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【17】悪霊令嬢、侵入される
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そういえば彼は一体何に対して謝罪しているのだろう。言葉を発する直前に疑問が浮かんだ。
リコリスを突き飛ばしたのはルシウスだ。
保健室に単独放置されていたことについてかと思ったが、普通この場合の見守るのは養護教諭ではないだろうか。
「あの、私はどの件に関してお詫び頂いているのかしら?」
私は彼に尋ねた。電話口でヒッと小さな悲鳴が聞こえる。怖がられるような台詞では無い筈なのに。
それとも、彼にとってリコリスという存在自体が恐怖なのだろうか。それは有り得る。
しかし担任教師からの返答はある意味大胆な物だった。
「そ、それは、その……申し訳ありません。ラディアータさんはどの件についてお怒りですか?」
その質問、本人に聞いたら絶対駄目な奴ですよロイ先生。
会社勤めで怒っている顧客にそれ言ったら間違いなくクレームが加速しますよ。
私は大きく溜息を吐きたくなるのを堪えた。おそらく吐息にさえも彼は委縮するだろうから。
きっと彼は電話対応を他の人間から押し付けられているのだ。
事態の認識も心の準備も出来ないまま私と話しているのでこんなにボロボロな対応なのだろう。
前世でのクレーマー対応を思い出す。ここで私がヒートアップしてもいいことはない。
まともな会話ができるようこちらがリードする必要がある。
「私は別に何に対しても怒ってはいませんわ。ただ、黙って早退したことについて連絡した方がいいと思いまして」
「え……あ、もしかして今、御自宅ですか?!」
「ええ、起きた時保健室に誰もいなかったので……そのことですが、何か理由でも?」
激怒するつもりはないがその点についてはずっと気になっていた。
すると電話口の向こうから戸惑った声が返ってくる。
「保健室に誰も……?もしかして今弟さんと一緒にいらっしゃらないのですか」
「弟?」
「はい、気を失った貴女を保健室に運んだのは彼だったと他の生徒たちから報告を受けています」
そのまま一緒に付き添っているのだと思っていましたが。
担任教師の言葉に私は首を傾げる。リコリスに弟?そんな存在いただろうか。
少なくともゲーム内には登場していなかったと思う。
そもそもリコリス自体が一部のルートを除けば脇役、家族情報を知る機会がない。
でも今は私が「リコリス」なのだ。十七年生きてきて把握していないのがおかしい。
目をギュっと閉じてこれ迄の人生を思い起こす。
前世の喪女として生きてきた二十数年が浮かんでくる。違う、これじゃない。
ラディアータ伯爵家に生を受けてからの私と、そして私の家族たち。
「弟、私の……」
いや、やっぱ知らん。誰それ、怖い。
「……もしもし、ラディアータさん?」
「あ、申し訳ありません、先生……私の弟についてですが」
多分偽物かなりすましだと思います。そう言いかけた口を塞がれマジカルフォンを奪われる。
「あ、センセ?オレだけど。姉貴頭打っていつも以上にイカレているんで」
今日はこのまま休ませときますね。誰かが砕けた口調で喋っている。
響き具合的に恐らく、私の頭に顎を乗せてだ。
「は……?!誰よ、あんた!!」
昔私を馬鹿にした男子生徒に似た声だなと思いながら、突然の乱入者に声を張り上げる。
貴族の屋敷なのにセキュリティはどうなっているんだ。
そう思いながら私は自分の手に闇の魔力を集中させた。
リコリスを突き飛ばしたのはルシウスだ。
保健室に単独放置されていたことについてかと思ったが、普通この場合の見守るのは養護教諭ではないだろうか。
「あの、私はどの件に関してお詫び頂いているのかしら?」
私は彼に尋ねた。電話口でヒッと小さな悲鳴が聞こえる。怖がられるような台詞では無い筈なのに。
それとも、彼にとってリコリスという存在自体が恐怖なのだろうか。それは有り得る。
しかし担任教師からの返答はある意味大胆な物だった。
「そ、それは、その……申し訳ありません。ラディアータさんはどの件についてお怒りですか?」
その質問、本人に聞いたら絶対駄目な奴ですよロイ先生。
会社勤めで怒っている顧客にそれ言ったら間違いなくクレームが加速しますよ。
私は大きく溜息を吐きたくなるのを堪えた。おそらく吐息にさえも彼は委縮するだろうから。
きっと彼は電話対応を他の人間から押し付けられているのだ。
事態の認識も心の準備も出来ないまま私と話しているのでこんなにボロボロな対応なのだろう。
前世でのクレーマー対応を思い出す。ここで私がヒートアップしてもいいことはない。
まともな会話ができるようこちらがリードする必要がある。
「私は別に何に対しても怒ってはいませんわ。ただ、黙って早退したことについて連絡した方がいいと思いまして」
「え……あ、もしかして今、御自宅ですか?!」
「ええ、起きた時保健室に誰もいなかったので……そのことですが、何か理由でも?」
激怒するつもりはないがその点についてはずっと気になっていた。
すると電話口の向こうから戸惑った声が返ってくる。
「保健室に誰も……?もしかして今弟さんと一緒にいらっしゃらないのですか」
「弟?」
「はい、気を失った貴女を保健室に運んだのは彼だったと他の生徒たちから報告を受けています」
そのまま一緒に付き添っているのだと思っていましたが。
担任教師の言葉に私は首を傾げる。リコリスに弟?そんな存在いただろうか。
少なくともゲーム内には登場していなかったと思う。
そもそもリコリス自体が一部のルートを除けば脇役、家族情報を知る機会がない。
でも今は私が「リコリス」なのだ。十七年生きてきて把握していないのがおかしい。
目をギュっと閉じてこれ迄の人生を思い起こす。
前世の喪女として生きてきた二十数年が浮かんでくる。違う、これじゃない。
ラディアータ伯爵家に生を受けてからの私と、そして私の家族たち。
「弟、私の……」
いや、やっぱ知らん。誰それ、怖い。
「……もしもし、ラディアータさん?」
「あ、申し訳ありません、先生……私の弟についてですが」
多分偽物かなりすましだと思います。そう言いかけた口を塞がれマジカルフォンを奪われる。
「あ、センセ?オレだけど。姉貴頭打っていつも以上にイカレているんで」
今日はこのまま休ませときますね。誰かが砕けた口調で喋っている。
響き具合的に恐らく、私の頭に顎を乗せてだ。
「は……?!誰よ、あんた!!」
昔私を馬鹿にした男子生徒に似た声だなと思いながら、突然の乱入者に声を張り上げる。
貴族の屋敷なのにセキュリティはどうなっているんだ。
そう思いながら私は自分の手に闇の魔力を集中させた。
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