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18話 賢者、健康診断をする(下)
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それは血では出来ないのかと聞くと、調べることができる情報が違うと返される。
「しかし、確かにお前に見苦しい姿は何度も見せているが、それでも……目の前でするのはなあ」
「いやいやいや俺の目の前で出してくれとは頼んでないよ!俺ネクロマンサー野郎並の変態じゃないしカインに殺されたくないし」
「カインがお前を殺す筈ないだろう。しかし、その場合どうすればいいんだ?携帯用便器を使うのか」
「使い捨て容器あるから、明日の朝一で入れてきて。血も明日俺が抜く。絶対自分でやったりとか他の奴にやらせないでね。下手そうだから」
「わかった」
そんなやりとりをして俺の健康状態を調べた結果、リヒトの予想は当たっていたらしい。
俺はかなりの大病になりかけていたとのことだった。賢者が言うには糖尿病という病気とのことだ。
肥満と過度な砂糖と油の摂り過ぎが原因だろうと言う診断だ。
「いや他にもいっぱいあるけどね。爆弾一杯抱えすぎてびっくりしたわ」
よくこれで前回三十過ぎまで生きてられたね。動くのも辛いし、生きてるだけで嫌になるだろうに。そう呆れたように言われる。
確かに足の指が腐っていると言われた時は驚いた。しかし三十に近くなった頃には自分で歩くことはなかったので余り困った記憶はないが。
「酒を飲めば痛みはぼやけたし、甘いものを食べると気分は良くなったし、動く必要もなかったから案外平気だったぞ」
「それ平気じゃなく末期だったんだよねえ。食事療法の後に運動量増やして爆弾全部潰すわ」
そう宣言したリヒトは俺を通して料理長に出す食事の内容を変えさせた。
野菜は多めに。油や肉は少なめに。赤身の肉や魚は食べて言い。全体的に味付けは薄くし、食べるパンの量は減らす。
するとびっくりするぐらい俺の体重は減っていったのだ。
ただ簡単ではあったが楽ではなかった。腹は空いたし脂身の多い肉や甘い物が食べたくて仕方がなかった。
何よりそれを「我慢しなければいけない」というのが初めて感じた苦痛だったのだ。
空腹で眠れない夜を過ごすなど初めての経験だった。腹が減り続けるだけでここまで気分が落ち込み悲しくなるものなのかと酷く驚いた。
しかしこの体験は減量以外にも良い効果をもたらしてくれた。
自分の指示の結果だと、賢者は俺が眠れない夜は話し相手になってくれるようになった。律義な人間だ。
そんな彼に俺は寝台に仰向けになりながら話しかける。
「今日授業で知ったんだが、この国には飢えた貧民が多く暮らす地域があるらしい。俺はそこに食料を支援したいのだが」
まだ皇帝じゃないし、どうすればいいかな。そう俺が問いかけるとリヒトはあからさまに警戒した声を出した。
「……何か悪い物でも食べた?なんでいきなり賢くなってるの?」
「そんなもの食べていない。いや食べられないから思ったんだ。お腹が空いたまま暮らすのって大変だろうなと」
「予想以上にシンプルな気づきで吃驚だよ。まあ、そうでしょうね。いいんじゃない」
長く続く飢えは、上流階級への怒りを生み出すし。俺たちはそれを利用させて貰ったけど。
当たり前のように言われてそういえばこいつは俺を殺した側だったなと思い出す。
「でも俺に聞くのは間違っている。それこそ説明をした教師に聞くべきだね。そして豚ちゃんが今までの豚ちゃんじゃないと気づかせてやりな」
「どうしてだ?」
「あんたの城内での基本的人権を確保する為だよ。高貴な家畜扱いじゃなくてね。ちゃんと物を考えることができますってどんどんアピールしていくべきってこと」
