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出会い

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 ***

「おい、大丈夫か?」

 桜の匂いが鼻腔をくすぐる春。

 入学式の日のこと。

 校門前でうずくまってる小さな女子生徒がいて。

 何となく声を掛けた。

「…っ」

 恐る恐る顔を上げた彼女とパチリ、と目が合う。

 ……最初の印象は‪”‬かわいい女の子‪”‬だった。

 彼女のどこか儚げな雰囲気を放つ長いまつ毛が切なげに揺れ動く。

 綺麗な二重まぶたのぱっちりしている目には僅かながら涙が滲んでいて。

 ちょこんと乗った鼻先はほんわか赤くなっていた。

 そして薄ピンク色の唇は何かに怯えるように小刻みにプルプル、と震えている。

 泣いてる……のか?

 ーードクン……!

 瞬間。

 自分の心臓があまりに大きく音を立てたのでびっくりした。

「お腹が……痛くて…っ」

 入学式だし、緊張しているのかもしれない。

「保健室行こう。立てるか……?」

「うん…っ」

 俺はこの時。
 
 ‪”‬俺が守ってやらなきゃ‪”‬

 と。

 なぜだかそんな使命感に襲われた。

 やがてその使命感は‪……、

 『恋』‬なんだって気付いたのだが、勇気が出なくてせっかく同じクラスだってのに、なかなか話し掛けられずにいた。

 遠くから見ているばかりの日々。

 男なのに、ほんと情けない…

 でも。

 ずっと想ってた​───────。

 ***

「ふれあってさ、なんかめっちゃ可愛いよな」

 本人には恥ずかしくて言えないけど。

「ちっこいし、守ってやりたくなるっていうか」

 ふれあの飼い犬であるチャルルを前に、俺はつい本音が零れてしまった。

「昨日なんかさ、私のどこ好きになったのーとか聞いてきたけど、そんなん​────…」



に決まってるじゃんね?」



 可愛いところ。家族思いなところ。いつも楽しそうに友達と話しているところ……

 言い出したらキリがない。

 どれだけ俺が今までふれあのこと見てきたと思ってんだよ。

 「おーい、雨音ー、ちょっとこい」

 「んー」

 親父に呼ばれ、部屋を出ようとした俺は一応口止めをした。

 「じゃあな。あ、今の内緒な?」

 ふれあ、今頃大阪旅行楽しんでるかな。
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