14 / 50
【14】悪霊令嬢、自己評価する
しおりを挟む
強烈な異臭とおぞましいコレクションを片付けて、私はようやく落ち着くことが出来た。
鏡台の前に座り部屋の片づけの最中見つけた髪飾りで前髪を留める。小さな可愛らしい花が幾つもついた物だ。
血のような赤色なのがリコリスの私物らしいと思った。もしかしたらルシウスの属性である炎の赤かもしれない。
校舎から脱出する際は両手で前髪を抑え、馬車の乗降は使用人の補助があった。
屋敷の入り口から部屋までは勘でなんとか行けた。
部屋に入ってからは臭いをどうにかするのが最優先で前髪をかきあげつつ作業をした。
ベッドの下のアルバムを取り出す為に床を這ったりしたので第三者が見ていたらかなりの恐怖だと思う。
けれど今のようにしっかりと目を出していれば、ちゃんと生きている人間に見える。しかもかなりの美形だ。
しかしきつい顔立ちなので悪役っぽくはある。生徒達には別の意味で恐れられるかもしれない。
簡単に言えば悪霊令嬢から悪役令嬢にイメージチェンジしたような感じだ。
「明日から学校にもこれをつけて行こうかな」
学生としては華美かもしれないがこれよりも何倍も大きな花をつけているヒロインが堂々と通えているのだ。
虐めていた女生徒達もヒロインの奇抜な髪色や花に対しては突っ込みを入れてなかった。だから平気だろう。
そう、気がかりなのは校則違反よりも人の変わった婚約者のことだ。
私は改めて鏡に映る姿をまじまじと見る。切れ長のきつい印象の目と薄い唇。気づかなかったが左目の下に小さな黒子がある。
「美人では……あるのよね。多分、かなり、それなりには」
つい口元がにやける。嬉しいか嬉しくないかで言えば嬉しいに決まっている。私だって女だ。
しかも今の立場は伯爵令嬢、堂々とドレスで着飾れる環境だ。正直浮かれそうになる。
鬱陶しい前髪も長過ぎる後ろ髪もばっさり切って、きつい顔立ちの美少女令嬢として学園生活をやり直したい。
けれど一気に変わってしまうのも、トラブルを生み出してしまうのではないか。
そんな懸念が私の中に生まれていた。それについては当然ルシウスの変貌が強く影響している。
彼と会った際、私はヒロインと女性との争いに介入する為ヘアバンドを取っていた。外見は今までと同じ悪霊令嬢のままだ。
そして不自由な視界で歩いていた所で彼にぶつかった。ルシウスが驚いていたのは覚えている。
明確に変化があったのは、私が彼をルシウス君と呼んでからだ。
その時の口調もリコリスのものではなかった。多分それを根拠に彼は私を今までのリコリスと違うと判断したのだ。
目つきが違うとも言われた。そして昔の君に戻ったんだなと感激された。
確かに過去の自分には戻っている。けれどそれは彼の語る「花のような」リコリスではない。
ルシウスは勘違いをしているのだ。
この状態で婚約解消を申し出てもスムーズには行かない気がする。
同意もなしにキスされたことを思い出す。あの強引さなら今度は私が彼にストーキングされるかもれない。
そこに豪商を父に持つヒロインも絡んできたらさぞかしややこしいことになるだろう。
一番良いのはルシウスにリコリスの変化が気のせいだったと思わせ失望させることだ。
とりあえずその問題が解決するまでは、外見の変化は片方の前髪を留める程度に控えておこう。
それと闇魔法が使えなくなったことも気になる。私は棚に飾られている魔法道具に視線を移した。
鏡台の前に座り部屋の片づけの最中見つけた髪飾りで前髪を留める。小さな可愛らしい花が幾つもついた物だ。
血のような赤色なのがリコリスの私物らしいと思った。もしかしたらルシウスの属性である炎の赤かもしれない。
校舎から脱出する際は両手で前髪を抑え、馬車の乗降は使用人の補助があった。
屋敷の入り口から部屋までは勘でなんとか行けた。
部屋に入ってからは臭いをどうにかするのが最優先で前髪をかきあげつつ作業をした。
ベッドの下のアルバムを取り出す為に床を這ったりしたので第三者が見ていたらかなりの恐怖だと思う。
けれど今のようにしっかりと目を出していれば、ちゃんと生きている人間に見える。しかもかなりの美形だ。
しかしきつい顔立ちなので悪役っぽくはある。生徒達には別の意味で恐れられるかもしれない。
簡単に言えば悪霊令嬢から悪役令嬢にイメージチェンジしたような感じだ。
「明日から学校にもこれをつけて行こうかな」
学生としては華美かもしれないがこれよりも何倍も大きな花をつけているヒロインが堂々と通えているのだ。
虐めていた女生徒達もヒロインの奇抜な髪色や花に対しては突っ込みを入れてなかった。だから平気だろう。
そう、気がかりなのは校則違反よりも人の変わった婚約者のことだ。
