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家族になった日の話
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「ただいまー」
あ。ふれあや!
「わん!」
ウチはソファから立ち上がっていつものように玄関にお出迎えに向かった。
「わんわん!」
「チャルルーーっ、んぎゅー」
おおー、えらいご機嫌やな。
帰宅早々抱きしめられてしまいましたわ。
ん?
クンクン、と鼻先を動かす。
なんかふれあ…雨音くんの匂いするな。
これはもしや……
「さっきね、途中まで雨音くんと一緒に帰ってきたんだー!」
やっぱな。
匂いでバレバレや。
とりあえず吠えとくか。
「わん!」
「これ……夢じゃないよね?」
「わん!」
「きゃー、もうっ、こんな展開予想してなかったよー! 私なんか絶対振られるって思ってたのに…っ」
ヒトがよく食べるアイスクリームのようにデロデロに頬が緩んでいるふれあ。
────今日の昼間。
学校を抜け出したふれあと雨音くんは無事気持ちを伝えあって付き合うことになった。
なんや、あの後ウチを家に置いてからキャッキャウフフしとったんかいな。
ええなぁ。
ふれあ、めっちゃ幸せそうな顔しとる。
「さっきね、雨音くんと一緒に帰ってきたんだ…っ、へへへへ」
それさっき聞いたって。
完全に浮かれとるな。
「チャルル…」
抱きしめとったウチの体を下ろし、急に深刻そうな顔つきになるふれあ。
ん? 急にどしたん。
「昼間はごめんね。大嫌いなんて言っちゃって……」
あー、あれのことか。
なんや、まだ気にしとったんか。
繊細なガールやなぁ。
「いつも私の話聞いてくれて、私の家族になってくれて、本当に本当にありがとう。私……雨音くんも大好きだけど、同じくらいチャルルのことも大好き……っ」
「わん!」
「許してくれる?」
あんなん大して気にしてませんて。
頭に血が登ってつい言ってしまった、的なあれやろ?
そんな深刻そうな顔せんでええのに。
「わん!」
てくてく歩いて、ふれあの膝に手をぽん、と置いた。
犬はいつだって飼い主の味方や!
そこまで気にしなはんな。
「チャルル……」
また、むぎゅーと抱きしめられて、その後はおやつをもらった。
いつもより多くくれて、夜ご飯前なのにお腹いっぱいになってもうたわ。
*
*
*
その夜。
懐かしい夢を見た。
「わぁー! わんちゃんいっぱーい!」
それはウチがまだペットショップのショーケースに入れられて売られていた時のこと。
「おーい、ねんねしてるのー?」
「……」
「おーい」
「……」
「おーい!」
「……」
なんや。うるさいなぁ。
ゴロン、と寝返りを売ってショーケースの外を見る。
すると目をキラキラさせた、ちっさな女の子とパチリ、と目が合った。
2つ結びにしていて、なんかうさぎみたいな雰囲気の子や。
「あっ! 起きたー!」
「……」
まだ半分夢の中で、ぽわぽわする頭にそんな嬉しそうな女の子の声が届いた。
なんや。ウチが起きたことがそんな嬉しいのかいな。
ちょいとサービスしてやるかー。
「わん!」
「あっ、吠えたー!」
あはは、なんやこの子。めっちゃ喜んどる。
ただ吠えただけなのに。
変なのー。
「あっ、あくびしたー!」
「あっ、また寝っ転がったー!」
「あっ、背中かいてるー!」
ウチがちょっと動いただけやってのに、女の子はその度にどんどん目をキラキラさせよった。
ほんま、変な子やなぁ。
たかが犬でこんな喜びはるお嬢さん初めて会ったわ。
純粋な目ぇしとる。
「お母さーん」
しばらくするとその女の子は母親の所に走っていった。
なんや。もうウチには飽きたのか。
「……」
別に寂しいなんて思っちゃいません。
ちょうどえぇ暇つぶしになったわ。
ウチはゴロン、と寝っ転がって丸まった。
入れ替わり立ち代り客が出入りするペットショップでは、こんなのしょっちゅう。
ちょっと仲良うなったかな、と思ってもウチの値札を見ては「高いねー」と言ってみんな困り顔する。
そしたら決まって「またね、バイバイ」って言って、帰ってしまうんや。
「……」
別に……寂しいなんて思っちゃいませ────
そんな時。
またさっきの女の子の声が聞こえた。
お母さんの手を引いて、こちらへまた戻ってきたのだ。そしてウチのことを指さした。
「私この子飼いたいー!」
「……っ」
「んー? このトイプードルの男の子?」
「うん!」
「ふれあがそう言うなら、いいわよ」
「やったー!」
え……………………???
