君にキュンして恋をした

今宵恋世

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嫌な予感

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【綾斗side】

「まつむらーっ!」
「キャー!」……
「ファンサ、しなくていいのかよ」
「なんだよ、ファンサって」
「……」

少し後ろを安藤さんと歩く片瀬さんを見て言う。

「俺は片瀬さんにしか興味ない、って」
「一途だなー、綾斗は」

翔太は3階の窓からのぞく先輩達を見つめた。

「人気者は違いますねぇ…」

正直、こうやって騒がれるのは好きじゃない。

「……なぁ」

翔太が珍しく険しい顔をして言う。

「これだけ人気なら、分かってると思うけど、乃愛ちゃんの方になんかあってもおかしくねぇぞ?」

「え?」

「乃愛ちゃん、好きなのはいいけど。
それをよく思わない人も、中にはいんじゃねぇの、って話」

翔太は顔を上げて、
いまだ、キャーキャー、
騒ぐ先輩達をため息混じりに見る。

「あぁいう人達、とか…」

「そんな陰湿なことするか?
俺らもう中学生だぞ?」

「まぁ、そうだけど…一応。」

能天気に見えて意外と
心配性な翔太の新たな一面を知る。

「…気をつけとくよ」

♡♡♡

教室に戻って、次の音楽の準備を始める。
移動教室だ。

「綾斗ー、準備できたー?」
「やべぇ、リコーダー忘れたかもしんねぇ」
「今日テストだぞ。どうすんだよ」

脅しのように翔太がそう言ってくる。
やべぇ…。
音楽の先生なんか怖いんだよなぁ…。
どうしよ…。そう思っていた時だった。

「ねぇ……!乃愛見なかった!?」

教室に血相を変えて安藤さんが
飛び込んできた。

「乃愛ちゃん?見てないけど……どうかしたの?」

リコーダーを探す手を止めて安藤さんを見る。

「トイレ…っ、行くから先戻ってて、って言ったんだけど…、いなくて…っ、さっき怖そうな先輩にどっか連れてかれるの見た、って…っ、隣のクラスの子が言ってて…っ、それで…っ」

嫌な予感がした。
さっきの……

((乃愛ちゃん、好きなのはいいけど。
それをよく思わない人も、中にはいんじゃねぇの、って話))

翔太に言われた言葉が頭をチラつく。

「ちょっと俺探してくる……!!!」
「あっ、綾斗…!」

気づいたら俺は廊下を突っ走っていた。

♡♡♡

結構隅々まで探したのに、
どこにもいねぇ…。

「乃愛ー!」

焦りからか、あれだけ口にできなかった名前が今だけはスラッと出てきた。

「…」

その時だ。

 「やばくない?先生呼ぶ?」
「え、けど絶対うちら怒られるじゃん」……

あそこか…?
茂みが生い茂る校舎裏から人の話し声が聞こえてきた。

「うぅ……っ、」

泣き声が聞こえる…。
急いで向かうと、

「乃愛……っ!!!」

そこには先輩達に囲まれ、
地面にうずくまる片瀬さんの姿があった。


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