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王妃の裁き8
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ロバート・グレイ伯爵は懊悩していた。
元妻であるディアナが行方知れずとなってしまったからである。
厳密にいえばディアナが行方不明になったことに困っているわけではない。
教会に提出する婚姻解消届に元妻の承諾を貰い忘れたので困っているのだ。
この国の貴族は結婚する際ほぼ全員が教会で式を挙げる。
その場で夫となるものと妻となるものの双方が永遠の愛を神と司祭に誓うのだ。
これがただの演出なら気楽なものだが、教会側では正式の誓いとみなすから厄介だ。
配偶者の死亡以外の理由でその誓いを破棄しようとすると、それはもう詰問の域で根掘り葉掘り聞かれる。
そのことを離婚する前に知りたかった、伯爵は今心の底からそう思った。
教会側から詰問される理由について、解消届に元妻の承諾が欠けている事並びに離婚に至る理由が夫側の一方的な主観で書かれている事。
そして伯爵に都合のいいように書かれていて尚、元妻側に同情を禁じ得ないような身勝手さがまざまざと浮かび上がっている事が挙げられるが彼はそれに気づいていなかった。
法的な離婚は済んでいる。こちらはディアナを追い出した際にシシリーが抜け目なく国に提出する書類にサインをさせていたからだ。
長く連れ添った妻だ。更にその妻はあのプライドの高いディアナである。離婚にもそう簡単に同意はしないだろう。
妊娠したシシリーにそう告げた所、彼女は大きな瞳を潤ませながらこう言ったのだ。
「伯爵様、私の為に悪者になっていただけますか……?」
そう震えながら縋るように言われ、ロバートは唯々諾々と年の離れた新妻に従った。
彼女の立てた作戦通り、二人で厳しい言葉を投げつけプライドをへし折ったディアナはスムーズに離婚に同意してくれた。
ディアナは幼馴染で子供の頃からの付き合いのある女だ。寂しさや申し訳なさを感じない訳ではない。
けれど彼女はシシリーと違う。シシリーは己がいなければ生きていけないが彼女はまあ、大丈夫だろう。
元々貴族の生まれで衣食住には不自由していない、更に自分が誠意として渡した慰謝料もある。
プライドが高く口だって達者な強い女だ。もういい年だし離婚されたことも割り切って生きていくに違いない。
そう彼女をよく知るロバートは確信しているのだが、教会側はそれを否定するのだ。
「それは全て貴方だけに都合のいい考えですよ、グレイ伯爵」
新しい婚姻に神が祝福をお与えになるとはくれぐれも思わないでくださいね。
不備だらけの届け出を返却に来たのはなんと二人が式を挙げた教会の司祭だった。
彼はロバートの目の前で届を棄却しながら苦々しく言った。
これは到底受理できうるものではありません。
別に教会に認めて貰わなくても法的には離婚は済んでいる。
ただ、認めて貰えないままなら生まれてくる子供は神の祝福を受けられない。
なんて非道な。ロバートは憤るが教会側はそれに対し苦虫を噛み潰した表情で諭すのだ。
私たちは決しておかしなことを申し上げているわけではないのですよ、伯爵。
貴方と貴方が新しく妻にしたい女性が奥様に対して不誠実な態度をとっていることをご両親に堂々と語れますか?
そもそもなぜ奥方様はこの場にいらっしゃるどころか届け出にサインすらされていないのですか。
奥様は本当に『出ていかれた』だけですか?
そこまで言われて流石に無礼だと司祭を追い払ったが、恐らく自体はより厄介な方に転がるだろう。
司祭が帰った後にディアナの実家へサインをして欲しい旨の手紙と一緒に届け出を送ったが全く戻ってこない。
なので催促の使いを送ったがディアナは屋敷にいないという伝言だけを持って帰ってきた。
元妻はいったいどこにをほっつきあるいているのか!
