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壁ドン
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【乃愛side】
ーードン……ッ
ーー茶ノ宮くん……っ
ーー…一茶って呼んで?俺のこと。
ーー………一茶、くん…
「きゃあああああああああああ!!!!」
【君キュン】5巻の、
茶ノ宮くんがリズムちゃんに……、、
壁ドンするシーン!!
ここやばくない!?
ーー…一茶って呼んで?俺のこと。
……って!もうーーーーっっ!!!
ちょっと、ちょっと、ちょっと!!!
こんなん惚れるしかなくない!?
リズムちゃんに名前で呼んで
欲しがってる茶ノ宮くん!
ほんっとにかわいいっ!!!!
もうやばい!やばい!
全ての描写でわたしを全力で
殺しにかかってるぅぅぅぅぅぅぅ……!!
キュン死確定!!
口の端が上がったまま下がんない!
これはもう下がんない!一生下がんない!
ニヤニヤ止まんないーーーーっ!!!!
ピコン……ッ
その時。隣に置いていたスマホが鳴った。
誰かからメッセージが届いたようだった。
「あっ、松村くんだ」
メッセージは松村くんからだった。
ちょうど今日学校で連絡先交換して
1時間前?くらい送ってたんだ。
【松村 綾斗】
俺も楽しみにしてる。
片瀬さんなら何着ても似合うよ。
「……」
わぁ…、なんか返信も優しい感じ…。
わたしはすぐにメッセージを返す。
「”うん!ありがとう♡”っと!」
文字を打って、
送信ボタンを押そうとしたわたしは
ハッとした。
「あ」
とんでもないことに気づいたのだ。
男の子とメッセージの
やりとりなんてまるでしたことがないわたし。
いつも女の子同士でしかやりとりしないから
「♡」に対して特になにも考えたことはなかったんだけど……
男の子に「♡」って…、やばい?かな……?
なんかわたしが松村くんのこと好きって、
感じに……なっちゃってない!?
わたしは速やかに、送ろうとしている
メッセージを修正した。
「”うん!ありがとう!”っと!」
よしっ、これなら無難だよね!
「送信、っと……」
「♡」から「!」に修正し、
無事メッセージを送信。
あれ……そういえばわたし、
1番最初なんて送ったんだっけ?
ちょうど1時間前、
わたしが松村くんに送ったメッセージ見返したわたしは血の気がサーッと引いた。
【片瀬 乃愛】
日曜日楽しみだね!どんな服着てこう♡
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
はっ、はっ、、ハートが……っっ!!!
ガッツリついてる!!!
嘘でしょ!!
「……」
一瞬、猛烈に焦ったけど……。
「まっ!なんも気にしてないか!」
きっと松村くんほどのモテモテの男の子は「♡」なんて日常茶飯事!
次から気をつけよう!ってな感じで
わたしはベッドにダイブ!
そして漫画を手に取り、
再び【ハピラブ】の世界へとタイブした。
♡♡♡
迎えた日曜日!
10時ぴったり。
待ち合わせ場所に行くともう松村くんはいた。
「あっ、松村く……」
手を振りながら松村くんのところに駆け寄ろうとしたわたしはピタっと立ち止まる。
「あっ、片瀬さん!」
変なところで立ち止まるわたしに
気づいた松村くんは
ニコッと笑ってこっちに手を振っている。
「うそ……」
わたしは石のように固まった。
だって……だって…………
あの格好……!!!!
嘘でしょ……!!!!!
あまりの衝撃と破壊力に
わたしは口元を手で抑えた。
いつも制服姿か、
体育の時の体操服姿しか見たことがなかったけど……
今日は日曜日……。
そりゃあ、私服だ。
もちろんわたしも私服。
もちろん……分かってましたよ!?
分かっていたけども!!!
あれはさすがに……………………………………
松村くんは、ダボッとした
白いフード付きのパーカーを着ていた。
スラッとして比較的体型が
細めの松村くんがそんな……っ、、
ダボッとしたやつ着たら……!!!
きゃああああああああああああ!!!!
かわいすぎて死ぬーーーーー!!!!!!
なんて、かわいいの……!!!!!
ダボッとしてるから服に包まれてる感!?
あって!あーー!!
もうとにかくかわいいんですけど!?
「はっ!」
しかも……しかも!!!!!
あーーーーーーーーーーーー!!!!!
ま、ま、ま、ま、ま、松村くん!!
今日!!!髪型……!!!
せ、せ、せ、せ、せ……っ、、、
センター分けしてる…………!!!!
いつも少し前髪が目にかかってるんだけど
今日はなんかバチッと決まってる……!
やばい……。どうしよう。
なにあれ、なにあれ、なにあれ!!!
どうしよう……っ!!!わたしこれから
あの人と今日1日行動を共にするの……!?
え!?大丈夫!?あんな
イケメンの隣にわたしが並ぶの!?!?
嘘でしょ!?
もっとオシャレしてくべきだった!?
わたし!
わたしはゆっくり視線を落とし、
今日の自分のコーディネートを今1度
チェックした。
花柄のワンピースに、
少しヒールの入ったサンダル。
ワンピースの袖口は、
モコってなってて、ブワってなってて、
かわいい!と思って
去年のこの時期に買ったやつ!
あまりしたことのないメイクも
少しだけして。
お花のシャラシャラ揺れる
イヤリングもつけた。
一応。松村くんが、
女の子達にかなり人気でかっこいい、
ということを肝に銘じて、
そんな人の隣に並ぶ、
ということを、肝に銘じて、
ふさわしく!それなりに!大丈夫なように!
コーディネートしてきたつもりだ。
だけど……、だけどさ!?
あんなにかっこいいだなんて……、
聞いてないよ……!!!!
想定外すぎる…………。
てかもうこれさ……!?
かっこいいとか
そういうレベルじゃないよね!?
あぁ!もう……佇まいが…やばい。
あーーーーーーーーーー!!!!!
わたしのばかーー!!!
もっと美容院とか行って!
専属のコーディネーターでもつけて!
もっと!本気で!
オシャレしてくべきだったよーー!!!!
「片瀬さん?どうしたの?」
「へっ、?あっ、ううん!」
そうこうしていたら松村くんがいつの間にやらわたしの目の前に……!
不思議そうに顔をのぞきこんでくる。
うわぁ………
なんてこった……。
間近で見たらさらにかっこいいよ……。
多分この世にあるすべての
かっこいい、と、かわいい、が
ここにいる松村くんに、
すべて!もうすべて!
兼ね備わってるーーーー!!!!!
「見て、あの人めっちゃかっこよくない!?」
「モデルさんかな?」…
あ……。
ふと、周りからそんな声が聞こえてきた。
近くにいる人みんな……
松村くんのこと、見てる……。
ほらー!!そりゃそうだよ!
すれ違う人もみーんな、
松村くんのこと、チラチラ見てるー!!
「じゃあ、行こっか」
「あっ、うん!」
目のやり場に困りながら
歩き出した松村くんの後を追うわたし。
「あ……。え、と…」
なんだろう……。
松村くんが何かを言いたそうに立ち止まった。
「今日の服……、その……」
「えっ……?」
「めちゃくちゃかわいい……ね」
きっと、わたしは単純だ。
さっきまでは自分のコーディネートに
落胆していたわたし。だけど不思議……。
「えっ!!ほんと!?」
その一言だけで胸の中が
どうしようもないほどの喜びに満ち溢れた。
そしてつい、ルンルンとした足取りで
松村くんの隣に並ぶ。
「うん!ほんと」
クシャッと笑ってそう言ってくれた
松村くんと目が合う。
ーードクン……ッ
あ……れ…………。
並んで気づいた。
なんか………
いつもより松村くんと顔の距離が近い気が……
はっ……!
ヒール!
わたしがヒール履いてるからだ!?
なんだか距離感が……いつもと違って……
ドキドキするのは……
わたしの……気のせいだろうか…………。
♡♡♡
待ち合わせ場所から片道10分程の距離にある【ハピラブ】展に無事到着したわたしたちはグッズ売り場に来ていた。
ズラー、と色々なグッズが並んでいる。
その中でも
ハートのキーホルダーが目に止まったわたしは立ち止まった。
「あ、これ……っ」
「「8巻で茶ノ宮くんが
リズムちゃんにプレゼントしたやつ!」」
見事にわたしと松村くんの声がそろって、
笑ってしまった。
「あそこ名シーンだよね!記憶喪失になってリズムちゃんのこと忘れちゃった茶ノ宮くんが、!このキーホルダー見て!思い出すとこ!わたし、ここめっちゃ好きで……!」
「なっ、やばいよな。このキーホルダーに涙落とすとことか、俺泣いてさぁー……」
はぁー……。
ほんと、来てよかったぁ……!
ここ天国!?最高すぎるー……!
「あっ、ねぇねぇ!」
「ん?」
ついテンションが上がってしまったわたしはハートのキーホルダーを2つ持って、松村くんに見せた。
「これっ!2人でおそろいにしないっ?
今日の記念に!」
「……っ、」
だけど言った直後、ほんの数秒前までは
楽しそうにしていた松村くんがピクリとも動かなくなってしまった。
あれ……?嫌…だったかな……。
あっ!……っていうか!
いくら作品中の重要アイテムだからといって、
ハートの形したキーホルダーを男女でおそろいはまずかった!?……てか、
そんなこと世間一般的には
カップルでやることか!?
「あっ……ごめん…っ、変なこと…っ」
慌てて「気にしないで!」と言って
キーホルダーを棚に戻そうとした時。
「する……っ」
なぜか涙を浮かべてそう言った松村くん。
そして棚へ向こうとした
わたしの手に松村くんの手が伸びる。
優しい手つきで戻そうとした
キーホルダーを2つ取って、
「買ってくるな?」と言った。
なんか……キラキラな笑顔……。
……てか…、かっ、かわいい……!!
なんか今の松村くん!子供みたい!!
「えっ…あっ、払うよ!」
そのままレジに行ってしまいそうな
勢いで駆け出した松村くん。
わたしは急いで財布を出した。
「いくらっ?」
「いいよ、このくらい。俺が払うから」
「えっ……でも、わたしから
言い出したことだし……!あっ、550円ね!」
ちょうど値札が見えたので
財布からお金を取り出そうとするわたし。
チャカチャカと小銭同士が当たる音が響く中…
「今日は一緒に来てくれてありがとう、って
お礼も込めて、だから。しまって?」
そう言った松村くんは
わたしの財布を優しく閉じた。
「……そんなの…気にしなくていいのに……っ、でも…、ありがとう。
じゃあお言葉に甘えて……」
口ではそう言ったわたし……。
だけど心の中は……
え!?えぇえええええええええええ!!!
まって、まって!!見た!?見た今の!!!
”しまって?”って……!
”しまって?”って言って……、、
女の子の財布を……!!
閉じたーーーーーーーーーー!!!!!
なんて紳士的なの……!?!?
び、び、び、び、びっくりして
心臓はち切れるかと思ったんですけど!!!
しかも!!!
”しまって?” の言い方!!!!
どちゃくそ優しい声のトーンだったんですけど!?
どういうこと!?
これなんかのドッキリ!?
やばくない!?
顔だけじゃなくて、性格もあぁなの!?
はぁー……。そりゃモテるよー。
モテない理由がどこにもないんよ……。
「はいっ、どうぞ」
数分後、会計を済ませてきた松村くんがハートのキーホルダーを差し出してくれた。
「あっ、ありがとう……っ」
♡♡♡
次に向かったのは
【ハピラブ】展のカフェ。
「えー……。どれにしよう…迷うー…」
わたしはメニュー表を険しい顔して眺めていた。作品中に出てくるメニューが再現されてるからできることなら
ぜーんぶ食べたいくらい!!
その中から1つを選ぶなんて至難の業だ…。
「ねぇねぇ!見て!このオムライス!7巻でリズムちゃんが風邪ひいた茶ノ宮くんに作ってあげたやつだー!!あそこわたし、笑っちゃった!普通、病人にはお粥なのに、オムライス!?って!」
わたしはメニュー表のあちらこちらを指さす。
「あ!あとこれ!この焼きそば!茶ノ宮くんの誕生日にリズムちゃんが作ったやつだよね!料理苦手なのに、好きな人のために頑張るあの姿!ほんっと尊い!!好きすぎる!あ~!どうしよう!ちょー迷う~っ!」
「あははっ……、じゃあ、片瀬さん、
それ頼んだら?俺こっち頼むから」
松村くんはそう言ってわたしが迷ってる
”オムライス”と”焼きそば”を指さした。
「え?松村くんはどれでもいいの……?」
「俺はなんでも。ほら、この2つにしときゃ、片瀬さんが迷ってるやつ
どっちも食べれるだろ?」
あわわわわ……っ!なにそれ……っ!!
「優し……」
「……」
あ、やばい!
声に出すつもりじゃなかったのについ!
「あははっ……、”片瀬さんにだけ”だよ」
「……」
え……?
わたし……に、だけ?
「それって……どうゆ……」
「あ!!ご、ご、ご、ごめん!今の忘れて!ほんとに!」
「えっ、あ……うん」
聞き間違い……?
「じゃあ、これと、これください」
「かしこまりました!」……
それから昼食は結局、わたしが迷っていた
オムライスと焼きそばを頼んだ。
楽しみだね!なんてたわいもないことを
話していたその時。
「ねぇねぇ、あの2人。
茶ノ宮くんとリズムちゃんに
そっくりじゃない?」
「うわ!ほんとだ!」……
近くに座っていたかわいらしい女の人2人組がわたしたちの方をチラチラと見てコソコソとしだした。
なんだろう……。
気になっていると2人は立ち上がって
わたしたちの座る席に来た。
「……あの」
そしておそるおそる話しかけられる。
松村くんは”ツン”としている感じだ。
あ……そういえば。
松村くんの最初の印象って……
これだったなぁ……
”ツン”って感じ。
おまけに女の子苦手なのかな、
って思ってたんだっけ?
今では全然印象変わったなぁ…。
「はい?」
松村くんの代わりにわたしが答える。
「写真撮ってもいいですか!?」
写真……。
「え!?しゃっ、写真!?」
一瞬頭が真っ白になるけど
女の人がチラッと松村くんに
視線をやったので、わたしは思った。
「あぁ!この人ですか?」
この人も松村くんが
茶ノ宮くんに似てるって思ったのかも……!
そうだよね!ここ【ハピラブ】展のカフェだし、ファンがたくさんいるとこだもん!
似ていると騒がれても仕方ないくらいに
松村くん似てるしね!
「いえ!お2人です!」
「……」
「2人……?」
誰と、誰、だろう。
そう思っていると、
女の人は
松村くんとわたしに視線をやった。
「え、わたしも!?」
思わず椅子から立ち上がる勢いで声を上げた。
「はい!いいでしょうか!?」
「え?いっ、いいですけど……
え?なんでわたしも?」
松村くんは分かるけど
わたしが写真を撮られる意味は
全く分からない。ポカン、とした
わたしに女の人は笑顔で言った。
「リズムちゃんにそっくりじゃないですか!」
「え!?」
り、り、り、リズムちゃんに!?
わ、わ、わ、わたしが!?
「え?似てます……よね?彼氏さん」
「「か、か、か、彼氏さん!?」」
そこで松村くんと
わたしの声がぴったりとそろった。
松村くんもわたしも硬直状態だ。
「似……てる、めっちゃ似てるよな」
ひと足早く硬直状態から
抜け出した松村くんが答えた。
♡♡♡
え。わたしって……
リズムちゃんに似てるのかなぁ…。
だとしたらめっちゃ嬉しいんだけど!
自覚は今も全くないけど、
とにかく嬉しい。あと…
((え?似てます……よね?彼氏さん))
彼氏…さん。
はたから見たら、釣り合ってないかも、
とか思ってたから…
そう勘違いされただけでも
すごく嬉しかった。
あの女の人2人組に写真を撮られた後。
とにかくわたしは嬉しくてニヤニヤが
抑えられそうになかった。
あ、そういえばわたしはずっと
松村くんを茶ノ宮くんに似ている、って
思っていたけれど、本人は
そんな自覚全く持っていなかったらしく、
「え!?俺が!?茶ノ宮に似てる!?」
と、驚いていた。
あ……そういえば。
あのお2人さんはあぁ言ってくれたけど
”似……てる、めっちゃ似てるよな”
松村くんのあれは……
ほんとにそう思ってたのだろうか……?
話の流れ的に、合わせて……
似てる、って言ってくれたのかな…。
そんなことを目の前に座る松村くんをチラリと見て考えていると……
「片瀬さん」と名前を呼ばれた。
「うん?」
「片瀬さん、ずっと
俺のこと……、茶ノ宮に似てる、って
思ってくれてた……の?」
上目遣いでそんな質問をしてきた松村くん。
うっ、上目遣い……!やっば!!破壊力!
…じゃなくて!
「あ…うん、……めっちゃ思ってた」
言った後。
なんだか照れくさい気持ちになって
テーブルの上のグラスに
視線を落とした。
グラスの中で
少し歪んで映る自分と目が合う。
”照れくさい”
そう思ってしまうのはきっと……
似てる、似てる、と心の中で
ひたすらはしゃいでいた自分を…
見透かされた気がするから、かな。
グラスに映る自分の姿を見て。
心まで映されてしまった気分になる。
「やべぇ…」
「え?」
「すげぇ…うれしい」
松村くんの目がキュッ、と細められた。
ドクン…ッ
狭められた目の縁には溢れんばかりの
涙がうるうると光っていて、とても…
優しい顔だった。
ドクン…ッ、ドクン…ッ……
不意に見せた松村くんのその表情に
わたしは吸い込まれていく。
「…っ、」
はっ…
このまま見ていたら、なんか…
ダメな気がして…わたしは静かに目をそらす。
だけど……。
そらしてもまだ、瞼の奥に松村くんの
優しい顔が焼き付いてて、困ってしまう。
「まっ、松村くんこそ!ほんとに
わたしのことっ、リズムちゃんに似てると
思ってたの?」
そして今度はわたしが質問した。
「思ってたよ。はじめて会った時から」
「はじめて?あっ、入学式の時?」
本当に思ってたんだ…
しかも、そんな前から……
そういえば、
わたしが気づいたのは入学式から
1週間くらい経った時だったなぁ…。
「あっ、ううん、受験の時……
なんだけど、覚えてない……よね?」
「受験……?」
え……?松村くんと……?受験の時?
会ったっけ……?
「もう1回、ちゃんとお礼したいって思ってたんだ。あの時……、消しゴム、貸してくれてありがとう」
消しゴム……
うーん…。
「あっ!えっ!?もしかして……っ、隣の席に座ってた人!?あれ松村くんだったの!?」
「そう、俺だよ」
「そうだったんだ!」
めっちゃ咳してた人だ!
マスクの人、って印象しかなくて
ぜんっぜん気づかなかった!
……って!マスクの下!
こんなイケメンだったんかい!!!
それにしても松村くんと
偶然隣同士だったなんて、すごい!
だってすごい確率だよね!
「おまたせしました~
オムライスになります!」
やがて。
テーブルにオムライスが運ばれてきた。
「わぁー!かわいい!ねぇ、見て!松村くん!
リズムちゃんがケチャップで書いた
”茶ノ宮くん♡” も再現されてるーっ!
えぇー。食べるのもったいなさすぎる!
「わ~…すげぇ…。そのまんまだね」
「ねっ!やばい!」
焼きそばはまだ到着していない。
オムライスだけが
わたしと松村くんの間に置かれている今…。
わたしは…
とんでもないことに気づいてしまった。
はっ…!!!
このオムライス……!
どうして気づかなかったんだろう!
7巻!茶ノ宮くんの看病回!!
あそこは……!
あそこの茶ノ宮くんは
冷えピタをしているため!!
まさに……!!今の松村くんみたいな!
センター分け!!しかも、
寝込む茶ノ宮くんの格好と、
今の松村くんの格好…
めっちゃそっくり……!
もはや。もうそれ!
もう、リアル茶ノ宮くん!
そんな松村くんにこの
オムライスを食べさせたら……っ!!
きゃあああああああああ!!!!
漫画の世界に飛び込んだみたいー!!!
ドキ……ドキ……
「片瀬さん?どうしたの?」
「へっ!?ううん!?食べて食べて!」
「片瀬さん、先、食べていいよ?」
そう言ってスプーンをカゴから取って
お皿に置いてくれた松村くん。
「いや!松村くんが先食べて!」
なんとしても!
今のビジュアルの松村くんが
このオムライスを食べる姿を
目に焼き付けたい!!
「えっ?あ……、じゃあ食べるね?」
ゴクリ…。
密かに息を飲んで。
まるでかるたの札が読まれるのを
待っている人、みたいにわたしは構えた。
「……」
やがて。
松村くんがスプーンを持って。
オムライスをすくって。そしてそれを……
食べた。
きゃあああああああああああああああ!!
食べてる!食べてるー!!!
「おまたせしました~
焼きそばになります!」
少し遅れて焼きそばも到着し、
2人で分け合いっこして食べた。
どっちも美味しくて、
ほっぺた落ちそう~、
という言葉を何度も発した。
発する度に松村くんが優しい顔をして
わたしを見つめるもんだから、
ほっぺたじゃなくて
わたしの視線は落ちるばかりだった。
男の子と、
休みの日にどっか出かけるなんて
はじめてで。
ちょっと不安だったけど、
すごく楽しい…。
胸が膨らんでいく気持ちが
自然とわたしを笑顔にさせてくれた。
♡♡♡
「はぁーっ!お腹いっぱいー!」
「だな。調理実習の時にも思ったけど
片瀬さん食べ物、
ほんっと美味しそうに食べるよね」
「え?ほんとー?」
「ほんとだよ。見てて、楽しい」
「もう!松村くん、褒めすぎだって…!」
カフェからの帰り道。
そんなたわいもない会話をしていたわたしは
またまたとんでもないことに
気づいてしまった。
はっ…!
