10 / 14
距離
しおりを挟む
【綾斗side】
診察室に入っていった
片瀬さんの背中を見つめて
俺は病院の待合室のソファに腰掛けた。
待っている間、気が気じゃなかった。
あんなのどう考えても痛いに決まってる。
強がっているのは丸分かりで。
「ううん……っ!全然?」と
無理に笑う片瀬さんの体は少し震えていた。
抱き寄せた時に伝わってきた
あの震えが今も俺の体に残っていた。
びっくりするぐらい…震えてた。
3対1だ。怖かったに決まってる。
片瀬さんを思うと涙が溢れて止まらなかった。
待合室でひたすら声を押し殺して泣いた。
「うっ…俺の…せいだ……っ」
この先一生…歩けない、とかだったら…
どうしよう…っ、、。…どうしよう。
ガラー……
「お大事にしてくださいね」
「はい、ありがとうございました」
しばらくすると、
診察室から松葉杖ついて、
片瀬さんが出てきた。
急いで涙を拭って、駆け寄る。
松葉杖を憧れだった、
と言って笑う片瀬さんを前に、
さっき拭ったばかりの涙が
もう1度溢れてきた。
手で覆って必死に隠そうとするが、
ダメだった。
男が泣くとか、まじダサいよな…。
それに、今泣きたいのは俺じゃないはずなのに。
こうなる前に…、
ハッキリさせるべきだったんだ。
自分の気持ちをちゃんと伝えたくて…
俺は覚悟を決めた。だけど…
「片瀬さん。俺……っ、片瀬さんのこと……」
言おうとした、”好きだ”は
「ごめん…。今日はちょっと…疲れちゃった。帰る、ね」
さえぎられてしまって。
多分…
距離ができてしまった───────。
♡♡♡
結局。
片瀬さんがやるはずだった
借り物競争が俺がやることになった。
「乃愛ー…、大丈夫ー?痛くないー?」
「痛くない、痛くない!」
休み時間
安藤さんの心配する声が聞こえてくる。
あの怪我は、どう考えても俺のせいだ。
あれだけ。隣の席になれたのが
うれしかったのに、今は…少し、
いずらかった。
あれから、ほとんど会話もない。
俺と、片瀬さんの間には
見えない壁が出来たみたいだ。
なれない手つきでフラフラと松葉杖をつく片瀬さんに、
ただ申し訳なくなる。
キーンコーンカーンコーン…
次は理科。移動教室だ。
「乃愛ー、準備出来たら呼んでー」
基本的に片瀬さんと一緒に行動してくれる安藤さん。
移動教室の時は松葉杖の乃愛の荷物を
持ってくれているようだ。
「あっ、うんー!ありがとうーっ」
横目で理科の教科書を準備する片瀬さんを見る。
「よいしょ…」
机の横にかけたカバンに手を伸ばしている。水筒を飲みたいみたいだ。
取ろうか?の一言が喉まで来て止まる。
…言えねぇ。
どう接したらいいか、分かんねぇ…。
こんなに…近くにいるのに。
そんなふうにグタグタと考えている時だった。
「あっ、きゃぁ……」
片瀬さんがバランスを崩し、
倒れそうになった。
「……っ、」
とっさに手が伸びて、
片瀬さんを抱きしめてしまう。
「あっ……、ご、ご、ごめん!」
だけどすぐに片瀬さんが叫ぶ。
「……いや…大丈夫か?」
「……」
すぐに俺に寄せられる片瀬さんの重みがスっ、と離れていく。
「うん…、大丈夫。ごめんね…」
片瀬さんはなんも悪くないのに。何度も
ごめんね、を言って申し訳なさそうに俺を見る。
「これ…」
女の子のカバンに勝手に出すのはどうかと思ったけど、いても立ってもいられず…。
片瀬さんの水筒を差し出す。
「飲もうとしてただろ…」
「あ…うん…。ありがとう…」
診察室に入っていった
片瀬さんの背中を見つめて
俺は病院の待合室のソファに腰掛けた。