離婚したからといって行動が奔放過ぎる、もっと落ち着いた振る舞いをすべきではないのか。
ロバートがディアナと宮廷で再会するのはこの数日後のことである。
元妻であるディアナが行方知れずとなってしまったからである。
厳密にいえばディアナが行方不明になったことに困っているわけではない。
教会に提出する婚姻解消届に元妻の承諾を貰い忘れたので困っているのだ。
この国の貴族は結婚する際ほぼ全員が教会で式を挙げる。
その場で夫となるものと妻となるものの双方が永遠の愛を神と司祭に誓うのだ。
これがただの演出なら気楽なものだが、教会側では正式の誓いとみなすから厄介だ。
配偶者の死亡以外の理由でその誓いを破棄しようとすると、それはもう詰問の域で根掘り葉掘り聞かれる。
そのことを離婚する前に知りたかった、伯爵は今心の底からそう思った。
教会側から詰問される理由について、解消届に元妻の承諾が欠けている事並びに離婚に至る理由が夫側の一方的な主観で書かれている事。
そして伯爵に都合のいいように書かれていて尚、元妻側に同情を禁じ得ないような身勝手さがまざまざと浮かび上がっている事が挙げられるが彼はそれに気づいていなかった。
法的な離婚は済んでいる。こちらはディアナを追い出した際にシシリーが抜け目なく国に提出する書類にサインをさせていたからだ。
長く連れ添った妻だ。更にその妻はあのプライドの高いディアナである。離婚にもそう簡単に同意はしないだろう。
妊娠したシシリーにそう告げた所、彼女は大きな瞳を潤ませながらこう言ったのだ。
「伯爵様、私の為に悪者になっていただけますか……?」
そう震えながら縋るように言われ、ロバートは唯々諾々と年の離れた新妻に従った。
彼女の立てた作戦通り、二人で厳しい言葉を投げつけプライドをへし折ったディアナはスムーズに離婚に同意してくれた。
ディアナは幼馴染で子供の頃からの付き合いのある女だ。寂しさや申し訳なさを感じない訳ではない。
けれど彼女はシシリーと違う。シシリーは己がいなければ生きていけないが彼女はまあ、大丈夫だろう。
元々貴族の生まれで衣食住には不自由していない、更に自分が誠意として渡した慰謝料もある。
プライドが高く口だって達者な強い女だ。もういい年だし離婚されたことも割り切って生きていくに違いない。
そう彼女をよく知るロバートは確信しているのだが、教会側はそれを否定するのだ。
「それは全て貴方だけに都合のいい考えですよ、グレイ伯爵」
新しい婚姻に神が祝福をお与えになるとはくれぐれも思わないでくださいね。
不備だらけの届け出を返却に来たのはなんと二人が式を挙げた教会の司祭だった。
彼はロバートの目の前で届を棄却しながら苦々しく言った。
これは到底受理できうるものではありません。
別に教会に認めて貰わなくても法的には離婚は済んでいる。
ただ、認めて貰えないままなら生まれてくる子供は神の祝福を受けられない。
なんて非道な。ロバートは憤るが教会側はそれに対し苦虫を噛み潰した表情で諭すのだ。
私たちは決しておかしなことを申し上げているわけではないのですよ、伯爵。
貴方と貴方が新しく妻にしたい女性が奥様に対して不誠実な態度をとっていることをご両親に堂々と語れますか?
そもそもなぜ奥方様はこの場にいらっしゃるどころか届け出にサインすらされていないのですか。
奥様は本当に『出ていかれた』だけですか?
そこまで言われて流石に無礼だと司祭を追い払ったが、恐らく自体はより厄介な方に転がるだろう。
司祭が帰った後にディアナの実家へサインをして欲しい旨の手紙と一緒に届け出を送ったが全く戻ってこない。
なので催促の使いを送ったがディアナは屋敷にいないという伝言だけを持って帰ってきた。
元妻はいったいどこにをほっつきあるいているのか!
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