【BL】白豚皇帝と呼ばれた俺が革命で死に戻ったら、俺を殺した弟が滅茶苦茶慕ってくるようになって可愛いけど怖い

砂礫レキ

文字の大きさ
上 下
9 / 89

9話 公爵との対面

しおりを挟む
 悪夢を見てから三日後、グランシー公爵が俺に会いに来た。息子であるディストも連れてだ。

 彼は応接室に現れた俺に挨拶をするなりこう切り出してきた。

 
「殿下が魔女の子供と仲良くしているという噂を耳に挟んだのですが」


 どういったお考えなのでしょうか。言葉こそ丁寧だがその声には怒りが宿っている。

 ディストの父、ノーマン・グランシー。彼は俺の伯父だ。

 亡くなった母と双子なだけあってよく似ている。

 三十代半ばの男性だが、声以外は男装の麗人のようだ。青年になったディストにも似ている。親子だから当然か。

 昔は彼に母親の面影を重ねたこともあった。伯父も従順な俺を可愛がってくれた。

 しかしカインに対し嫌悪感が無くなった状態で対面すると、随分と問題のある人だなと思う。

 カインの母親は今は皇妃だしカイン自身だって皇帝の実子だ。

 皇室と血縁関係があるとはいえ公爵が罵倒していい存在ではない。だが俺も人の事は言えない。

 白豚皇帝として生きて死んだ記憶がなければ伯父に同調し彼らを罵っていただろう。そして今まではそうしていたに違いない。

 だがもう違う。同じ道は歩まない。


「魔女の子とは誰の事でしょうか、グランシー公爵。まさか私の弟の事ではありませんよね」


 だとしたら貴男を不敬罪で拘束しなければいけなくなる。俺の言葉に彼は大きく目を見開いた。

 公爵の背後に立っているディストも少し驚いた顔をしている。人間らしい反応に俺は少し安堵した。


「……どういうことだ、レオンハルト。ロベリアが亡くなってからまだ二年しか経っていないというのに、まさか、お前まで……」

「勘違いしないでください。私は母を忘れたり軽んじたりするつもりは一切ありません」


 以前は公爵の言いなりになっていたからわからなかったが、こうやって反発したことでわかった。

 思っていたよりもずっと感情的な人だ。狂気すら感じる程に。

 それだけ自分の妹を大切に思っていたのだろうが、彼は今確実に病んでいる。

 哀れな人だ。俺が今後カインを弟として認め接していけば公爵の狂気はより深くなるのだろう。

 母に似たその顔が狂人のようになっていくのは辛い。そう思った。


「けれど、伯父上もご存知でしょう。私の母はとても優しい人でした」


 彼女は自分の息子が年下の子供を虐める姿を見て喜ぶ人間でしょうか。

 過去に戻ってから何回も考えたことを口に出す。実際母の気持ちなんてわからない。

 死後の世界で伯父と同じように怒り狂っているかもしれない。

 けれどそれでも、俺は母が優しい人だと信じたいと思った。


「伯父上の気持ちはわかります……今でも。けれど抗議をするなら父にでしょう」


 私も貴男も。そう締め括る。実際そうなのだ。

 カインたちを城に迎えたのは父なのだから。けれど俺も公爵もそんなことはしなかった。相手が皇帝だからだ。

 結局弱い者虐めをしていただけだ。


「……陛下になんて、言えるわけがないでしょう」


 血を吐く様に公爵は呟いた。

 昔は彼を随分と大人だと感じていたが三十代を一度経験した今はそこまで遠い存在だと感じない。

 今回は、言いなりになって操られるのではなく。 

 
「ならば、父に対する愚痴なら内密に幾らでも聞きます」

「殿下……」

「母が言っていました。貴男と父は親友だったと。俺を父だと思って罵ってくれても構いません」

「そんなこと、出来る訳ないでしょう!子供相手にそんな八つ当たりみたいなことを……」


 公爵の言葉が途中で止まる。そうだ、そういうことなのだ。今まで俺たちがカインにしていたことは。

 恥じ入った表情を浮かべている伯父の瞳からは狂気が消えていた。

 そのことにほっとしていた俺は気づかなかった。俺たちを見つめているディストの瞳に新たな狂気が宿っていることを。 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

堕とされた悪役令息

SEKISUI
BL
 転生したら恋い焦がれたあの人がいるゲームの世界だった  王子ルートのシナリオを成立させてあの人を確実手に入れる  それまであの人との関係を楽しむ主人公  

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...