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第一章
28.二人の巫女姫
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レイは時々思い出す様にしながらエリスティアに短い昔話を語った。
それはアスラ国の海沿いにある神殿での悲劇だった。
遠い昔、癒しの神殿には美しい巫女姫が居た。
彼女は艶やかな黒髪と神秘的な紫色の瞳を持っていた。
巫女姫は優れた癒しの力を持ち民から敬われた。
そんな彼女には双子の妹が居た。
彼女も姉と同じように癒しの力を持っていた。
しかしその髪は奇妙に光り輝き、瞳は血のように不気味な赤色だった。
アスラ国に存在しない色合いの娘を民たちは忌まわしく思った。
だから癒しを求める時は黒髪の巫女姫だけに縋った。
彼らは同じ力を持つ金髪の娘を無視したのだ。
だが転機が訪れる。
王が美しい巫女姫を見初め、妻にする為城へ連れ帰ったのだ。
神殿は仕方なく彼女の妹を新たな巫女姫にした。
金髪の巫女姫は誠心誠意民たちを癒した。
しかし姉のように敬われることはなかった。
民たちの信頼を得ようと新しい巫女姫は努力した。
癒しを求める声があれば深夜でも起きて力を使った。
しかしそれで得られたのは、信頼ではなく軽視。
民たちは巫女姫に対し感謝と尊敬を忘れ、便利な道具のように扱うようになった。
そして疲れ果てた金髪の巫女姫は、ある日崖からその身を投げた。
夕暮れの太陽に金の髪が煌き、痩せ細った体は水底に沈む。
それから一週間海は血の色に染まった。
異変を知り城から神殿に戻った姉巫女は嘆き悲しんだ。
そして二度と癒しの力を民たちに使うことはなかった。
海はやがて元の青色に戻ったが、癒しの力を持つ巫女姫が新しく生まれることはなかった。
ここまでを語り終えるとレイは疲れたように息を吐いた。
そんな彼の手元にイメリアが紅茶を注いだカップを置く。
「なんだか、やるせないお話でしたね」
そう感想を述べながら侍女は黒髪の少女に視線を移した。
エリスティアはレイ以上に暗い顔をしていた。
「御嬢様、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、私は、大丈夫……」
心配そうに尋ねるイメリアにエリスティアは答える。
その手前に置かれたカップの紅茶は少しも減らないまま冷めていた。
「おい、全然大丈夫に見えないぞ」
不安そうに言いながらレイがエリスティアを正面から見つめる。
今の表情を見られたくなくて黒髪の少女は横を向いた。
「御免なさい、妹巫女が可哀想で感情移入しちゃったみたい……」
気持ちが落ち着くまで遊戯室にいるわね。
そう言い捨ててエリスティアは部屋から立ち去る。
少ししたら戻ってくるから一人にして欲しいと釘を刺して。
廊下を歩いている間に涙が勝手に流れてくる。
エリスティアはそのことに戸惑いながら、遊戯室の扉を開いた。
それはアスラ国の海沿いにある神殿での悲劇だった。
遠い昔、癒しの神殿には美しい巫女姫が居た。
彼女は艶やかな黒髪と神秘的な紫色の瞳を持っていた。
巫女姫は優れた癒しの力を持ち民から敬われた。
そんな彼女には双子の妹が居た。
彼女も姉と同じように癒しの力を持っていた。
しかしその髪は奇妙に光り輝き、瞳は血のように不気味な赤色だった。
アスラ国に存在しない色合いの娘を民たちは忌まわしく思った。
だから癒しを求める時は黒髪の巫女姫だけに縋った。
彼らは同じ力を持つ金髪の娘を無視したのだ。
だが転機が訪れる。
王が美しい巫女姫を見初め、妻にする為城へ連れ帰ったのだ。
神殿は仕方なく彼女の妹を新たな巫女姫にした。
金髪の巫女姫は誠心誠意民たちを癒した。
しかし姉のように敬われることはなかった。
民たちの信頼を得ようと新しい巫女姫は努力した。
癒しを求める声があれば深夜でも起きて力を使った。
しかしそれで得られたのは、信頼ではなく軽視。
民たちは巫女姫に対し感謝と尊敬を忘れ、便利な道具のように扱うようになった。
そして疲れ果てた金髪の巫女姫は、ある日崖からその身を投げた。
夕暮れの太陽に金の髪が煌き、痩せ細った体は水底に沈む。
それから一週間海は血の色に染まった。
異変を知り城から神殿に戻った姉巫女は嘆き悲しんだ。
そして二度と癒しの力を民たちに使うことはなかった。
海はやがて元の青色に戻ったが、癒しの力を持つ巫女姫が新しく生まれることはなかった。
ここまでを語り終えるとレイは疲れたように息を吐いた。
そんな彼の手元にイメリアが紅茶を注いだカップを置く。
「なんだか、やるせないお話でしたね」
そう感想を述べながら侍女は黒髪の少女に視線を移した。
エリスティアはレイ以上に暗い顔をしていた。
「御嬢様、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、私は、大丈夫……」
心配そうに尋ねるイメリアにエリスティアは答える。
その手前に置かれたカップの紅茶は少しも減らないまま冷めていた。
「おい、全然大丈夫に見えないぞ」
不安そうに言いながらレイがエリスティアを正面から見つめる。
今の表情を見られたくなくて黒髪の少女は横を向いた。
「御免なさい、妹巫女が可哀想で感情移入しちゃったみたい……」
気持ちが落ち着くまで遊戯室にいるわね。
そう言い捨ててエリスティアは部屋から立ち去る。
少ししたら戻ってくるから一人にして欲しいと釘を刺して。
廊下を歩いている間に涙が勝手に流れてくる。
エリスティアはそのことに戸惑いながら、遊戯室の扉を開いた。
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