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距離
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【綾斗side】
診察室に入っていった
片瀬さんの背中を見つめて
俺は病院の待合室のソファに腰掛けた。
待っている間、気が気じゃなかった。
あんなのどう考えても痛いに決まってる。
強がっているのは丸分かりで。
「ううん……っ!全然?」と
無理に笑う片瀬さんの体は少し震えていた。
抱き寄せた時に伝わってきた
あの震えが今も俺の体に残っていた。
びっくりするぐらい…震えてた。
3対1だ。怖かったに決まってる。
片瀬さんを思うと涙が溢れて止まらなかった。
待合室でひたすら声を押し殺して泣いた。
「うっ…俺の…せいだ……っ」
この先一生…歩けない、とかだったら…
どうしよう…っ、、。…どうしよう。
ガラー……
「お大事にしてくださいね」
「はい、ありがとうございました」
しばらくすると、
診察室から松葉杖ついて、
片瀬さんが出てきた。
急いで涙を拭って、駆け寄る。
松葉杖を憧れだった、
と言って笑う片瀬さんを前に、
さっき拭ったばかりの涙が
もう1度溢れてきた。
手で覆って必死に隠そうとするが、
ダメだった。
男が泣くとか、まじダサいよな…。
それに、今泣きたいのは俺じゃないはずなのに。
こうなる前に…、
ハッキリさせるべきだったんだ。
自分の気持ちをちゃんと伝えたくて…
俺は覚悟を決めた。だけど…
「片瀬さん。俺……っ、片瀬さんのこと……」
言おうとした、”好きだ”は
「ごめん…。今日はちょっと…疲れちゃった。帰る、ね」
さえぎられてしまって。
多分…
距離ができてしまった───────。
♡♡♡
結局。
片瀬さんがやるはずだった
借り物競争が俺がやることになった。
「乃愛ー…、大丈夫ー?痛くないー?」
「痛くない、痛くない!」
休み時間
安藤さんの心配する声が聞こえてくる。
あの怪我は、どう考えても俺のせいだ。
あれだけ。隣の席になれたのが
うれしかったのに、今は…少し、
いずらかった。
あれから、ほとんど会話もない。
俺と、片瀬さんの間には
見えない壁が出来たみたいだ。
なれない手つきでフラフラと松葉杖をつく片瀬さんに、
ただ申し訳なくなる。
キーンコーンカーンコーン…
次は理科。移動教室だ。
「乃愛ー、準備出来たら呼んでー」
基本的に片瀬さんと一緒に行動してくれる安藤さん。
移動教室の時は松葉杖の乃愛の荷物を
持ってくれているようだ。
「あっ、うんー!ありがとうーっ」
横目で理科の教科書を準備する片瀬さんを見る。
「よいしょ…」
机の横にかけたカバンに手を伸ばしている。水筒を飲みたいみたいだ。
取ろうか?の一言が喉まで来て止まる。
…言えねぇ。
どう接したらいいか、分かんねぇ…。
こんなに…近くにいるのに。
そんなふうにグタグタと考えている時だった。
「あっ、きゃぁ……」
片瀬さんがバランスを崩し、
倒れそうになった。
「……っ、」
とっさに手が伸びて、
片瀬さんを抱きしめてしまう。
「あっ……、ご、ご、ごめん!」
だけどすぐに片瀬さんが叫ぶ。
「……いや…大丈夫か?」
「……」
すぐに俺に寄せられる片瀬さんの重みがスっ、と離れていく。
「うん…、大丈夫。ごめんね…」
片瀬さんはなんも悪くないのに。何度も
ごめんね、を言って申し訳なさそうに俺を見る。
「これ…」
女の子のカバンに勝手に出すのはどうかと思ったけど、いても立ってもいられず…。
片瀬さんの水筒を差し出す。
「飲もうとしてただろ…」
「あ…うん…。ありがとう…」
診察室に入っていった
片瀬さんの背中を見つめて
俺は病院の待合室のソファに腰掛けた。
待っている間、気が気じゃなかった。
あんなのどう考えても痛いに決まってる。
強がっているのは丸分かりで。
「ううん……っ!全然?」と
無理に笑う片瀬さんの体は少し震えていた。
抱き寄せた時に伝わってきた
あの震えが今も俺の体に残っていた。
びっくりするぐらい…震えてた。
3対1だ。怖かったに決まってる。
片瀬さんを思うと涙が溢れて止まらなかった。
待合室でひたすら声を押し殺して泣いた。
「うっ…俺の…せいだ……っ」
この先一生…歩けない、とかだったら…
どうしよう…っ、、。…どうしよう。
ガラー……
「お大事にしてくださいね」
「はい、ありがとうございました」
しばらくすると、
診察室から松葉杖ついて、
片瀬さんが出てきた。
急いで涙を拭って、駆け寄る。
松葉杖を憧れだった、
と言って笑う片瀬さんを前に、
さっき拭ったばかりの涙が
もう1度溢れてきた。
手で覆って必死に隠そうとするが、
ダメだった。
男が泣くとか、まじダサいよな…。
それに、今泣きたいのは俺じゃないはずなのに。
こうなる前に…、
ハッキリさせるべきだったんだ。
自分の気持ちをちゃんと伝えたくて…
俺は覚悟を決めた。だけど…
「片瀬さん。俺……っ、片瀬さんのこと……」
言おうとした、”好きだ”は
「ごめん…。今日はちょっと…疲れちゃった。帰る、ね」
さえぎられてしまって。
多分…
距離ができてしまった───────。
♡♡♡
結局。
片瀬さんがやるはずだった
借り物競争が俺がやることになった。
「乃愛ー…、大丈夫ー?痛くないー?」
「痛くない、痛くない!」
休み時間
安藤さんの心配する声が聞こえてくる。
あの怪我は、どう考えても俺のせいだ。
あれだけ。隣の席になれたのが
うれしかったのに、今は…少し、
いずらかった。
あれから、ほとんど会話もない。
俺と、片瀬さんの間には
見えない壁が出来たみたいだ。
なれない手つきでフラフラと松葉杖をつく片瀬さんに、
ただ申し訳なくなる。
キーンコーンカーンコーン…
次は理科。移動教室だ。
「乃愛ー、準備出来たら呼んでー」
基本的に片瀬さんと一緒に行動してくれる安藤さん。
移動教室の時は松葉杖の乃愛の荷物を
持ってくれているようだ。
「あっ、うんー!ありがとうーっ」
横目で理科の教科書を準備する片瀬さんを見る。
「よいしょ…」
机の横にかけたカバンに手を伸ばしている。水筒を飲みたいみたいだ。
取ろうか?の一言が喉まで来て止まる。
…言えねぇ。
どう接したらいいか、分かんねぇ…。
こんなに…近くにいるのに。
そんなふうにグタグタと考えている時だった。
「あっ、きゃぁ……」
片瀬さんがバランスを崩し、
倒れそうになった。
「……っ、」
とっさに手が伸びて、
片瀬さんを抱きしめてしまう。
「あっ……、ご、ご、ごめん!」
だけどすぐに片瀬さんが叫ぶ。
「……いや…大丈夫か?」
「……」
すぐに俺に寄せられる片瀬さんの重みがスっ、と離れていく。
「うん…、大丈夫。ごめんね…」
片瀬さんはなんも悪くないのに。何度も
ごめんね、を言って申し訳なさそうに俺を見る。
「これ…」
女の子のカバンに勝手に出すのはどうかと思ったけど、いても立ってもいられず…。
片瀬さんの水筒を差し出す。
「飲もうとしてただろ…」
「あ…うん…。ありがとう…」
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