私は改めて鏡に映る姿をまじまじと見る。切れ長のきつい印象の目と薄い唇。気づかなかったが左目の下に小さな黒子がある。
「美人では……あるのよね。多分、かなり、それなりには」
つい口元がにやける。嬉しいか嬉しくないかで言えば嬉しいに決まっている。私だって女だ。
しかも今の立場は伯爵令嬢、堂々とドレスで着飾れる環境だ。正直浮かれそうになる。
鬱陶しい前髪も長過ぎる後ろ髪もばっさり切って、きつい顔立ちの美少女令嬢として学園生活をやり直したい。
けれど一気に変わってしまうのも、トラブルを生み出してしまうのではないか。
そんな懸念が私の中に生まれていた。それについては当然ルシウスの変貌が強く影響している。
彼と会った際、私はヒロインと女性との争いに介入する為ヘアバンドを取っていた。外見は今までと同じ悪霊令嬢のままだ。
そして不自由な視界で歩いていた所で彼にぶつかった。ルシウスが驚いていたのは覚えている。
明確に変化があったのは、私が彼をルシウス君と呼んでからだ。
その時の口調もリコリスのものではなかった。多分それを根拠に彼は私を今までのリコリスと違うと判断したのだ。
目つきが違うとも言われた。そして昔の君に戻ったんだなと感激された。
確かに過去の自分には戻っている。けれどそれは彼の語る「花のような」リコリスではない。
ルシウスは勘違いをしているのだ。
この状態で婚約解消を申し出てもスムーズには行かない気がする。
同意もなしにキスされたことを思い出す。あの強引さなら今度は私が彼にストーキングされるかもれない。
そこに豪商を父に持つヒロインも絡んできたらさぞかしややこしいことになるだろう。
一番良いのはルシウスにリコリスの変化が気のせいだったと思わせ失望させることだ。
とりあえずその問題が解決するまでは、外見の変化は片方の前髪を留める程度に控えておこう。
それと闇魔法が使えなくなったことも気になる。私は棚に飾られている魔法道具に視線を移した。
2
お気に入りに追加
5,498
あなたにおすすめの小説
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。
曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」
きっかけは幼い頃の出来事だった。
ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。
その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。
あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。
そしてローズという自分の名前。
よりにもよって悪役令嬢に転生していた。
攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。
婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。
するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!
高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。
逃がす気は更々ない
棗
恋愛
前世、友人に勧められた小説の世界に転生した。それも、病に苦しむ皇太子を見捨て侯爵家を追放されたリナリア=ヘヴンズゲートに。
リナリアの末路を知っているが故に皇太子の病を癒せる花を手に入れても聖域に留まり、神官であり管理者でもあるユナンと過ごそうと思っていたのだが……。
※なろうさんにも公開中。
婚姻初日、「好きになることはない」と宣言された公爵家の姫は、英雄騎士の夫を翻弄する~夫は家庭内で私を見つめていますが~
扇 レンナ
恋愛
公爵令嬢のローゼリーンは1年前の戦にて、英雄となった騎士バーグフリートの元に嫁ぐこととなる。それは、彼が褒賞としてローゼリーンを望んだからだ。
公爵令嬢である以上に国王の姪っ子という立場を持つローゼリーンは、母譲りの美貌から『宝石姫』と呼ばれている。
はっきりと言って、全く釣り合わない結婚だ。それでも、王家の血を引く者として、ローゼリーンはバーグフリートの元に嫁ぐことに。
しかし、婚姻初日。晩餐の際に彼が告げたのは、予想もしていない言葉だった。
拗らせストーカータイプの英雄騎士(26)×『宝石姫』と名高い公爵令嬢(21)のすれ違いラブコメ。
▼掲載先→アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる