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【14】悪霊令嬢、自己評価する

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 強烈な異臭とおぞましいコレクションを片付けて、私はようやく落ち着くことが出来た。

 鏡台の前に座り部屋の片づけの最中見つけた髪飾りで前髪を留める。小さな可愛らしい花が幾つもついた物だ。

 血のような赤色なのがリコリスの私物らしいと思った。もしかしたらルシウスの属性である炎の赤かもしれない。

 校舎から脱出する際は両手で前髪を抑え、馬車の乗降は使用人の補助があった。

 屋敷の入り口から部屋までは勘でなんとか行けた。

 部屋に入ってからは臭いをどうにかするのが最優先で前髪をかきあげつつ作業をした。

 ベッドの下のアルバムを取り出す為に床を這ったりしたので第三者が見ていたらかなりの恐怖だと思う。

 けれど今のようにしっかりと目を出していれば、ちゃんと生きている人間に見える。しかもかなりの美形だ。

 しかしきつい顔立ちなので悪役っぽくはある。生徒達には別の意味で恐れられるかもしれない。

 簡単に言えば悪霊令嬢から悪役令嬢にイメージチェンジしたような感じだ。 


「明日から学校にもこれをつけて行こうかな」


 学生としては華美かもしれないがこれよりも何倍も大きな花をつけているヒロインが堂々と通えているのだ。

 虐めていた女生徒達もヒロインの奇抜な髪色や花に対しては突っ込みを入れてなかった。だから平気だろう。

 そう、気がかりなのは校則違反よりも人の変わった婚約者のことだ。

 私は改めて鏡に映る姿をまじまじと見る。切れ長のきつい印象の目と薄い唇。気づかなかったが左目の下に小さな黒子がある。


「美人では……あるのよね。多分、かなり、それなりには」


 つい口元がにやける。嬉しいか嬉しくないかで言えば嬉しいに決まっている。私だって女だ。

 しかも今の立場は伯爵令嬢、堂々とドレスで着飾れる環境だ。正直浮かれそうになる。

 鬱陶しい前髪も長過ぎる後ろ髪もばっさり切って、きつい顔立ちの美少女令嬢として学園生活をやり直したい。

 けれど一気に変わってしまうのも、トラブルを生み出してしまうのではないか。

 そんな懸念が私の中に生まれていた。それについては当然ルシウスの変貌が強く影響している。

 彼と会った際、私はヒロインと女性との争いに介入する為ヘアバンドを取っていた。外見は今までと同じ悪霊令嬢のままだ。

 そして不自由な視界で歩いていた所で彼にぶつかった。ルシウスが驚いていたのは覚えている。

 明確に変化があったのは、私が彼をルシウス君と呼んでからだ。

 その時の口調もリコリスのものではなかった。多分それを根拠に彼は私を今までのリコリスと違うと判断したのだ。

 目つきが違うとも言われた。そして昔の君に戻ったんだなと感激された。

 確かに過去の自分には戻っている。けれどそれは彼の語る「花のような」リコリスではない。

 ルシウスは勘違いをしているのだ。  
 
 この状態で婚約解消を申し出てもスムーズには行かない気がする。

 同意もなしにキスされたことを思い出す。あの強引さなら今度は私が彼にストーキングされるかもれない。 

 そこに豪商を父に持つヒロインも絡んできたらさぞかしややこしいことになるだろう。
 
 一番良いのはルシウスにリコリスの変化が気のせいだったと思わせ失望させることだ。

 とりあえずその問題が解決するまでは、外見の変化は片方の前髪を留める程度に控えておこう。 

 それと闇魔法が使えなくなったことも気になる。私は棚に飾られている魔法道具に視線を移した。

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