覚え系よねハハッ……ふっざけんな!」
誰もいないのをいいことに口汚く喚いてみる。
「走馬燈なんて見たくもないもの見せてくるし本当サイテー」
ごろりと寝転がりながら毒づく。
気を失った私が再び目覚めたのはリコリスの私室ではなく懐かしい六畳一間の一室だった。
けれど物で雑多としていた私の部屋ではない。入居者を待つ空室のようにほぼ何もなかった。
もしかしたら私が死んだ後、家族が引き払った後なのかもしれない。
ただ、小さな部屋に不釣り合いな程大きなテレビが鎮座している。
リモコンも操作ボタンもないそれは私のこれまでの人生をドラマのように垂れ流し続けていた。
それも体感三時間程で終わり今はブラックアウトしている。
無駄に長かったという気持ちと自分の二十数年は数時間で観終わる事ができるのかという虚しさが綯交ぜになる。
仕方ない。自分はつまらない人間だったのだから。
でも理不尽な事故で死んで転生した後も理不尽に襲われて死ぬのは結構酷いと思う。
自分がリコリスになっていることに気づいた時、慌てもしたけれど同時に未来を夢見ていたことにも今更気づいた。
「ルシウス君のストーカーなんて止めて婚約も解消して、やり直そうと思っていたのになあ……」
リコリスに転生した後の方が人生を勿体なく感じるのは皮肉だった。
そうだ、本当に勿体ないのだ。
「お金持ちの貴族で強い魔力持ちで、若くて美人なのに……滅茶苦茶勝ち組のプロフィールなのに」
折角そんな存在に転生できたというのに、記憶が戻った途端再び死ぬのか。悔し過ぎて腹が立ってきた。
とりあえず私を殺したあの男のことは末代まで呪うことにする。イケメン無罪を真に受けて貰っては困る。許せるのは精々強引にキスまでだ。
「ありがちだけどね?漫画とかで美形の悪役にキスされたモブが即死するとか?あるけどね? ……でも実際にするな!」
コラーゲンか何かのように人の生命力を摂取するとか傲慢が過ぎる。多少なら妥協するが死ぬまで吸うな。空腹の赤ちゃんでもまだ節度があるぞ。
それにルシウスは人を突き飛ばしておいて勝手にキスしてくるし、担任教師は大声で騒ぐばかりで頼りにならないし、挙句弟に成りすました魔物は殺してくるし。
折角花スクっぽい世界に転生できたのにまともなイケメンに一人も出会っていない。
「……死にたくない」
言葉とともに涙が零れる。
車に轢かれて死んだ時の数十倍は強い生への渇望。そして恨みつらみ。
「こんな、こんな勿体ない状況で、あっさり殺されて終わりなんて絶対嫌!せめて私を殺したあの男の魂だけでも一緒に連れていく!!」
呪詛を吐き出した途端、部屋が真っ赤な花で埋め尽くされる。鮮やかな紅色とすらりとした緑色の茎。
それはまるで美しい地獄のような光景だった。
「これは、彼岸花……?」
そう呟いた途端赤い花が炎に変わる。一輪だけではない。床を埋め尽くす程咲いた華が今、全て焔と化している。
「ひっ、やだ、いやだ……酷すぎるでしょ、これ……! よくわからないけど絶対、」
絶対に許さないから。
そう泣き叫ぶ私ごと大輪の炎は部屋を焼き尽くした。
これはゲームでいうところのデッドエンドというものだろう。
私は突然侵入してきた黒髪赤目の人外美形に魔力やら生命力やらを吸い取られて多分死んだ。
こんな理不尽な死に方させるなんてクソゲー間違いなしだ。
「もしくは周回不可避な死に覚え系よねハハッ……ふっざけんな!」
誰もいないのをいいことに口汚く喚いてみる。
「走馬燈なんて見たくもないもの見せてくるし本当サイテー」
ごろりと寝転がりながら毒づく。
気を失った私が再び目覚めたのはリコリスの私室ではなく懐かしい六畳一間の一室だった。
けれど物で雑多としていた私の部屋ではない。入居者を待つ空室のようにほぼ何もなかった。
もしかしたら私が死んだ後、家族が引き払った後なのかもしれない。
ただ、小さな部屋に不釣り合いな程大きなテレビが鎮座している。
リモコンも操作ボタンもないそれは私のこれまでの人生をドラマのように垂れ流し続けていた。
それも体感三時間程で終わり今はブラックアウトしている。
無駄に長かったという気持ちと自分の二十数年は数時間で観終わる事ができるのかという虚しさが綯交ぜになる。
仕方ない。自分はつまらない人間だったのだから。
でも理不尽な事故で死んで転生した後も理不尽に襲われて死ぬのは結構酷いと思う。
自分がリコリスになっていることに気づいた時、慌てもしたけれど同時に未来を夢見ていたことにも今更気づいた。
「ルシウス君のストーカーなんて止めて婚約も解消して、やり直そうと思っていたのになあ……」
リコリスに転生した後の方が人生を勿体なく感じるのは皮肉だった。
そうだ、本当に勿体ないのだ。
「お金持ちの貴族で強い魔力持ちで、若くて美人なのに……滅茶苦茶勝ち組のプロフィールなのに」
折角そんな存在に転生できたというのに、記憶が戻った途端再び死ぬのか。悔し過ぎて腹が立ってきた。
とりあえず私を殺したあの男のことは末代まで呪うことにする。イケメン無罪を真に受けて貰っては困る。許せるのは精々強引にキスまでだ。
「ありがちだけどね?漫画とかで美形の悪役にキスされたモブが即死するとか?あるけどね? ……でも実際にするな!」
コラーゲンか何かのように人の生命力を摂取するとか傲慢が過ぎる。多少なら妥協するが死ぬまで吸うな。空腹の赤ちゃんでもまだ節度があるぞ。
それにルシウスは人を突き飛ばしておいて勝手にキスしてくるし、担任教師は大声で騒ぐばかりで頼りにならないし、挙句弟に成りすました魔物は殺してくるし。
折角花スクっぽい世界に転生できたのにまともなイケメンに一人も出会っていない。
「……死にたくない」
言葉とともに涙が零れる。
車に轢かれて死んだ時の数十倍は強い生への渇望。そして恨みつらみ。
「こんな、こんな勿体ない状況で、あっさり殺されて終わりなんて絶対嫌!せめて私を殺したあの男の魂だけでも一緒に連れていく!!」
呪詛を吐き出した途端、部屋が真っ赤な花で埋め尽くされる。鮮やかな紅色とすらりとした緑色の茎。
それはまるで美しい地獄のような光景だった。
「これは、彼岸花……?」
そう呟いた途端赤い花が炎に変わる。一輪だけではない。床を埋め尽くす程咲いた華が今、全て焔と化している。
「ひっ、やだ、いやだ……酷すぎるでしょ、これ……! よくわからないけど絶対、」
絶対に許さないから。
そう泣き叫ぶ私ごと大輪の炎は部屋を焼き尽くした。
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