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【9】悪霊令嬢、焦る
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闇魔法は光魔法や火炎魔法のようにわかりやすくはない。
そのうえで外よりも内、肉体よりも精神に作用する魔法が数多くある。
対象者の気力を奪ったり、心を操ったり、意識を闇に封じたりといったものだ。
魔法を使われているかの判断は素人には出来ない。
だからこそ闇の魔力を持つ者は人々から恐れられ疎まれる。
この国には色々な属性の魔力が存在するが、唯一闇の魔力だけが迫害された過去を持つ。
それ自体は大昔の話で、どこから見ても闇属性な私でも伯爵令嬢として貴族学園に通えている。
確かに教師や生徒たちからは不気味がられてはいるが、リコリスの場合は外見の与える影響の方が強いだろう。
寧ろこの悪霊のようなビジュアルと婚約者へのストーキング行為が闇属性への悪印象を深めているまである。
そんなことを考えながら私は右手に意識を集中させた。闇魔法でルシウスを眠らせようと思ったのだ。
しかし何時までたっても自分の闇の魔力が体の外へ出る独特の感覚がやってこない。
私はそのことに戸惑いながら、内心徐々に追い詰められていた。
唇は解放されたがルシウスに強い力で抱きしめられていることは変わらない。逃げたいのだ。
急に態度を大きく変えたこの婚約者が怖い。彼の想定している人物でないことに気づかれて失望されるのが恐ろしい。
何よりも、美少年に熱い瞳で見つめられてキスをされて抱きしめられている。
この出来事の結果、前世の記憶が戻ったのに再度ルシウスを好きになってしまうかもしれない。
今の私は二十代後半の人格なのだ。そんなちょろすぎる自分には耐えられない。絶対拒否する。
大体彼は既に可愛いヒロインに弁当を作ってもらっている仲なのだ。
そこに私が参戦したらひたすら面倒くさい泥沼が出来上がる。しかもややこしいだけではない。
ヒロインは特別な魔力を持っているだけでなく王家とも繋がっている国一番の豪商の愛娘。
軽々しく弄んではいけない相手だ。二股などもっての他である。
今までだって私とルシウスは婚約関係だった、その上で彼はヒロインと親しくしていた。
しかしリコリスがそれについてヒロインと対立しようとなかった為表向きは平和だったのだ。
だがそれは彼女の愛情表現が監視や観察だったからで、まともな感覚を持った女子なら怒ったり悲しんだりするだろう。
婚約者がいるのにヒロインといちゃついて、突き飛ばして気絶させた婚約者を廊下で見つけてキス。
いくら顔が良くてもクズ男の行動だ。
ルシウスは婚約者とヒロイン、二人の女性を都合よく弄んでいるように思われても仕方がない。
そしてこの場合、一番激怒するのは略奪したと思ったのに逃げられた女性の場合が多いのだ。
前世、自分自身の恋愛経験はないけど、友達や同僚から恋愛関係の愚痴なら多く聞いてきた。
絶対この場面をヒロインに目撃されたくない。彼女の家を敵に回したくない。
しかし私の願いは叶わなかった。
「……ルシウス様、?」
何をなさっているのですか。
怒気を孕んだ少女の言葉が私の背筋を震えさせた。
そのうえで外よりも内、肉体よりも精神に作用する魔法が数多くある。
対象者の気力を奪ったり、心を操ったり、意識を闇に封じたりといったものだ。
魔法を使われているかの判断は素人には出来ない。
だからこそ闇の魔力を持つ者は人々から恐れられ疎まれる。
この国には色々な属性の魔力が存在するが、唯一闇の魔力だけが迫害された過去を持つ。
それ自体は大昔の話で、どこから見ても闇属性な私でも伯爵令嬢として貴族学園に通えている。
確かに教師や生徒たちからは不気味がられてはいるが、リコリスの場合は外見の与える影響の方が強いだろう。
寧ろこの悪霊のようなビジュアルと婚約者へのストーキング行為が闇属性への悪印象を深めているまである。
そんなことを考えながら私は右手に意識を集中させた。闇魔法でルシウスを眠らせようと思ったのだ。
しかし何時までたっても自分の闇の魔力が体の外へ出る独特の感覚がやってこない。
私はそのことに戸惑いながら、内心徐々に追い詰められていた。
唇は解放されたがルシウスに強い力で抱きしめられていることは変わらない。逃げたいのだ。
急に態度を大きく変えたこの婚約者が怖い。彼の想定している人物でないことに気づかれて失望されるのが恐ろしい。
何よりも、美少年に熱い瞳で見つめられてキスをされて抱きしめられている。
この出来事の結果、前世の記憶が戻ったのに再度ルシウスを好きになってしまうかもしれない。
今の私は二十代後半の人格なのだ。そんなちょろすぎる自分には耐えられない。絶対拒否する。
大体彼は既に可愛いヒロインに弁当を作ってもらっている仲なのだ。
そこに私が参戦したらひたすら面倒くさい泥沼が出来上がる。しかもややこしいだけではない。
ヒロインは特別な魔力を持っているだけでなく王家とも繋がっている国一番の豪商の愛娘。
軽々しく弄んではいけない相手だ。二股などもっての他である。
今までだって私とルシウスは婚約関係だった、その上で彼はヒロインと親しくしていた。
しかしリコリスがそれについてヒロインと対立しようとなかった為表向きは平和だったのだ。
だがそれは彼女の愛情表現が監視や観察だったからで、まともな感覚を持った女子なら怒ったり悲しんだりするだろう。
婚約者がいるのにヒロインといちゃついて、突き飛ばして気絶させた婚約者を廊下で見つけてキス。
いくら顔が良くてもクズ男の行動だ。
ルシウスは婚約者とヒロイン、二人の女性を都合よく弄んでいるように思われても仕方がない。
そしてこの場合、一番激怒するのは略奪したと思ったのに逃げられた女性の場合が多いのだ。
前世、自分自身の恋愛経験はないけど、友達や同僚から恋愛関係の愚痴なら多く聞いてきた。
絶対この場面をヒロインに目撃されたくない。彼女の家を敵に回したくない。
しかし私の願いは叶わなかった。
「……ルシウス様、?」
何をなさっているのですか。
怒気を孕んだ少女の言葉が私の背筋を震えさせた。
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