ちょっとまって!なんかこれ…
カップルみたいな会話になっちゃってない!?フッ、と我に返り、自分達を客観的に見ると、ところどころでそういうふうに
思わされる場面があった。
思う度に、
ドクン…、ドクン…、と胸が高鳴り、
カーッ…と、体が熱くなっていく。
そんな高鳴りも。
体温の上昇も。
なんでそうなるのか
まるで分からないけど。
なってしまう。何度も何度も…
なってしまっていた。
♡♡♡
休みの日って
なんでこんなに早いんだろう。
いろいろ回ってたらもう
17時近くになっていた。
「大丈夫だよ」って言ってたんだけど
わたしの家まで送ってってくれるらしい。
近所の人通りの少ない商店街を2人で歩く。
「あっ、今日は誘ってくれてほんっとうにありがとうっ!このキーホルダー!大切にする!宝物!」
松村くんが買ってくれた
ハート型のキーホルダーを
夕暮れの空にかざして揺らした。
陽の光に当たるとハートが透けて、
より一層綺麗になった。
「こちらこそ、来てくれてありがとう。
おっ、俺も…、宝物…に、するな」
「うんっ!あっ、そうだ!」
「ん?」
「わたしね、男の子とどっか出かけるの、松村くんがはじめてなんだ…。
だから、その…どんな格好していけば
いいのか分かんなくて……っ、
だからねっ、なんか……、
いろいろ気付いてくれるのすっごく
うれしかった!」
今日を思い返すと、
待ち合わせ場所で、
服をかわいい、と褒めてくれて。
他にもいろいろ…、
松村くんの隣に並んでもおかしくないように、と頑張ったところを、
たくさん気づいてくれて褒めてくれた。
それがすっごくうれしくて、心に残って。
暖かい気持ちになって。
これだけはどうしても
お礼を言いたかったんだ。
「きっと松村くんの彼女になる人は
幸せなんだろうなぁ…」
ふいにそんな言葉が口から
飛び出てしまっていた。
「…っ、」
あれ…?どうしたんだろう。
「松村くん…?」
松村くんの足がピタリ、と止まってしまった。表情がどことなく暗い気がする。
「どうしたの?だいじょ…っ」
心配になって、
松村くんのすぐそばまで
駆け寄った時だった。
ドン……………ッ!!
一瞬のことだった。
気がついたら
わたしの背中は壁にペタリ、と
引っついていた。
お互いの鼓動が聞こえちゃいそうなくらい…
ちょっと…背を伸ばしたら……。
ちょっと…動いたら……。
唇と唇が当たっちゃうかも。
くらいの近さに、松村くんの顔がある。
ドクン…、ドクン…
そう…。
わたしが、松村くんに、
壁ドンをされている。
ということに気づくのには
そう時間はかからなかった。
商店街のシャッターはほぼ閉まっていて、
誰も…ここを通る人はいなかった。
2人…だけ。
「まっ、松村くん…っ、?」
いきなりのことで頭の中が真っ白になる。
「あ……、って……、……んで」
耳元で、なにかをささやかれる。
「え……?」
「綾斗、って…呼んで……?」
「……っ、」
はっ…!
こ、こ、こ、こ、これ……もしかして……
ーードン……ッ
ーー茶ノ宮くん……っ
ーー…一茶って呼んで?俺のこと。
ーー………一茶、くん…
あのシーン?
ドクン…、ドクン……
……漫画の真似……っ、?してるのかな……
こんな…突然に??とは思ったけど
セリフがそのまんまだ。
「ひゃっ……」
壁ドンしてない方の松村くんの手が……
わたしのほっぺに触れた。
わたしの手よりも大きくて。
少しゴツゴツした包容力のある手。
触れられた場所がポゥッ……と熱を帯び、
イヤリングがシャラシャラと静かに揺れ動く……。
「松村……くん…っ」
どうしたんだろう。いきなり…。
体と体が今までにないくらい
密着する今この瞬間が…
とても、長く、永遠に感じられた。
「呼んで……」
なんか……っ、松村くん……
いつもと……
違う───────。
ゆらゆら揺れる松村くんの瞳。
その瞳の奥で松村くんが何を考えているか
全然分かんなくて
視線が下がっていくばかり…。
と、その時だった。
耳に触れる松村くんの手がスっと、ずれて、
わたしの…顎に触れた。
そしてゆっくり、
下がった視線を持ち上げるように
わたしの顔は強制的に
上げられてしまった。
「ん…っ」
また目が合う…。
これは…いわゆる顎クイ…。
嘘でしょ…。
壁ドン&顎クイ…!?
身動き出来ない…。
今にも地面にヘナヘナと倒れ込んでしまいそうなくらい顔が熱い…。
「……呼んで」
「……っ」
松村くんのパーカーに手が伸びる。
ギュ……ッ
手に力を込めて、パーカーの裾をつかむ。
ドクン…、ドクン……
「…あやと……くん…っ」
声が震える。
はじめて声に出して
呼んだ松村くんの名前に…
不思議な感覚になる。
ドクン…、ドクン……
うるさい。
心臓が……とてもうるさくて。
気を緩めたら今にも
口から飛び出しちゃいそうだよ…。
「……」
「乃愛…」
「…っ、」
わたしは目を見開く。
なにそれ…
なに……その顔………………。
そんな…
今にも泣き出しちゃいそうな…
悲しくて…切なくて…
見てると…胸の奥がギューって
締め付けられちゃいそうになる…
そんな……顔。
……ずるい。
なのに…次の瞬間。
”キュン”───────…
それが、どうしてか、
わたしの”キュン” を……
静かにくすぐった。まるで…
猫じゃらしでなでられた時のような…
そんな…
優しくて…淡い……
小さな”キュン” を……
感じた。
……ずるい。
そんな顔するなんて……
こんな…気持ちになるなんて…
聞いてないよ…。
「あっ、ごめ……っ、俺……っ」
魔法が解けたみたいだ。
やがて松村くんがいつもの松村くんに戻る。
「…うっ、ううん!!ぜっ、全然!」
焦ったように壁から離れていく
松村くんの手……。
それを、どうしてわたしは…
こんなにも愛おしく、
名残惜しく…
眺めているのだろう。 ️
さっきの…”キュン”は………
一体…
なんだったんだろう───────。
ーードン……ッ
ーー茶ノ宮くん……っ
ーー…一茶って呼んで?俺のこと。
ーー………一茶、くん…
「きゃあああああああああああ!!!!」
【君キュン】5巻の、
茶ノ宮くんがリズムちゃんに……、、
壁ドンするシーン!!
ここやばくない!?
ーー…一茶って呼んで?俺のこと。
……って!もうーーーーっっ!!!
ちょっと、ちょっと、ちょっと!!!
こんなん惚れるしかなくない!?
リズムちゃんに名前で呼んで
欲しがってる茶ノ宮くん!
ほんっとにかわいいっ!!!!
もうやばい!やばい!
全ての描写でわたしを全力で
殺しにかかってるぅぅぅぅぅぅぅ……!!
キュン死確定!!
口の端が上がったまま下がんない!
これはもう下がんない!一生下がんない!
ニヤニヤ止まんないーーーーっ!!!!
