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近付く距離
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【綾斗side】
「……っ」
目が覚めると真っ白な天井が目に入った。
薬品臭い……。保健室か……?
少し薄暗い保健室……。
俺はベッドの上で仰向けに寝かせられていた。
頭には氷嚢が乗っている。
あ、そうだ。俺……リレーで負けて……。
ボー、とする頭が負けたことを思い出す。
悔しさだけが鮮明に湧き上がってきた。
体調が悪いなら誰かに代わってもらえばいい。
けど……
走りたかったんだよな……ちゃんと。
だって……
片瀬さんの【ハピラブ】……3巻…。
茶ノ宮が体育大会で
アンカーやってるシーン。付箋ついてた。
((え、と……これはその、なんていうか……。わぁー!”キュン”だー!いう……その、))
((かっこいいなぁー、みたいな!?、ほら!あれだよあれ!あこがれ!……みたいな?))
片瀬さんに…そんなふうに思ってもらえる茶ノ宮が、
うらやましくてたまらなかったんだ…。
「……」
天井をぼんやりと眺めていると、
左腕をぷにぷにされる感覚に気づく。
ん……なんだ………?
見ると隣に…
「……っ」
片瀬さんがいた。
布団からはみ出た俺の腕の血管をぷにぷにしてる。
かわいいなぁ………。
そんな血管好きなのかよ。
「あっ、綾斗くん…っ、起きたの…っ?分かる?」
俺が起きたことに気づいた
片瀬さんが心配そうに俺を見る。
「…」
上手く声が出なくてうなずいた。
その拍子に氷嚢がずり落ちるが
片瀬さんがまた乗せてくれた。
「びっくりした……っ、走り終わったら
急に倒れちゃって…っ」
あ…そうか。あの後倒れたのか……。
ベッド横の椅子に腰掛けた片瀬さんが
目に涙を浮かべて俺を見ている。
ずっとここにいてくれたのかな……。
時計が目に入る。
もう後夜祭の時間だ。
本来なら、運動場にいるはずなのに……。
「…………かっこ悪いな…俺……」
喉がカラカラで、
かすれた声しか出せなかった。
「……」
いいところを見せるつもりだった。
なのに…
いつも大事なとこで、これだ。
受験の時もそうだ。
俺はプレッシャーに尽く弱い。
「……っ、」
ギュ……
その時だった。
体がフワッと包まれる感覚があった。
抱きしめられていた。片瀬さんに…。
また氷嚢がずれて今度は地面に落ちる。
「……かたせさん…」
心臓の辺りにちょこんと乗っかる小さな体。
ギュゥ……、と白くてか細い手が俺の服が強くつかまれた。
つっぱる服の感覚がうれしかった。けど……
「あ…、風邪移ったら大変だから、離れろって…」
俺は片瀬さんの肩を持って、
自分から遠ざけようとした。
しかし、もっと強く抱きしめられて
小さな声が耳に届く。
「……………………かっこよかったよっ…」
「…え?」
ピュ───────……
バ─────────────ン…………
「あ」
その時だった。
薄暗い保健室がパァッと、光に包まれた。
窓枠からはみ出るほどの
大きくて、カラフルな花火が見える。
後夜祭が…はじまったんだ……。
花火のせいで今
片瀬さんがなんて言ったか聞こえなかった…。
((まぁ、とりあえずさ!誘ってみろよ!
”ハート伝説”!手を繋ぐ、繋がない、
は別にして一緒に見るくらいはいいだろ!))…
少し前の翔太との会話を思い出す。
色々あって、誘うつもりがまだ誘ってなかった。
「うわぁー…綺麗だねっ」
窓から見える花火を見て
片瀬さんが笑っている。
でもこれ……結果的には今……
一緒に見れてる?のか?
けど……手はつないでいない。
「……」
片瀬さんの横顔に話しかける。
「片瀬さん…は、……伝説、信じてるタイプ……?」
「うん?伝説……??」
花火から目を離して俺を見た片瀬さん。
「…ハート伝説のこと?」
「あぁ……」
片瀬さんは気まずそうに笑って言った。
「全然…、信じてなかった」
「……」
「あっ、綾斗くん!信じてるタイプだった!?」
((あんなん誰も信じてなくね?))
((バカ!女子はあぁいうの信じるんだよ!))
翔太の野郎……
「い、いや……?全然?」
「あっ、ごめん!
信じてるタイプ…だったよね!?
なんかごめん……」
「いや……っ、え、と」
何度かごめん、と謝られる俺……。
ハート伝説を信じているタイプ、
と勘違いされたみたいだ。
まぁ、実際翔太の言葉に、
少しは……信じているタイプになってはいたけど……!?
けど……
なんか俺だけすっげぇロマンチスト
みたいになったじゃねぇか…!!!