待っている間、気が気じゃなかった。
あんなのどう考えても痛いに決まってる。
強がっているのは丸分かりで。
「ううん……っ!全然?」と
無理に笑う片瀬さんの体は少し震えていた。
抱き寄せた時に伝わってきた
あの震えが今も俺の体に残っていた。
びっくりするぐらい…震えてた。
3対1だ。怖かったに決まってる。
片瀬さんを思うと涙が溢れて止まらなかった。
待合室でひたすら声を押し殺して泣いた。
「うっ…俺の…せいだ……っ」
この先一生…歩けない、とかだったら…
どうしよう…っ、、。…どうしよう。
ガラー……
「お大事にしてくださいね」
「はい、ありがとうございました」
しばらくすると、
診察室から松葉杖ついて、
片瀬さんが出てきた。
急いで涙を拭って、駆け寄る。
松葉杖を憧れだった、
と言って笑う片瀬さんを前に、
さっき拭ったばかりの涙が
もう1度溢れてきた。
手で覆って必死に隠そうとするが、
ダメだった。
男が泣くとか、まじダサいよな…。
それに、今泣きたいのは俺じゃないはずなのに。
こうなる前に…、
ハッキリさせるべきだったんだ。
自分の気持ちをちゃんと伝えたくて…
俺は覚悟を決めた。だけど…
「片瀬さん。俺……っ、片瀬さんのこと……」
言おうとした、”好きだ”は
「ごめん…。今日はちょっと…疲れちゃった。帰る、ね」
さえぎられてしまって。
多分…
距離ができてしまった───────。
♡♡♡
結局。
片瀬さんがやるはずだった
借り物競争が俺がやることになった。
「乃愛ー…、大丈夫ー?痛くないー?」
「痛くない、痛くない!」
休み時間
安藤さんの心配する声が聞こえてくる。
あの怪我は、どう考えても俺のせいだ。
あれだけ。隣の席になれたのが
うれしかったのに、今は…少し、
いずらかった。
あれから、ほとんど会話もない。
俺と、片瀬さんの間には
見えない壁が出来たみたいだ。
なれない手つきでフラフラと松葉杖をつく片瀬さんに、
ただ申し訳なくなる。
キーンコーンカーンコーン…
次は理科。移動教室だ。
「乃愛ー、準備出来たら呼んでー」
基本的に片瀬さんと一緒に行動してくれる安藤さん。
移動教室の時は松葉杖の乃愛の荷物を
持ってくれているようだ。
「あっ、うんー!ありがとうーっ」
横目で理科の教科書を準備する片瀬さんを見る。
「よいしょ…」
机の横にかけたカバンに手を伸ばしている。水筒を飲みたいみたいだ。
取ろうか?の一言が喉まで来て止まる。
…言えねぇ。
どう接したらいいか、分かんねぇ…。
こんなに…近くにいるのに。
そんなふうにグタグタと考えている時だった。
「あっ、きゃぁ……」
片瀬さんがバランスを崩し、
倒れそうになった。
「……っ、」
とっさに手が伸びて、
片瀬さんを抱きしめてしまう。
「あっ……、ご、ご、ごめん!」
だけどすぐに片瀬さんが叫ぶ。
「……いや…大丈夫か?」
「……」
すぐに俺に寄せられる片瀬さんの重みがスっ、と離れていく。
「うん…、大丈夫。ごめんね…」
片瀬さんはなんも悪くないのに。何度も
ごめんね、を言って申し訳なさそうに俺を見る。
「これ…」
女の子のカバンに勝手に出すのはどうかと思ったけど、いても立ってもいられず…。
片瀬さんの水筒を差し出す。
「飲もうとしてただろ…」
「あ…うん…。ありがとう…」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
わたしたちの恋、NGですっ! ~魔力ゼロの魔法少女~
立花鏡河
児童書・童話
【第1回きずな児童書大賞】奨励賞を受賞しました!