ピコン……ッ
その時。隣に置いていたスマホが鳴った。
誰かからメッセージが届いたようだった。
「あっ、松村くんだ」
メッセージは松村くんからだった。
ちょうど今日学校で連絡先交換して
1時間前?くらい送ってたんだ。
【松村 綾斗】
俺も楽しみにしてる。
片瀬さんなら何着ても似合うよ。
「……」
わぁ…、なんか返信も優しい感じ…。
わたしはすぐにメッセージを返す。
「”うん!ありがとう♡”っと!」
文字を打って、
送信ボタンを押そうとしたわたしは
ハッとした。
「あ」
とんでもないことに気づいたのだ。
男の子とメッセージの
やりとりなんてまるでしたことがないわたし。
いつも女の子同士でしかやりとりしないから
「♡」に対して特になにも考えたことはなかったんだけど……
男の子に「♡」って…、やばい?かな……?
なんかわたしが松村くんのこと好きって、
感じに……なっちゃってない!?
わたしは速やかに、送ろうとしている
メッセージを修正した。
「”うん!ありがとう!”っと!」
よしっ、これなら無難だよね!
「送信、っと……」
「♡」から「!」に修正し、
無事メッセージを送信。
あれ……そういえばわたし、
1番最初なんて送ったんだっけ?
ちょうど1時間前、
わたしが松村くんに送ったメッセージ見返したわたしは血の気がサーッと引いた。
【片瀬 乃愛】
日曜日楽しみだね!どんな服着てこう♡
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
はっ、はっ、、ハートが……っっ!!!
ガッツリついてる!!!
嘘でしょ!!
「……」
一瞬、猛烈に焦ったけど……。
「まっ!なんも気にしてないか!」
きっと松村くんほどのモテモテの男の子は「♡」なんて日常茶飯事!
次から気をつけよう!ってな感じで
わたしはベッドにダイブ!
そして漫画を手に取り、
再び【ハピラブ】の世界へとタイブした。
♡♡♡
迎えた日曜日!
10時ぴったり。
待ち合わせ場所に行くともう松村くんはいた。
「あっ、松村く……」
手を振りながら松村くんのところに駆け寄ろうとしたわたしはピタっと立ち止まる。
「あっ、片瀬さん!」
変なところで立ち止まるわたしに
気づいた松村くんは
ニコッと笑ってこっちに手を振っている。
「うそ……」
わたしは石のように固まった。
だって……だって…………
あの格好……!!!!
嘘でしょ……!!!!!
あまりの衝撃と破壊力に
わたしは口元を手で抑えた。
いつも制服姿か、
体育の時の体操服姿しか見たことがなかったけど……
今日は日曜日……。
そりゃあ、私服だ。
もちろんわたしも私服。
もちろん……分かってましたよ!?
分かっていたけども!!!
あれはさすがに……………………………………
松村くんは、ダボッとした
白いフード付きのパーカーを着ていた。
スラッとして比較的体型が
細めの松村くんがそんな……っ、、
ダボッとしたやつ着たら……!!!
きゃああああああああああああ!!!!
かわいすぎて死ぬーーーーー!!!!!!
なんて、かわいいの……!!!!!
ダボッとしてるから服に包まれてる感!?
あって!あーー!!
もうとにかくかわいいんですけど!?
「はっ!」
しかも……しかも!!!!!
あーーーーーーーーーーーー!!!!!
ま、ま、ま、ま、ま、松村くん!!
今日!!!髪型……!!!
せ、せ、せ、せ、せ……っ、、、
センター分けしてる…………!!!!
いつも少し前髪が目にかかってるんだけど
今日はなんかバチッと決まってる……!
やばい……。どうしよう。
なにあれ、なにあれ、なにあれ!!!
どうしよう……っ!!!わたしこれから
あの人と今日1日行動を共にするの……!?
え!?大丈夫!?あんな
イケメンの隣にわたしが並ぶの!?!?
嘘でしょ!?
もっとオシャレしてくべきだった!?
わたし!
わたしはゆっくり視線を落とし、
今日の自分のコーディネートを今1度
チェックした。
花柄のワンピースに、
少しヒールの入ったサンダル。
ワンピースの袖口は、
モコってなってて、ブワってなってて、
かわいい!と思って
去年のこの時期に買ったやつ!
あまりしたことのないメイクも
少しだけして。
お花のシャラシャラ揺れる
イヤリングもつけた。
一応。松村くんが、
女の子達にかなり人気でかっこいい、
ということを肝に銘じて、
そんな人の隣に並ぶ、
ということを、肝に銘じて、
ふさわしく!それなりに!大丈夫なように!
コーディネートしてきたつもりだ。
だけど……、だけどさ!?
あんなにかっこいいだなんて……、
聞いてないよ……!!!!
想定外すぎる…………。
てかもうこれさ……!?
かっこいいとか
そういうレベルじゃないよね!?
あぁ!もう……佇まいが…やばい。
あーーーーーーーーーー!!!!!
わたしのばかーー!!!
もっと美容院とか行って!
専属のコーディネーターでもつけて!
もっと!本気で!
オシャレしてくべきだったよーー!!!!
「片瀬さん?どうしたの?」
「へっ、?あっ、ううん!」
そうこうしていたら松村くんがいつの間にやらわたしの目の前に……!
不思議そうに顔をのぞきこんでくる。
うわぁ………
なんてこった……。
間近で見たらさらにかっこいいよ……。
多分この世にあるすべての
かっこいい、と、かわいい、が
ここにいる松村くんに、
すべて!もうすべて!
兼ね備わってるーーーー!!!!!
「見て、あの人めっちゃかっこよくない!?」
「モデルさんかな?」…
あ……。
ふと、周りからそんな声が聞こえてきた。
近くにいる人みんな……
松村くんのこと、見てる……。
ほらー!!そりゃそうだよ!
すれ違う人もみーんな、
松村くんのこと、チラチラ見てるー!!
「じゃあ、行こっか」
「あっ、うん!」
目のやり場に困りながら
歩き出した松村くんの後を追うわたし。
「あ……。え、と…」
なんだろう……。
松村くんが何かを言いたそうに立ち止まった。
「今日の服……、その……」
「えっ……?」
「めちゃくちゃかわいい……ね」
きっと、わたしは単純だ。
さっきまでは自分のコーディネートに
落胆していたわたし。だけど不思議……。
「えっ!!ほんと!?」
その一言だけで胸の中が
どうしようもないほどの喜びに満ち溢れた。
そしてつい、ルンルンとした足取りで
松村くんの隣に並ぶ。
「うん!ほんと」
クシャッと笑ってそう言ってくれた
松村くんと目が合う。
ーードクン……ッ
あ……れ…………。
並んで気づいた。
なんか………
いつもより松村くんと顔の距離が近い気が……
はっ……!
ヒール!
わたしがヒール履いてるからだ!?
なんだか距離感が……いつもと違って……
ドキドキするのは……
わたしの……気のせいだろうか…………。
♡♡♡
待ち合わせ場所から片道10分程の距離にある【ハピラブ】展に無事到着したわたしたちはグッズ売り場に来ていた。
ズラー、と色々なグッズが並んでいる。
その中でも
ハートのキーホルダーが目に止まったわたしは立ち止まった。
「あ、これ……っ」
「「8巻で茶ノ宮くんが
リズムちゃんにプレゼントしたやつ!」」
見事にわたしと松村くんの声がそろって、
笑ってしまった。
「あそこ名シーンだよね!記憶喪失になってリズムちゃんのこと忘れちゃった茶ノ宮くんが、!このキーホルダー見て!思い出すとこ!わたし、ここめっちゃ好きで……!」
「なっ、やばいよな。このキーホルダーに涙落とすとことか、俺泣いてさぁー……」
はぁー……。
ほんと、来てよかったぁ……!
ここ天国!?最高すぎるー……!
「あっ、ねぇねぇ!」
「ん?」
ついテンションが上がってしまったわたしはハートのキーホルダーを2つ持って、松村くんに見せた。
「これっ!2人でおそろいにしないっ?
今日の記念に!」
「……っ、」
だけど言った直後、ほんの数秒前までは
楽しそうにしていた松村くんがピクリとも動かなくなってしまった。
あれ……?嫌…だったかな……。
あっ!……っていうか!
いくら作品中の重要アイテムだからといって、
ハートの形したキーホルダーを男女でおそろいはまずかった!?……てか、
そんなこと世間一般的には
カップルでやることか!?
「あっ……ごめん…っ、変なこと…っ」
慌てて「気にしないで!」と言って
キーホルダーを棚に戻そうとした時。
「する……っ」
なぜか涙を浮かべてそう言った松村くん。
そして棚へ向こうとした
わたしの手に松村くんの手が伸びる。
優しい手つきで戻そうとした
キーホルダーを2つ取って、
「買ってくるな?」と言った。
なんか……キラキラな笑顔……。
……てか…、かっ、かわいい……!!
なんか今の松村くん!子供みたい!!
「えっ…あっ、払うよ!」
そのままレジに行ってしまいそうな
勢いで駆け出した松村くん。
わたしは急いで財布を出した。
「いくらっ?」
「いいよ、このくらい。俺が払うから」
「えっ……でも、わたしから
言い出したことだし……!あっ、550円ね!」
ちょうど値札が見えたので
財布からお金を取り出そうとするわたし。
チャカチャカと小銭同士が当たる音が響く中…
「今日は一緒に来てくれてありがとう、って
お礼も込めて、だから。しまって?」
そう言った松村くんは
わたしの財布を優しく閉じた。
「……そんなの…気にしなくていいのに……っ、でも…、ありがとう。
じゃあお言葉に甘えて……」
口ではそう言ったわたし……。
だけど心の中は……
え!?えぇえええええええええええ!!!
まって、まって!!見た!?見た今の!!!
”しまって?”って……!
”しまって?”って言って……、、
女の子の財布を……!!
閉じたーーーーーーーーーー!!!!!
なんて紳士的なの……!?!?
び、び、び、び、びっくりして
心臓はち切れるかと思ったんですけど!!!
しかも!!!
”しまって?” の言い方!!!!
どちゃくそ優しい声のトーンだったんですけど!?
どういうこと!?
これなんかのドッキリ!?
やばくない!?
顔だけじゃなくて、性格もあぁなの!?
はぁー……。そりゃモテるよー。
モテない理由がどこにもないんよ……。
「はいっ、どうぞ」
数分後、会計を済ませてきた松村くんがハートのキーホルダーを差し出してくれた。
「あっ、ありがとう……っ」
♡♡♡
次に向かったのは
【ハピラブ】展のカフェ。
「えー……。どれにしよう…迷うー…」
わたしはメニュー表を険しい顔して眺めていた。作品中に出てくるメニューが再現されてるからできることなら
ぜーんぶ食べたいくらい!!
その中から1つを選ぶなんて至難の業だ…。
「ねぇねぇ!見て!このオムライス!7巻でリズムちゃんが風邪ひいた茶ノ宮くんに作ってあげたやつだー!!あそこわたし、笑っちゃった!普通、病人にはお粥なのに、オムライス!?って!」
わたしはメニュー表のあちらこちらを指さす。
「あ!あとこれ!この焼きそば!茶ノ宮くんの誕生日にリズムちゃんが作ったやつだよね!料理苦手なのに、好きな人のために頑張るあの姿!ほんっと尊い!!好きすぎる!あ~!どうしよう!ちょー迷う~っ!」
「あははっ……、じゃあ、片瀬さん、
それ頼んだら?俺こっち頼むから」
松村くんはそう言ってわたしが迷ってる
”オムライス”と”焼きそば”を指さした。
「え?松村くんはどれでもいいの……?」
「俺はなんでも。ほら、この2つにしときゃ、片瀬さんが迷ってるやつ
どっちも食べれるだろ?」
あわわわわ……っ!なにそれ……っ!!
「優し……」
「……」
あ、やばい!
声に出すつもりじゃなかったのについ!
「あははっ……、”片瀬さんにだけ”だよ」
「……」
え……?
わたし……に、だけ?
「それって……どうゆ……」
「あ!!ご、ご、ご、ごめん!今の忘れて!ほんとに!」
「えっ、あ……うん」
聞き間違い……?
「じゃあ、これと、これください」
「かしこまりました!」……
それから昼食は結局、わたしが迷っていた
オムライスと焼きそばを頼んだ。
楽しみだね!なんてたわいもないことを
話していたその時。
「ねぇねぇ、あの2人。
茶ノ宮くんとリズムちゃんに
そっくりじゃない?」
「うわ!ほんとだ!」……
近くに座っていたかわいらしい女の人2人組がわたしたちの方をチラチラと見てコソコソとしだした。
なんだろう……。
気になっていると2人は立ち上がって
わたしたちの座る席に来た。
「……あの」
そしておそるおそる話しかけられる。
松村くんは”ツン”としている感じだ。
あ……そういえば。
松村くんの最初の印象って……
これだったなぁ……
”ツン”って感じ。
おまけに女の子苦手なのかな、
って思ってたんだっけ?
今では全然印象変わったなぁ…。
「はい?」
松村くんの代わりにわたしが答える。
「写真撮ってもいいですか!?」
写真……。
「え!?しゃっ、写真!?」
一瞬頭が真っ白になるけど
女の人がチラッと松村くんに
視線をやったので、わたしは思った。
「あぁ!この人ですか?」
この人も松村くんが
茶ノ宮くんに似てるって思ったのかも……!
そうだよね!ここ【ハピラブ】展のカフェだし、ファンがたくさんいるとこだもん!
似ていると騒がれても仕方ないくらいに
松村くん似てるしね!
「いえ!お2人です!」
「……」
「2人……?」
誰と、誰、だろう。
そう思っていると、
女の人は
松村くんとわたしに視線をやった。
「え、わたしも!?」
思わず椅子から立ち上がる勢いで声を上げた。
「はい!いいでしょうか!?」
「え?いっ、いいですけど……
え?なんでわたしも?」
松村くんは分かるけど
わたしが写真を撮られる意味は
全く分からない。ポカン、とした
わたしに女の人は笑顔で言った。
「リズムちゃんにそっくりじゃないですか!」
「え!?」
り、り、り、リズムちゃんに!?
わ、わ、わ、わたしが!?
「え?似てます……よね?彼氏さん」
「「か、か、か、彼氏さん!?」」
そこで松村くんと
わたしの声がぴったりとそろった。
松村くんもわたしも硬直状態だ。
「似……てる、めっちゃ似てるよな」
ひと足早く硬直状態から
抜け出した松村くんが答えた。
♡♡♡
え。わたしって……
リズムちゃんに似てるのかなぁ…。
だとしたらめっちゃ嬉しいんだけど!
自覚は今も全くないけど、
とにかく嬉しい。あと…
((え?似てます……よね?彼氏さん))
彼氏…さん。
はたから見たら、釣り合ってないかも、
とか思ってたから…
そう勘違いされただけでも
すごく嬉しかった。
あの女の人2人組に写真を撮られた後。
とにかくわたしは嬉しくてニヤニヤが
抑えられそうになかった。
あ、そういえばわたしはずっと
松村くんを茶ノ宮くんに似ている、って
思っていたけれど、本人は
そんな自覚全く持っていなかったらしく、
「え!?俺が!?茶ノ宮に似てる!?」
と、驚いていた。
あ……そういえば。
あのお2人さんはあぁ言ってくれたけど
”似……てる、めっちゃ似てるよな”
松村くんのあれは……
ほんとにそう思ってたのだろうか……?