でもその場で言いなりにならず、考えてから決めるって言えよ。俺も聞いて判断したいから。
そうリヒトに言われて俺はわかったと頷いた。
「しかし、確かにお前に見苦しい姿は何度も見せているが、それでも……目の前でするのはなあ」
「いやいやいや俺の目の前で出してくれとは頼んでないよ!俺ネクロマンサー野郎並の変態じゃないしカインに殺されたくないし」
「カインがお前を殺す筈ないだろう。しかし、その場合どうすればいいんだ?携帯用便器を使うのか」
「使い捨て容器あるから、明日の朝一で入れてきて。血も明日俺が抜く。絶対自分でやったりとか他の奴にやらせないでね。下手そうだから」
「わかった」
そんなやりとりをして俺の健康状態を調べた結果、リヒトの予想は当たっていたらしい。
俺はかなりの大病になりかけていたとのことだった。賢者が言うには糖尿病という病気とのことだ。
肥満と過度な砂糖と油の摂り過ぎが原因だろうと言う診断だ。
「いや他にもいっぱいあるけどね。爆弾一杯抱えすぎてびっくりしたわ」
よくこれで前回三十過ぎまで生きてられたね。動くのも辛いし、生きてるだけで嫌になるだろうに。そう呆れたように言われる。
確かに足の指が腐っていると言われた時は驚いた。しかし三十に近くなった頃には自分で歩くことはなかったので余り困った記憶はないが。
「酒を飲めば痛みはぼやけたし、甘いものを食べると気分は良くなったし、動く必要もなかったから案外平気だったぞ」
「それ平気じゃなく末期だったんだよねえ。食事療法の後に運動量増やして爆弾全部潰すわ」
そう宣言したリヒトは俺を通して料理長に出す食事の内容を変えさせた。
野菜は多めに。油や肉は少なめに。赤身の肉や魚は食べて言い。全体的に味付けは薄くし、食べるパンの量は減らす。
するとびっくりするぐらい俺の体重は減っていったのだ。
ただ簡単ではあったが楽ではなかった。腹は空いたし脂身の多い肉や甘い物が食べたくて仕方がなかった。
何よりそれを「我慢しなければいけない」というのが初めて感じた苦痛だったのだ。
空腹で眠れない夜を過ごすなど初めての経験だった。腹が減り続けるだけでここまで気分が落ち込み悲しくなるものなのかと酷く驚いた。
しかしこの体験は減量以外にも良い効果をもたらしてくれた。
自分の指示の結果だと、賢者は俺が眠れない夜は話し相手になってくれるようになった。律義な人間だ。
そんな彼に俺は寝台に仰向けになりながら話しかける。
「今日授業で知ったんだが、この国には飢えた貧民が多く暮らす地域があるらしい。俺はそこに食料を支援したいのだが」
まだ皇帝じゃないし、どうすればいいかな。そう俺が問いかけるとリヒトはあからさまに警戒した声を出した。
「……何か悪い物でも食べた?なんでいきなり賢くなってるの?」
「そんなもの食べていない。いや食べられないから思ったんだ。お腹が空いたまま暮らすのって大変だろうなと」
「予想以上にシンプルな気づきで吃驚だよ。まあ、そうでしょうね。いいんじゃない」
長く続く飢えは、上流階級への怒りを生み出すし。俺たちはそれを利用させて貰ったけど。
当たり前のように言われてそういえばこいつは俺を殺した側だったなと思い出す。
「でも俺に聞くのは間違っている。それこそ説明をした教師に聞くべきだね。そして豚ちゃんが今までの豚ちゃんじゃないと気づかせてやりな」
「どうしてだ?」
「あんたの城内での基本的人権を確保する為だよ。高貴な家畜扱いじゃなくてね。ちゃんと物を考えることができますってどんどんアピールしていくべきってこと」
でもその場で言いなりにならず、考えてから決めるって言えよ。俺も聞いて判断したいから。
そうリヒトに言われて俺はわかったと頷いた。
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