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76 甘い嵐
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何とかここまでは凌げた気がするが、それはあくまで瞬間的なもの。
ディストからの追及はまだまだ止まらないだろう。たとえば俺に知恵を授けている存在についてとか。
内心不安と焦りを抱えていた俺だが、救いは意外なところからやってきた。
「……そろそろ、トピアの意識を解放する必要がありますね」
少しだけ悔しそうな声でディストが言う。
最初何を言っているのか理解できなかったが、恐らく彼は体の持ち主の意識をどうにかして主導権を得ているのだろう。
そしてそれには時間制限があるのだ。良かったと俺は安堵する。
ディストの追及が終わることもだが、彼の他人の体を乗っ取る能力に条件があることにほっとしたのだ。
いや時間制限があっても恐ろしい術ではある。やろうと思えば皇帝に成り代わることも可能ではないか。
そんな俺の心を読んだのか、トピアの体のままディストが微笑む。
「この体はトピアの合意の上で借りています。それにリンクを繋ぐのも色々準備が必要なのですよ」
そう簡単には行えません。
彼の言葉にそうなのかと喜びを表に出さないように頷く。「今はね」と付け足された。本当に安心をさせてくれない奴だ。
「こうやって気軽にレオンと逢えるのはいいけれど、僕の体ではないから不便ですね」
溜息を吐くディストにそういうものなのかと思う。
確かに元の少年の体と、細身ではあるが大人になりつつあるトピアの体は背丈も肉付きも違う。
そもそもトピア自身について俺は年齢も知らない。
侍女として働ける齢ではあるだろうと考えていたが、若く見えたり年かさに見えていたりする可能性だってあるのだ。
「なあ、トピアって何歳なんだ?」
「もう、僕といるのにそういう風情のない質問、あっ」
突然悩ましい声を上げたトピアに俺はびっくりして固まる。
そんな俺の上で彼は己を抱きしめるような仕草で悶えた。
外見は華やかさこそ足りないが整った美女だ。俺はひたすら困った。
「そんな、名前を呼ばれたぐらいでっ、僕の術が……ああっ、もう……」
レオンのせい、ですよ。そう甘く苦し気な声で言うとディストは俺の上に覆い被さった。
微かな花の匂いと共に唇が重なりそうでどきりとしたがそうはならず、この体じゃなければと呟いてディストは気を失った。
途端に掛け布団など比ではない重さに襲われ、俺は無様に呻く。意識のない体とはこんなに重いものなのか。参考になった。
苦労しながら下から這い出て、床に転がった石を拾った。それだけで汗だくになる。
「……体を鍛えることにしよう」
そう呟いて絨毯に座り込んだ。トピアの意識はまだ戻らない。
先程と同じように名前を読んだら瞼がぴくりと揺れた。これなら「本人」が間もなく目覚めそうだ。俺はいそいそと乱れた服を正した。
ディストからの追及はまだまだ止まらないだろう。たとえば俺に知恵を授けている存在についてとか。
内心不安と焦りを抱えていた俺だが、救いは意外なところからやってきた。
「……そろそろ、トピアの意識を解放する必要がありますね」
少しだけ悔しそうな声でディストが言う。
最初何を言っているのか理解できなかったが、恐らく彼は体の持ち主の意識をどうにかして主導権を得ているのだろう。
そしてそれには時間制限があるのだ。良かったと俺は安堵する。
ディストの追及が終わることもだが、彼の他人の体を乗っ取る能力に条件があることにほっとしたのだ。
いや時間制限があっても恐ろしい術ではある。やろうと思えば皇帝に成り代わることも可能ではないか。
そんな俺の心を読んだのか、トピアの体のままディストが微笑む。
「この体はトピアの合意の上で借りています。それにリンクを繋ぐのも色々準備が必要なのですよ」
そう簡単には行えません。
彼の言葉にそうなのかと喜びを表に出さないように頷く。「今はね」と付け足された。本当に安心をさせてくれない奴だ。
「こうやって気軽にレオンと逢えるのはいいけれど、僕の体ではないから不便ですね」
溜息を吐くディストにそういうものなのかと思う。
確かに元の少年の体と、細身ではあるが大人になりつつあるトピアの体は背丈も肉付きも違う。
そもそもトピア自身について俺は年齢も知らない。
侍女として働ける齢ではあるだろうと考えていたが、若く見えたり年かさに見えていたりする可能性だってあるのだ。
「なあ、トピアって何歳なんだ?」
「もう、僕といるのにそういう風情のない質問、あっ」
突然悩ましい声を上げたトピアに俺はびっくりして固まる。
そんな俺の上で彼は己を抱きしめるような仕草で悶えた。
外見は華やかさこそ足りないが整った美女だ。俺はひたすら困った。
「そんな、名前を呼ばれたぐらいでっ、僕の術が……ああっ、もう……」
レオンのせい、ですよ。そう甘く苦し気な声で言うとディストは俺の上に覆い被さった。
微かな花の匂いと共に唇が重なりそうでどきりとしたがそうはならず、この体じゃなければと呟いてディストは気を失った。
途端に掛け布団など比ではない重さに襲われ、俺は無様に呻く。意識のない体とはこんなに重いものなのか。参考になった。
苦労しながら下から這い出て、床に転がった石を拾った。それだけで汗だくになる。
「……体を鍛えることにしよう」
そう呟いて絨毯に座り込んだ。トピアの意識はまだ戻らない。
先程と同じように名前を読んだら瞼がぴくりと揺れた。これなら「本人」が間もなく目覚めそうだ。俺はいそいそと乱れた服を正した。
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