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【5】悪霊令嬢、ぶつかる
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「え、ええっ!」
「信じられませんわ、リコリス様がルシウス様を婚約破棄するなんてっ!」
「リコリス様、頭を打ったショックで錯乱されて……?!」
迂闊すぎた。大騒ぎする女生徒たちを前に私は後悔する。
自分の中では婚約解消は既に決定事項だけれど、わざわざこの騒がしい集団に知らせる必要はなかったのだ。
きゃあきゃあと驚いているのかはしゃいでいるのかわからない少女たちにうんざりしていると、急にヒロインちゃんに話しかけられる。
「あ、あの……リコリス様、婚約解消の理由は、もしかして私がルシウス様に」
「勘違いしないで、貴女ごときの行動が私に影響を与えるなんて……とんだ思い上がりだわぁ」
「ごっ、ごめんなさい!」
彼女が婚約者のいる男子生徒と親密にしていたのは事実なのでどうしても言葉に嫌味が混じってしまう。
貴女のせいと断言するのは責任を被せ過ぎて嫌だが、気にしないでとは言いたくない微妙な乙女心だ。
だけどリコリスの方がやらかし具合はずば抜けている。
おはようからおやすみまで婚約者を監視の罪は消えない。
そんな中でヒロインの存在が彼の癒しになっていたかもしれないのだ。
もし彼女がいなければ病み切ったルシウスにリコリスは刺されていたかもしれない。
ゲーム内の悪霊令嬢ならそれでも喜びそうだが私は嫌だ。ふぅと溜息をついて再度口を開いた。
「貴女が本気で彼を愛しているなら……ルシウス様を幸せにしてあげて頂戴ね」
「えっ……」
「フン……それじゃあ私は行くわね。こんな騒がしい場所、居たくないものぉ」
そう言い捨てて踵を返す。しかし先程おろした前髪のせいで行き先がほぼ見えない。一寸先は闇だ。
この髪、手櫛で後ろに流しても少し歩くとすぐ視界を遮ってくる。
いっそ暖簾のように両手で掻き分けて歩きたいが、その姿を生徒たちに見られたくないという謎のプライドがあった。
化粧室に辿り着けば包帯ヘアバンドを復活させられる。そう考えて廊下を早足で歩き続ける。
不幸中の幸いだが他の生徒たちは私の姿を見ると怯えた声を上げて避けてくれるので人とぶつかることはなかった。
そう、この時までは。
「うぐ」
相手が全員避けてくれることで調子に乗っていた私の顔面は誰かの服に直撃した。前方不注意にも程がある。
しかも一部分だけでなく正面衝突だ。流石に前髪を掻き分けて相手の顔を見る。
「……リコリス?」
「……ルシウス、様?」
見上げた先には婚約者の困惑しきった顔があった。
「信じられませんわ、リコリス様がルシウス様を婚約破棄するなんてっ!」
「リコリス様、頭を打ったショックで錯乱されて……?!」
迂闊すぎた。大騒ぎする女生徒たちを前に私は後悔する。
自分の中では婚約解消は既に決定事項だけれど、わざわざこの騒がしい集団に知らせる必要はなかったのだ。
きゃあきゃあと驚いているのかはしゃいでいるのかわからない少女たちにうんざりしていると、急にヒロインちゃんに話しかけられる。
「あ、あの……リコリス様、婚約解消の理由は、もしかして私がルシウス様に」
「勘違いしないで、貴女ごときの行動が私に影響を与えるなんて……とんだ思い上がりだわぁ」
「ごっ、ごめんなさい!」
彼女が婚約者のいる男子生徒と親密にしていたのは事実なのでどうしても言葉に嫌味が混じってしまう。
貴女のせいと断言するのは責任を被せ過ぎて嫌だが、気にしないでとは言いたくない微妙な乙女心だ。
だけどリコリスの方がやらかし具合はずば抜けている。
おはようからおやすみまで婚約者を監視の罪は消えない。
そんな中でヒロインの存在が彼の癒しになっていたかもしれないのだ。
もし彼女がいなければ病み切ったルシウスにリコリスは刺されていたかもしれない。
ゲーム内の悪霊令嬢ならそれでも喜びそうだが私は嫌だ。ふぅと溜息をついて再度口を開いた。
「貴女が本気で彼を愛しているなら……ルシウス様を幸せにしてあげて頂戴ね」
「えっ……」
「フン……それじゃあ私は行くわね。こんな騒がしい場所、居たくないものぉ」
そう言い捨てて踵を返す。しかし先程おろした前髪のせいで行き先がほぼ見えない。一寸先は闇だ。
この髪、手櫛で後ろに流しても少し歩くとすぐ視界を遮ってくる。
いっそ暖簾のように両手で掻き分けて歩きたいが、その姿を生徒たちに見られたくないという謎のプライドがあった。
化粧室に辿り着けば包帯ヘアバンドを復活させられる。そう考えて廊下を早足で歩き続ける。
不幸中の幸いだが他の生徒たちは私の姿を見ると怯えた声を上げて避けてくれるので人とぶつかることはなかった。
そう、この時までは。
「うぐ」
相手が全員避けてくれることで調子に乗っていた私の顔面は誰かの服に直撃した。前方不注意にも程がある。
しかも一部分だけでなく正面衝突だ。流石に前髪を掻き分けて相手の顔を見る。
「……リコリス?」
「……ルシウス、様?」
見上げた先には婚約者の困惑しきった顔があった。
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