ウチ……?
ウチのこと飼ってくれるん?
ポカン、としている間にいつもウチをお世話してくれとったペットショップのお姉さんに抱き上げられて…
そのまま別の所へ連れていかれて…
かと思ったらその先にさっきの女の子がお母さんといた。
「わぁー! 来たー!」
「優しくだっこしてあげてね」
「はいっ」
ウチはお姉さんの手から女の子の手に渡った。
女の子のちっこい膝に乗せられて、なでなでされた。
「わあっ、モコモコだーっ」
「ほんとねぇ」
母親にもなでなでされた。
「でしょ! さっき背中かいてたんだよー」
恥ずかしいから、そんな昔のこと言わんどいてや。もう。
少し照れくさくなったウチは、女の子の手の甲をペロ、と舐めた。
「あっ! なめたー! かわいい! かわいい!」
かわいいってなんや。ウチ男だってゆーのに。
───────これは、ウチとふれあが家族になった日の話。
「私ふれあ! 今日から家族だよ!」
家族……っ
満面の笑みでそう言ってくれたふれあにウチはしばし目を奪われてしもうた。
「わん!」
生まれて初めてウチに温かい感情を教えてくれたのはふれあやった。
これからも大好きやで。
あ。ふれあや!
「わん!」
ウチはソファから立ち上がっていつものように玄関にお出迎えに向かった。
「わんわん!」
「チャルルーーっ、んぎゅー」
おおー、えらいご機嫌やな。
帰宅早々抱きしめられてしまいましたわ。
ん?
クンクン、と鼻先を動かす。
なんかふれあ…雨音くんの匂いするな。
これはもしや……
「さっきね、途中まで雨音くんと一緒に帰ってきたんだー!」
やっぱな。
匂いでバレバレや。
とりあえず吠えとくか。
「わん!」
「これ……夢じゃないよね?」
「わん!」
「きゃー、もうっ、こんな展開予想してなかったよー! 私なんか絶対振られるって思ってたのに…っ」
ヒトがよく食べるアイスクリームのようにデロデロに頬が緩んでいるふれあ。
────今日の昼間。
学校を抜け出したふれあと雨音くんは無事気持ちを伝えあって付き合うことになった。
なんや、あの後ウチを家に置いてからキャッキャウフフしとったんかいな。
ええなぁ。
ふれあ、めっちゃ幸せそうな顔しとる。
「さっきね、雨音くんと一緒に帰ってきたんだ…っ、へへへへ」
それさっき聞いたって。
完全に浮かれとるな。
「チャルル…」
抱きしめとったウチの体を下ろし、急に深刻そうな顔つきになるふれあ。
ん? 急にどしたん。
「昼間はごめんね。大嫌いなんて言っちゃって……」
あー、あれのことか。
なんや、まだ気にしとったんか。
繊細なガールやなぁ。
「いつも私の話聞いてくれて、私の家族になってくれて、本当に本当にありがとう。私……雨音くんも大好きだけど、同じくらいチャルルのことも大好き……っ」
「わん!」
「許してくれる?」
あんなん大して気にしてませんて。
頭に血が登ってつい言ってしまった、的なあれやろ?