「……っ」
目が覚めると真っ白な天井が目に入った。
薬品臭い……。保健室か……?
少し薄暗い保健室……。
俺はベッドの上で仰向けに寝かせられていた。
頭には氷嚢が乗っている。
あ、そうだ。俺……リレーで負けて……。
ボー、とする頭が負けたことを思い出す。
悔しさだけが鮮明に湧き上がってきた。
体調が悪いなら誰かに代わってもらえばいい。
けど……
走りたかったんだよな……ちゃんと。
だって……
片瀬さんの【ハピラブ】……3巻…。
茶ノ宮が体育大会で
アンカーやってるシーン。付箋ついてた。
((え、と……これはその、なんていうか……。わぁー!”キュン”だー!いう……その、))
((かっこいいなぁー、みたいな!?、ほら!あれだよあれ!あこがれ!……みたいな?))
片瀬さんに…そんなふうに思ってもらえる茶ノ宮が、
うらやましくてたまらなかったんだ…。
「……」
天井をぼんやりと眺めていると、
左腕をぷにぷにされる感覚に気づく。
ん……なんだ………?
見ると隣に…
「……っ」
片瀬さんがいた。
布団からはみ出た俺の腕の血管をぷにぷにしてる。
かわいいなぁ………。
そんな血管好きなのかよ。
「あっ、綾斗くん…っ、起きたの…っ?分かる?」
俺が起きたことに気づいた
片瀬さんが心配そうに俺を見る。
「…」
上手く声が出なくてうなずいた。
その拍子に氷嚢がずり落ちるが
片瀬さんがまた乗せてくれた。
「びっくりした……っ、走り終わったら
急に倒れちゃって…っ」
あ…そうか。あの後倒れたのか……。
ベッド横の椅子に腰掛けた片瀬さんが
目に涙を浮かべて俺を見ている。
ずっとここにいてくれたのかな……。
時計が目に入る。
もう後夜祭の時間だ。
本来なら、運動場にいるはずなのに……。
「…………かっこ悪いな…俺……」
喉がカラカラで、
かすれた声しか出せなかった。
「……」
いいところを見せるつもりだった。
なのに…
いつも大事なとこで、これだ。
受験の時もそうだ。
俺はプレッシャーに尽く弱い。
「……っ、」
ギュ……
その時だった。
体がフワッと包まれる感覚があった。
抱きしめられていた。片瀬さんに…。
また氷嚢がずれて今度は地面に落ちる。
「……かたせさん…」
心臓の辺りにちょこんと乗っかる小さな体。
ギュゥ……、と白くてか細い手が俺の服が強くつかまれた。
つっぱる服の感覚がうれしかった。けど……
「あ…、風邪移ったら大変だから、離れろって…」
俺は片瀬さんの肩を持って、
自分から遠ざけようとした。
しかし、もっと強く抱きしめられて
小さな声が耳に届く。
「……………………かっこよかったよっ…」
「…え?」
ピュ───────……
バ─────────────ン…………
「あ」
その時だった。
薄暗い保健室がパァッと、光に包まれた。
窓枠からはみ出るほどの
大きくて、カラフルな花火が見える。
後夜祭が…はじまったんだ……。
花火のせいで今
片瀬さんがなんて言ったか聞こえなかった…。
((まぁ、とりあえずさ!誘ってみろよ!
”ハート伝説”!手を繋ぐ、繋がない、
は別にして一緒に見るくらいはいいだろ!))…
少し前の翔太との会話を思い出す。
色々あって、誘うつもりがまだ誘ってなかった。
「うわぁー…綺麗だねっ」
窓から見える花火を見て
片瀬さんが笑っている。
でもこれ……結果的には今……
一緒に見れてる?のか?
けど……手はつないでいない。
「……」
片瀬さんの横顔に話しかける。
「片瀬さん…は、……伝説、信じてるタイプ……?」
「うん?伝説……??」
花火から目を離して俺を見た片瀬さん。
「…ハート伝説のこと?」
「あぁ……」
片瀬さんは気まずそうに笑って言った。
「全然…、信じてなかった」
「……」
「あっ、綾斗くん!信じてるタイプだった!?」
((あんなん誰も信じてなくね?))
((バカ!女子はあぁいうの信じるんだよ!))
翔太の野郎……
「い、いや……?全然?」
「あっ、ごめん!
信じてるタイプ…だったよね!?
なんかごめん……」
「いや……っ、え、と」
何度かごめん、と謝られる俺……。
ハート伝説を信じているタイプ、
と勘違いされたみたいだ。
まぁ、実際翔太の言葉に、
少しは……信じているタイプになってはいたけど……!?
けど……
なんか俺だけすっげぇロマンチスト
みたいになったじゃねぇか…!!!
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