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夜が明ければ新しい朝が始まる6

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 扉の前に立っていたのはメイド服姿の女性だった。


「……入っても、大丈夫ですか」


 服装に似合わない言葉遣いに、私は眉をひそめる事をせず頷き相手を招く。

 扉を開ける前に多少散らかした部分は片付けてある。

 椅子を勧めたが彼女は首を振って固辞をする。

 私から微妙に目線を外し立ち尽くしたままの相手に私は助け舟を出すつもりで声をかけた。


「随分と可愛らしい姿ね、アレス王子」

「……いつから、気づいていたんですか」

「貴方が私達に恐る恐るお茶を淹れてくれた時かしら」


 そんなに前から!そうアレス王子は両手で顔を覆って叫ぶ。

 その耳が赤くなっていることを揶揄うのはやめておいた。

 厳密にはあの時即座に気づいたわけではないがそこは見栄を張ってしまった。

 違和感と既視感の積み重ね。

 もしアレス王子が男性の姿のままで私の前に現れなければ気づかなかったかもしれない。

 性別を変え、姿を変えても、仕草が変わらないなら勘づいてしまうものだ。


「侍女に変装するのは難易度が高いわよ。彼女たちが出来ることを同じように出来なければいけないのだから」


 普段の自分からかけ離れたもの程、難しい。

 この国の王子であり男性であるアレス王子なら尚更侍女の振りは難易度が高かっただろう。


「どうして侍女に変装なんかしていたの?」


 そして何故今も女性に化けているのか。そう尋ねるとアレス王子はしどろもどろになった。

 発想といい利用していると思われる魔法道具といい恐らくマリアが関与しているのは間違いないだろうけれど。

 いや寧ろマリアの指示の可能性も考えられる。

 そういえば、初めてアレス王子に迫られた時もマリアの差し金だった。

 本来のアレス王子とは全く違う、傲慢で自信家ぶった物言いで。

 強引に接吻けられた時に思わず平手打ちにした時のことを思い出す。

 私はアレス王子が化けている少女の頬に手を触れた。

 戸惑ったような声は無視して、もう片方の頬に唇を落とした。 


「もう、子供ではないのでしょ?」


 ちゃんとお話しできるわね。

 にっこりと笑って言ってから気恥ずかしさに首がむず痒くなる。

 慣れないことはするものじゃない。そう思った次の瞬間、私はアレス王子に押し倒されていた。

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