そんな深刻そうな顔せんでええのに。
「わん!」
てくてく歩いて、ふれあの膝に手をぽん、と置いた。
犬はいつだって飼い主の味方や!
そこまで気にしなはんな。
「チャルル……」
また、むぎゅーと抱きしめられて、その後はおやつをもらった。
いつもより多くくれて、夜ご飯前なのにお腹いっぱいになってもうたわ。
*
*
*
その夜。
懐かしい夢を見た。
「わぁー! わんちゃんいっぱーい!」
それはウチがまだペットショップのショーケースに入れられて売られていた時のこと。
「おーい、ねんねしてるのー?」
「……」
「おーい」
「……」
「おーい!」
「……」
なんや。うるさいなぁ。
ゴロン、と寝返りを売ってショーケースの外を見る。
すると目をキラキラさせた、ちっさな女の子とパチリ、と目が合った。
2つ結びにしていて、なんかうさぎみたいな雰囲気の子や。
「あっ! 起きたー!」
「……」
まだ半分夢の中で、ぽわぽわする頭にそんな嬉しそうな女の子の声が届いた。
なんや。ウチが起きたことがそんな嬉しいのかいな。
ちょいとサービスしてやるかー。
「わん!」
「あっ、吠えたー!」
あはは、なんやこの子。めっちゃ喜んどる。
ただ吠えただけなのに。
変なのー。
「あっ、あくびしたー!」
「あっ、また寝っ転がったー!」
「あっ、背中かいてるー!」
ウチがちょっと動いただけやってのに、女の子はその度にどんどん目をキラキラさせよった。
ほんま、変な子やなぁ。
たかが犬でこんな喜びはるお嬢さん初めて会ったわ。
純粋な目ぇしとる。
「お母さーん」
しばらくするとその女の子は母親の所に走っていった。
なんや。もうウチには飽きたのか。
「……」
別に寂しいなんて思っちゃいません。
ちょうどえぇ暇つぶしになったわ。
ウチはゴロン、と寝っ転がって丸まった。
入れ替わり立ち代り客が出入りするペットショップでは、こんなのしょっちゅう。
ちょっと仲良うなったかな、と思ってもウチの値札を見ては「高いねー」と言ってみんな困り顔する。
そしたら決まって「またね、バイバイ」って言って、帰ってしまうんや。
「……」
別に……寂しいなんて思っちゃいませ────
そんな時。
またさっきの女の子の声が聞こえた。
お母さんの手を引いて、こちらへまた戻ってきたのだ。そしてウチのことを指さした。
「私この子飼いたいー!」
「……っ」
「んー? このトイプードルの男の子?」
「うん!」
「ふれあがそう言うなら、いいわよ」
「やったー!」
え……………………???
ウチ……?
ウチのこと飼ってくれるん?
ポカン、としている間にいつもウチをお世話してくれとったペットショップのお姉さんに抱き上げられて…
そのまま別の所へ連れていかれて…
かと思ったらその先にさっきの女の子がお母さんといた。
「わぁー! 来たー!」
「優しくだっこしてあげてね」
「はいっ」
ウチはお姉さんの手から女の子の手に渡った。
女の子のちっこい膝に乗せられて、なでなでされた。
「わあっ、モコモコだーっ」
「ほんとねぇ」
母親にもなでなでされた。
「でしょ! さっき背中かいてたんだよー」
恥ずかしいから、そんな昔のこと言わんどいてや。もう。
少し照れくさくなったウチは、女の子の手の甲をペロ、と舐めた。
「あっ! なめたー! かわいい! かわいい!」
かわいいってなんや。ウチ男だってゆーのに。
───────これは、ウチとふれあが家族になった日の話。
「私ふれあ! 今日から家族だよ!」
家族……っ
満面の笑みでそう言ってくれたふれあにウチはしばし目を奪われてしもうた。
「わん!」
生まれて初めてウチに温かい感情を教えてくれたのはふれあやった。
これからも大好きやで。
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