話の流れ的に、合わせて……
似てる、って言ってくれたのかな…。
そんなことを目の前に座る松村くんをチラリと見て考えていると……
「片瀬さん」と名前を呼ばれた。
「うん?」
「片瀬さん、ずっと
俺のこと……、茶ノ宮に似てる、って
思ってくれてた……の?」
上目遣いでそんな質問をしてきた松村くん。
うっ、上目遣い……!やっば!!破壊力!
…じゃなくて!
「あ…うん、……めっちゃ思ってた」
言った後。
なんだか照れくさい気持ちになって
テーブルの上のグラスに
視線を落とした。
グラスの中で
少し歪んで映る自分と目が合う。
”照れくさい”
そう思ってしまうのはきっと……
似てる、似てる、と心の中で
ひたすらはしゃいでいた自分を…
見透かされた気がするから、かな。
グラスに映る自分の姿を見て。
心まで映されてしまった気分になる。
「やべぇ…」
「え?」
「すげぇ…うれしい」
松村くんの目がキュッ、と細められた。
ドクン…ッ
狭められた目の縁には溢れんばかりの
涙がうるうると光っていて、とても…
優しい顔だった。
ドクン…ッ、ドクン…ッ……
不意に見せた松村くんのその表情に
わたしは吸い込まれていく。
「…っ、」
はっ…
このまま見ていたら、なんか…
ダメな気がして…わたしは静かに目をそらす。
だけど……。
そらしてもまだ、瞼の奥に松村くんの
優しい顔が焼き付いてて、困ってしまう。
「まっ、松村くんこそ!ほんとに
わたしのことっ、リズムちゃんに似てると
思ってたの?」
そして今度はわたしが質問した。
「思ってたよ。はじめて会った時から」
「はじめて?あっ、入学式の時?」
本当に思ってたんだ…
しかも、そんな前から……
そういえば、
わたしが気づいたのは入学式から
1週間くらい経った時だったなぁ…。
「あっ、ううん、受験の時……
なんだけど、覚えてない……よね?」
「受験……?」
え……?松村くんと……?受験の時?
会ったっけ……?
「もう1回、ちゃんとお礼したいって思ってたんだ。あの時……、消しゴム、貸してくれてありがとう」
消しゴム……
うーん…。
「あっ!えっ!?もしかして……っ、隣の席に座ってた人!?あれ松村くんだったの!?」
「そう、俺だよ」
「そうだったんだ!」
めっちゃ咳してた人だ!
マスクの人、って印象しかなくて
ぜんっぜん気づかなかった!
……って!マスクの下!
こんなイケメンだったんかい!!!
それにしても松村くんと
偶然隣同士だったなんて、すごい!
だってすごい確率だよね!
「おまたせしました~
オムライスになります!」
やがて。
テーブルにオムライスが運ばれてきた。
「わぁー!かわいい!ねぇ、見て!松村くん!
リズムちゃんがケチャップで書いた
”茶ノ宮くん♡” も再現されてるーっ!
えぇー。食べるのもったいなさすぎる!
「わ~…すげぇ…。そのまんまだね」
「ねっ!やばい!」
焼きそばはまだ到着していない。
オムライスだけが
わたしと松村くんの間に置かれている今…。
わたしは…
とんでもないことに気づいてしまった。
はっ…!!!
このオムライス……!
どうして気づかなかったんだろう!
7巻!茶ノ宮くんの看病回!!
あそこは……!
あそこの茶ノ宮くんは
冷えピタをしているため!!
まさに……!!今の松村くんみたいな!
センター分け!!しかも、
寝込む茶ノ宮くんの格好と、
今の松村くんの格好…
めっちゃそっくり……!
もはや。もうそれ!
もう、リアル茶ノ宮くん!
そんな松村くんにこの
オムライスを食べさせたら……っ!!
きゃあああああああああ!!!!
漫画の世界に飛び込んだみたいー!!!
ドキ……ドキ……
「片瀬さん?どうしたの?」
「へっ!?ううん!?食べて食べて!」
「片瀬さん、先、食べていいよ?」
そう言ってスプーンをカゴから取って
お皿に置いてくれた松村くん。
「いや!松村くんが先食べて!」
なんとしても!
今のビジュアルの松村くんが
このオムライスを食べる姿を
目に焼き付けたい!!
「えっ?あ……、じゃあ食べるね?」
ゴクリ…。
密かに息を飲んで。
まるでかるたの札が読まれるのを
待っている人、みたいにわたしは構えた。
「……」
やがて。
松村くんがスプーンを持って。
オムライスをすくって。そしてそれを……
食べた。
きゃあああああああああああああああ!!
食べてる!食べてるー!!!
「おまたせしました~
焼きそばになります!」
少し遅れて焼きそばも到着し、
2人で分け合いっこして食べた。
どっちも美味しくて、
ほっぺた落ちそう~、
という言葉を何度も発した。
発する度に松村くんが優しい顔をして
わたしを見つめるもんだから、
ほっぺたじゃなくて
わたしの視線は落ちるばかりだった。
男の子と、
休みの日にどっか出かけるなんて
はじめてで。
ちょっと不安だったけど、
すごく楽しい…。
胸が膨らんでいく気持ちが
自然とわたしを笑顔にさせてくれた。
♡♡♡
「はぁーっ!お腹いっぱいー!」
「だな。調理実習の時にも思ったけど
片瀬さん食べ物、
ほんっと美味しそうに食べるよね」
「え?ほんとー?」
「ほんとだよ。見てて、楽しい」
「もう!松村くん、褒めすぎだって…!」
カフェからの帰り道。
そんなたわいもない会話をしていたわたしは
またまたとんでもないことに
気づいてしまった。
はっ…!
ちょっとまって!なんかこれ…
カップルみたいな会話になっちゃってない!?フッ、と我に返り、自分達を客観的に見ると、ところどころでそういうふうに
思わされる場面があった。
思う度に、
ドクン…、ドクン…、と胸が高鳴り、
カーッ…と、体が熱くなっていく。
そんな高鳴りも。
体温の上昇も。
なんでそうなるのか
まるで分からないけど。
なってしまう。何度も何度も…
なってしまっていた。
♡♡♡
休みの日って
なんでこんなに早いんだろう。
いろいろ回ってたらもう
17時近くになっていた。
「大丈夫だよ」って言ってたんだけど
わたしの家まで送ってってくれるらしい。
近所の人通りの少ない商店街を2人で歩く。
「あっ、今日は誘ってくれてほんっとうにありがとうっ!このキーホルダー!大切にする!宝物!」
松村くんが買ってくれた
ハート型のキーホルダーを
夕暮れの空にかざして揺らした。
陽の光に当たるとハートが透けて、
より一層綺麗になった。
「こちらこそ、来てくれてありがとう。
おっ、俺も…、宝物…に、するな」
「うんっ!あっ、そうだ!」
「ん?」
「わたしね、男の子とどっか出かけるの、松村くんがはじめてなんだ…。
だから、その…どんな格好していけば
いいのか分かんなくて……っ、
だからねっ、なんか……、
いろいろ気付いてくれるのすっごく
うれしかった!」
今日を思い返すと、
待ち合わせ場所で、
服をかわいい、と褒めてくれて。
他にもいろいろ…、
松村くんの隣に並んでもおかしくないように、と頑張ったところを、
たくさん気づいてくれて褒めてくれた。
それがすっごくうれしくて、心に残って。
暖かい気持ちになって。
これだけはどうしても
お礼を言いたかったんだ。
「きっと松村くんの彼女になる人は
幸せなんだろうなぁ…」
ふいにそんな言葉が口から
飛び出てしまっていた。
「…っ、」
あれ…?どうしたんだろう。
「松村くん…?」
松村くんの足がピタリ、と止まってしまった。表情がどことなく暗い気がする。
「どうしたの?だいじょ…っ」
心配になって、
松村くんのすぐそばまで
駆け寄った時だった。
ドン……………ッ!!