応援して下さった方々に、心より感謝申し上げます!
「ひさしぶりだね、魔法少女アイカ」
再会は突然だった。
わたし、愛葉一千花は、何の取り柄もない、フツーの中学二年生。
なじめないバスケ部をやめようかと悩みながら、掛けもちで園芸部の活動もしている。
そんなわたしには、とある秘密があって……。
新入生のイケメン、乙黒咲也くん。
わたし、この子を知ってる。
ていうか、因縁の相手なんですけどっ!?
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
わたしはかつて、魔法少女だったんだ。
町をねらう魔物と戦う日々――。
魔物のリーダーで、宿敵だった男の子が、今やイケメンに成長していて……。
「意外とドジですね、愛葉センパイは」
「愛葉センパイは、おれの大切な人だ」
「生まれ変わったおれを見てほしい」
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
改心した彼が、わたしを溺愛して、心をまどわせてくる!
光と闇がまじりあうのはキケンです!
わたしたちの恋愛、NGだよね!?
◆◆◆第1回きずな児童書大賞エントリー作品です◆◆◆
表紙絵は「イラストAC」様からお借りしました。
がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ
三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』
――それは、ちょっと変わった不思議なお店。
おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。
ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。
お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。
そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。
彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎
いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
甘い香りがする君は誰より甘くて、少し苦い。
めぇ
児童書・童話
いつもクールで静かな天井柊羽(あまいしゅう)くんはキレイなお顔をしていて、みんな近付きたいって思ってるのに不愛想で誰とも喋ろうとしない。
でもそんな天井くんと初めて話した時、ふわふわと甘くておいしそうな香りがした。
これは大好きなキャラメルポップコーンの匂いだ。
でもどうして?
なんで天井くんからそんな香りがするの?
頬を赤くする天井くんから溢れる甘い香り…
クールで静かな天井くんは緊張すると甘くておいしそうな香りがする特異体質らしい!?
そんな天井くんが気になって、その甘い香りにドキドキしちゃう!
オタわん〜オタクがわんこ系イケメンの恋愛レッスンをすることになりました〜
石丸明
児童書・童話
豊富な恋愛知識をもち、友人からアネゴと呼ばれる主人公、宮瀬恭子(みやせきょうこ)。けれどその知識は大好きな少女漫画から仕入れたもので、自身の恋愛経験はゼロ。
中二で同じクラスになった、みんなのアイドル的存在である安達唯斗(あだちゆいと)から、好きな人と仲良くなるための「恋愛レッスン」をして欲しいと頼まれ、断りきれず引き受ける。
唯斗はコミュニケーション能力が高く、また気遣いもできるため、恭子に教えられることは特になかった。それでも練習として一緒に下校などするうちに、二人は仲を深めていった。
恭子は、あどけない唯斗のことを「弟みたい」だと感じ、惹かれていくが……。
初恋の王子様
中小路かほ
児童書・童話
あたし、朝倉ほのかの好きな人――。
それは、優しくて王子様のような
学校一の人気者、渡優馬くん。
優馬くんは、あたしの初恋の王子様。
そんなとき、あたしの前に現れたのは、
いつもとは雰囲気の違う
無愛想で強引な……優馬くん!?
その正体とは、
優馬くんとは正反対の性格の双子の弟、
燈馬くん。
あたしは優馬くんのことが好きなのに、
なぜか燈馬くんが邪魔をしてくる。
――あたしの小指に結ばれた赤い糸。
それをたどった先にいる運命の人は、
優馬くん?…それとも燈馬くん?
既存の『お前、俺に惚れてんだろ?』をジュニア向けに改稿しました。
ストーリーもコンパクトになり、内容もマイルドになっています。
第2回きずな児童書大賞にて、
奨励賞を受賞しました♡!!
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる