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女神の慈悲は試練と共に7

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「私が女神の恩寵で若返ったとします。それを知った者たちの中にはそれを強く羨む者が必ず出てくるでしょう。
 この世に数十歳も若くなる方法があると知ったなら、どんな犠牲を払ってでも願いを叶えようとする者が出てくる。
 過去に他国の王が不老不死を望みその為に国を傾かせたように……。
 そういった権力と武力を持つ者が情報を引き出す為に私や知り合い……最悪王家に危害を加える可能性があります。
 ……そうでない場合も若返りの可能性を知ることで、邪法に手を染めたり外道に堕ちたりするかもしれない」


 かもしれない、ではない。実際にそれはあった。

 昔、貴族の女たちの一部が若さを求め闇の精霊の使いと名乗る人物に大金を払い薬を購入した。

 その薬の原料に胎児や孤児の内臓や血が使われていたことが後に判明し大騒ぎになったのだ。

 更におぞましいことに女たちの半数以上が薬が何で作られているのかを知っていて尚、肌が美しくなったからと『素材』の確保に協力していた。 

 そして行き着いた先は、高貴な『質のいい』人間を材料にした方が薬の効果が強くなるという狂気の発想。

 そう思い込んだ女の一人が、よりにもよって王家の息女を攫って殺そうとしたことで大事になり関わった貴族が何人も処刑された。

 数世代前の出来事だが、事件のおぞましさは全く色褪せることはない。だからこそ強い教訓となった。

 私はそれを語り終えると女神に向かって頭を下げた。彼女が善意で提案してくれたことは理解している。


「女神ユピテルの仰る通り若さに憧れはあります。
 けれど私は国に仕える貴族の一人として、自らの欲望の為に民と王家を万が一にも危険に晒したくはないのです」


 私が若返りたいと願ったのは、もしかしたら訪れるかもしれないアレス王子との新しい関係の為にだ。

 けれど彼とつがいとなるのなら、今まで以上に多くの貴族に顔と名前を、そして姿を知られることになる。

 不自然に若返った外見で現れるという事は、その人間たちの欲望に火をつけるのと同じことだった。


「ディアナちゃんは考えすぎよぉ……自分のことだけ考えていればいいのに」

「そのようにして生きていい時期はもう過ぎました。私はもう……大人ですから」


 曖昧に笑って話を打ち切る。

 頬を膨らませながらユピテルは「今はわたくしの方が年上なんだから!」と拗ねた。

 そのままこちらに頭を差し出すようにしてくる。心を読まれたのだろう。望み通り髪を撫でた。

 私達の話が終わったと思ったのか、今度はアレス王子が口を開く。


「……さっきからずっと考えていたんですが
  女神ユピテル。俺の外見年齢を、ディアナさんと同じぐらいに引き上げてもらうことはできますか?」


「「……は?」」


 女神と私の声が綺麗に重なった。

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