一瞬のことだった。
気がついたら
わたしの背中は壁にペタリ、と
引っついていた。
お互いの鼓動が聞こえちゃいそうなくらい…
ちょっと…背を伸ばしたら……。
ちょっと…動いたら……。
唇と唇が当たっちゃうかも。
くらいの近さに、松村くんの顔がある。
ドクン…、ドクン…
そう…。
わたしが、松村くんに、
壁ドンをされている。
ということに気づくのには
そう時間はかからなかった。
商店街のシャッターはほぼ閉まっていて、
誰も…ここを通る人はいなかった。
2人…だけ。
「まっ、松村くん…っ、?」
いきなりのことで頭の中が真っ白になる。
「あ……、って……、……んで」
耳元で、なにかをささやかれる。
「え……?」
「綾斗、って…呼んで……?」
「……っ、」
はっ…!
こ、こ、こ、こ、これ……もしかして……
ーードン……ッ
ーー茶ノ宮くん……っ
ーー…一茶って呼んで?俺のこと。
ーー………一茶、くん…
あのシーン?
ドクン…、ドクン……
……漫画の真似……っ、?してるのかな……
こんな…突然に??とは思ったけど
セリフがそのまんまだ。
「ひゃっ……」
壁ドンしてない方の松村くんの手が……
わたしのほっぺに触れた。
わたしの手よりも大きくて。
少しゴツゴツした包容力のある手。
触れられた場所がポゥッ……と熱を帯び、
イヤリングがシャラシャラと静かに揺れ動く……。
「松村……くん…っ」
どうしたんだろう。いきなり…。
体と体が今までにないくらい
密着する今この瞬間が…
とても、長く、永遠に感じられた。
「呼んで……」
なんか……っ、松村くん……
いつもと……
違う───────。
ゆらゆら揺れる松村くんの瞳。
その瞳の奥で松村くんが何を考えているか
全然分かんなくて
視線が下がっていくばかり…。
と、その時だった。
耳に触れる松村くんの手がスっと、ずれて、
わたしの…顎に触れた。
そしてゆっくり、
下がった視線を持ち上げるように
わたしの顔は強制的に
上げられてしまった。
「ん…っ」
また目が合う…。
これは…いわゆる顎クイ…。
嘘でしょ…。
壁ドン&顎クイ…!?
身動き出来ない…。
今にも地面にヘナヘナと倒れ込んでしまいそうなくらい顔が熱い…。
「……呼んで」
「……っ」
松村くんのパーカーに手が伸びる。
ギュ……ッ
手に力を込めて、パーカーの裾をつかむ。
ドクン…、ドクン……
「…あやと……くん…っ」
声が震える。
はじめて声に出して
呼んだ松村くんの名前に…
不思議な感覚になる。
ドクン…、ドクン……
うるさい。
心臓が……とてもうるさくて。
気を緩めたら今にも
口から飛び出しちゃいそうだよ…。
「……」
「乃愛…」
「…っ、」
わたしは目を見開く。
なにそれ…
なに……その顔………………。
そんな…
今にも泣き出しちゃいそうな…
悲しくて…切なくて…
見てると…胸の奥がギューって
締め付けられちゃいそうになる…
そんな……顔。
……ずるい。
なのに…次の瞬間。
”キュン”───────…
それが、どうしてか、
わたしの”キュン” を……
静かにくすぐった。まるで…
猫じゃらしでなでられた時のような…
そんな…
優しくて…淡い……
小さな”キュン” を……
感じた。
……ずるい。
そんな顔するなんて……
こんな…気持ちになるなんて…
聞いてないよ…。
「あっ、ごめ……っ、俺……っ」
魔法が解けたみたいだ。
やがて松村くんがいつもの松村くんに戻る。
「…うっ、ううん!!ぜっ、全然!」
焦ったように壁から離れていく
松村くんの手……。
それを、どうしてわたしは…
こんなにも愛おしく、
名残惜しく…
眺めているのだろう。 ️
さっきの…”キュン”は………
一体…
なんだったんだろう───────。
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そんなある日、ヒナのクラスに転校生の黒江晶人(くろえ あきと)がやってきた。
――はじめて会ったのに、なぜだろう。ずっと前から知っている気がするの……。
クールでミステリアスな黒江くんは、気弱なヒナをなにかと気にかけ、助けてくれる。
同級生とトラブルになったときも、黒江くんはヒナを守り抜くのだった。
ヒナもまた、自らの考えを言葉にして伝える強さを身につけていく。
吹奏楽を続けることよりも、ヒナの所属している文芸部に入部することを選んだ黒江くん。
それもまたヒナを守りたい一心だった。
個性的なオタク女子の門倉部長、突っ走る系イケメンの黒江くんに囲まれ、
にぎやかになるヒナの学校生活。
黒江くんは、ヒナが以前から気になっている白野先輩との恋を応援するというが――。
◆◆◆第15回絵本・児童書大賞エントリー作品です◆◆◆
表紙絵は「イラストAC」様からお借りしました。
甘い香りがする君は誰より甘くて、少し苦い。
めぇ
児童書・童話
いつもクールで静かな天井柊羽(あまいしゅう)くんはキレイなお顔をしていて、みんな近付きたいって思ってるのに不愛想で誰とも喋ろうとしない。
でもそんな天井くんと初めて話した時、ふわふわと甘くておいしそうな香りがした。
これは大好きなキャラメルポップコーンの匂いだ。
でもどうして?
なんで天井くんからそんな香りがするの?
頬を赤くする天井くんから溢れる甘い香り…
クールで静かな天井くんは緊張すると甘くておいしそうな香りがする特異体質らしい!?
そんな天井くんが気になって、その甘い香りにドキドキしちゃう!
ねこまんま族の少女パール、妖怪の国を救うため旅に出る
綾森れん
児童書・童話
13歳になるパールは、妖怪の国に暮らす「ねこまんま族」の少女。将来の夢は一族の族長になること。賢く妖力も大きいパールだが、気の強い性格が災いして、あまり人望がない。
妖怪の国では「闇の神」ロージャ様が、いたずらに都を襲うので困っていた。妖怪たちの妖力を防いでしまう闇の神から国を守るため、人の国から「金の騎士」を呼ぶことにする。人間は妖力を持たぬかわりに武器を使うから、闇の神に対抗できるのだ。
しかし誰かが遠い人の国まで行って、金の騎士を連れてこなければならない。族長にふさわしい英雄になりたいパールは、
「あたしが行く」
と名乗りをあげた。
故郷の大切な人々を守るため、重要な任務を帯びた少女の冒険が今、幕を開ける。
(表紙絵は「イラストAC」様からお借りしています)
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