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39話 見知らぬ客人
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一度は俺の命令を拒否した侍女に再度第二皇子の居住棟に行くことを命ずる。
泣き喚いて乱れた髪と化粧は最低限だけ整えるようにと言った。その方が「異変」があったことがわかりやすいからだ。
彼女に命じたことは次の内容になる。
まずカイン付きの侍女たちに面会し自分たちが過去行った非礼を詫びて、第一皇子に今までの所業がばれて叱責されたことを説明する。
その上で俺が侍女たちの行動について弟かもしくは弟が信頼している侍女に直接謝罪したがっている旨を伝え、医者から自室待機を厳命されている為そちらからの来訪を望んでいると懇願する。
これらを上手く行えたなら「第一皇子の頼みを拒否し反抗的な態度を取った」理由での強制解雇ではなく自主退職扱いで離職させると条件を出した。
皇室付きの使用人、特に侍女は貴族か裕福な家の出身が多い。就職理由は金銭だけではなく箔付けのためもある。
リヒトいわくクビにされるのと自ら辞するのではその後の人生が大違いという事だ。
確かに世話をしていた皇子に無礼な態度を取り解雇されたと話すのと、体調不良で侍女職を仕方なく辞することになったではかなり印象が違うだろう。
白豚皇帝の時には皇室を破壊するものとして、鮮血皇帝の時にはカインやディストと共に守護する側に立っていた彼はもしかしたら俺よりもそういった仕組みに詳しいかもしれない。
実際、態度は大人しくなったものの俺の命令に対しぐずぐずとした様子を見せていた侍女はその交換条件を提示した途端目の色を変えた。
彼女が妙な気合を漲らせ部屋を出て、他の次女が朝食を片付けた後侍医が挨拶とともに入室してくる。
いくつかの質問に答え、安静にしているようにという説明に「部屋からは出ない」と回答する。
その上で自室に他人がいると気が散って休めないから、今まで通り一人きりで過ごさせて欲しいと頼む。
怪訝な顔をされたが絶対に部屋から出ないと誓うことで許可して貰えた。
確かに生まれた時から使用人に囲まれて暮らしている人間が今更その存在を気にするのはおかしいことは理解できる。
俺と生まれる前からの付き合いである老いた医師は矢張り腑に落ちない様子で話しかけてきた。
「殿下は最近随分とお変わりになられましたな。とみにお痩せになったり、そのせいか昔のように体調を崩されたり、案じております」
「体は以前よりずっと調子がいい、痩せすぎも駄目だが太りすぎもよくないようだ。熱を出したのは冷えた廊下で転寝をした俺の不注意だな」
そのようなことは無いように以後気を付ける。そう俺が笑いかけると医師は不承不承といった態度でそれ以上語ることを止めた。
リヒトは藪医者だと言っていたが、恐らく彼の知識と一般的な医師の知識ではかなりの差がある気がする。この医師の能力が低いわけではないと思う。
あの賢者の知恵をこの国の医学に応用出来たら、もしかしたらとんでもないことになるのではないか。
しかし常識が違いすぎて医師や識者たちを納得させるのは難しいかもしれない。
そんなことを考えている内に役割を終えた侍医は退出していった。
それから数十分後、俺の部屋に新たな客人が訪れる。
先程の侍女が俺の依頼を無事成功させたのだ。ゃってきたカイン付きの侍女は「トピア」と名乗った。
泣き喚いて乱れた髪と化粧は最低限だけ整えるようにと言った。その方が「異変」があったことがわかりやすいからだ。
彼女に命じたことは次の内容になる。
まずカイン付きの侍女たちに面会し自分たちが過去行った非礼を詫びて、第一皇子に今までの所業がばれて叱責されたことを説明する。
その上で俺が侍女たちの行動について弟かもしくは弟が信頼している侍女に直接謝罪したがっている旨を伝え、医者から自室待機を厳命されている為そちらからの来訪を望んでいると懇願する。
これらを上手く行えたなら「第一皇子の頼みを拒否し反抗的な態度を取った」理由での強制解雇ではなく自主退職扱いで離職させると条件を出した。
皇室付きの使用人、特に侍女は貴族か裕福な家の出身が多い。就職理由は金銭だけではなく箔付けのためもある。
リヒトいわくクビにされるのと自ら辞するのではその後の人生が大違いという事だ。
確かに世話をしていた皇子に無礼な態度を取り解雇されたと話すのと、体調不良で侍女職を仕方なく辞することになったではかなり印象が違うだろう。
白豚皇帝の時には皇室を破壊するものとして、鮮血皇帝の時にはカインやディストと共に守護する側に立っていた彼はもしかしたら俺よりもそういった仕組みに詳しいかもしれない。
実際、態度は大人しくなったものの俺の命令に対しぐずぐずとした様子を見せていた侍女はその交換条件を提示した途端目の色を変えた。
彼女が妙な気合を漲らせ部屋を出て、他の次女が朝食を片付けた後侍医が挨拶とともに入室してくる。
いくつかの質問に答え、安静にしているようにという説明に「部屋からは出ない」と回答する。
その上で自室に他人がいると気が散って休めないから、今まで通り一人きりで過ごさせて欲しいと頼む。
怪訝な顔をされたが絶対に部屋から出ないと誓うことで許可して貰えた。
確かに生まれた時から使用人に囲まれて暮らしている人間が今更その存在を気にするのはおかしいことは理解できる。
俺と生まれる前からの付き合いである老いた医師は矢張り腑に落ちない様子で話しかけてきた。
「殿下は最近随分とお変わりになられましたな。とみにお痩せになったり、そのせいか昔のように体調を崩されたり、案じております」
「体は以前よりずっと調子がいい、痩せすぎも駄目だが太りすぎもよくないようだ。熱を出したのは冷えた廊下で転寝をした俺の不注意だな」
そのようなことは無いように以後気を付ける。そう俺が笑いかけると医師は不承不承といった態度でそれ以上語ることを止めた。
リヒトは藪医者だと言っていたが、恐らく彼の知識と一般的な医師の知識ではかなりの差がある気がする。この医師の能力が低いわけではないと思う。
あの賢者の知恵をこの国の医学に応用出来たら、もしかしたらとんでもないことになるのではないか。
しかし常識が違いすぎて医師や識者たちを納得させるのは難しいかもしれない。
そんなことを考えている内に役割を終えた侍医は退出していった。
それから数十分後、俺の部屋に新たな客人が訪れる。
先程の侍女が俺の依頼を無事成功させたのだ。ゃってきたカイン付きの侍女は「トピア」と名乗った。
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