15 / 27
道が教える彼の過去4
しおりを挟む
「消えてしまう? そんなわけないです!」
レオは明らかに健康そうだし幽霊にも見えない。ロゼッタが否定するとレオは首を横に振った。
「私は、あなたの言う『イルミナート』という人物と『レオ』は別の人間だと思っています」
「そんなはず、ありません! だって『紋章』を持つ人はバレスティ国に三組しかいないし、母様は王家のものだと断言していました!」
「そういう意味ではありません。……ロゼッタは人の心は何でできていると思いますか?」
「……何って、心はその人の中に最初からあるものでしょう?」
レオの問いはロゼッタには理解できないものだ。心は最初から存在している。何でできているかなんて聞かれても、医学の知識が乏しい彼女が正確に答えることはできないのだが、とにかく存在しているものだ。
「違います。私の心は比喩ではなく、全てロゼッタでできています。あなたとのたった十日間の思い出だけでできています」
レオの言葉をロゼッタは理解できなかった。ただ、いつもの甘い言葉とは違うのだということだけは伝わる。
「何を、何を言ってるんですか?」
「全てを思い出した時、私の想いはどこに行くと思いますか?」
そのことは、以前にロゼッタも疑問に思ったことがあった。彼の気持ちが記憶喪失による勘違いだったとしてその「間違った感情」は記憶を取り戻した時に、どこへ行くのだろうかと。
「その私は、本当に私なんでしょうか? あなたを好きでない私はもはや私ではありません」
「それは……」
「思い出したら、私は消える。過去の私と今の私は別の人間なんです。少なくとも感情だけは」
レオにはどうしても自身に魂が繋がった相手がいるとは思えなかったのだ。ほかの感情だったら「ただ忘れてしまっているだけだ」と受け入れる余地があるのかもしれない。
けれどロゼッタに対する想いだけは、ほかの者が入り込む余地がない。ほかの誰かを愛する『レオ』はもはや彼ではない。
そう考えた時に、少なくとも意識だけは、元の自分とは別なのではないかと考えた。そうでなくてはならないと感じたのだ。
「もし『伴侶』がいたとして、私はとっくにその人間を裏切っています。それでも無事でいられるのは、本当の私は眠っているからではないかと思うのです」
レオが消えてしまう。その突然の告白にロゼッタは呆然となる。
「今日、私の戦いを見て、ロゼッタはどう思いましたか?」
「……強いと思いました。とても」
「それは、あなたの母君と比べてどうですか? 王太子は『契約の紋章』の力で内戦を終わらせたのでしょう? それほどの力がありましたか?」
レオは確かに強い。魔法を使っていないように見せかけるために力を制御しての戦いだったので、真の実力はわからない。
でも、例えばアレッシアが同じ人数の敵を相手にしたら、きっと指を一度鳴らせば終わるだろう。戦い方が違うのだから比較は難しいが、レオがアレッシアに比べて圧倒的に強いとはロゼッタには思えなかった。むしろ、派手さならアレッシアの方が上だ。
「『契約の紋章』の力は本当にこんなものなのでしょうか? 『紋章』の力もイルミナートという人物も眠っている。私はそう思います」
「嘘、嘘です……そんなの……そんなの、残酷です!」
レオが苦しそうな表情で、それでも淡々と語る。その冷静さすらロゼッタにはひどく悲しく感じて自然に涙が溢れる。
「だから、もう少しだけ時間がほしい……」
都へ着いたら、本当のレオを知る人物がたくさんいるだろう。そして何より魂の繋がったヴィオレッタがいる。彼女のことを思い出したら本当にレオは消えてしまうのか。その証明は誰にもできないというのに。
「覚悟をする時間を、くれませんか?」
レオの言う覚悟とは自分が消えてしまうことに対する覚悟なのだ。
「……私は、私は嫌です! 私のことを好きじゃなくなっていいから! 勘違いだった、何やってたんだろうって思っていいから! 消えるなんて言わないでっ!」
このままのレオでいてほしいと願うことは罪だ。彼はロゼッタのものではないのだから。彼はヴィオレッタとバレスティ国のために存在する尊い存在――――。それでも、彼女はレオがいなくなるのは嫌だった。
「ロゼッタ……申しわけありませんでした。私の存在そのものがあなたを傷つけるものになってしまいました」
「そうです!! ……もう遅いんです、今更そんなこと言われても……」
もう、ロゼッタの心の中にもレオがいるのだ。それをなかったことにはできない。彼に告げることは絶対にできないが、彼への想いはロゼッタの中で少しずつ育ってしまった。
「少しだけ……」
「…………?」
「レオさんの心が消えてしまったら、きっと私の心も少しだけ消えますね」
ロゼッタは涙を拭い、無理に笑う。声は少し震え、拭ったそばから新しい涙が溢れるが、それでも必死に笑った。
「今はあげません。絶対あげない! でも、もし本当にあなたがいなくなるのなら……。ほんの少しだけ、私の心を持っていってください。そうしたら、……そうしたら、寂しくないでしょう?」
本当は少しではない。きっと心を抉られて全てを持っていってしまうのだ。
レオが王太子イルミナートとは別の存在だと証明される瞬間。その瞬間に初めてロゼッタは誰に遠慮することもなく、罪の意識に苛まれることもなく、堂々と彼を想うことが許される。彼を想うことはロゼッタに何ももたらさない。ただ奪われるだけの未来だと知っても、それでも勝手に湧いてくる彼への想いを止めることはできない。
「本当に、レオさんは困った方ですね……」
ロゼッタが一緒にいられるのはあと数日。それならせめて彼にはできるだけ笑顔を向けていようと彼女は決心する。消えたあとの彼は思い出すら残らないのかもしれない。そうであれば余計に今を大切にしなければ……、彼女はそう思ったのだ。
***
ロゼッタは夜明け前に再び目を覚ました。夕方から寝てしまったため、それも当然のことかもしれない。隣のベッドに目をやると、いつもは静かに寝息を立てるだけのレオが酷くうなされている。
ロゼッタはそっとベッドから這い出て彼のそばに近寄る。
窓から差し込む月明かりだけでは、何も見えない。ランタンの明かりを灯すのは面倒だと思い、彼女は身につけている腕輪に触れる。
昼間の治療で使わなかった最後の水晶に指で触れ、瞳と同じその石をしっかりと『視る』。少しずつ石が輝きだし、青白い光を放つようになった。腕輪を外し、それを二つのベッドの間にある台の上に置く。 そうしてから、せめて彼の汗をぬぐってやろうと、ハンカチを持った手を彼の額へと伸ばした。
「くっ……ッタ……」
「!?」
レオはもがくように腕を伸ばし、額に伸ばされたロゼッタの腕をつかんだ。
「レ、レオさん……?」
「……ッ……、ェ、ッタ」
うなされながら呼んでいるのは、ヴィオレッタの名前だろうか、それともロゼッタの名前だろうか。自分の名前であってほしい……もしかしたら、本心ではそう願っているのではないかと思い、ロゼッタは自身のことをまた嫌悪する。
「……ロゼッタ……」
レオが呼んでいるのはロゼッタの名だった。今、ロゼッタの目の前で苦しんでいるのは記憶を失くした、ただのレオという青年。何もかも忘れた状態というものが、どれほど辛く寂しいものなのかロゼッタには知ることができない。知らないのに何度も突き放し、冷たい言葉を浴びせた。
「レオさん……。大丈夫ですよ……きっと、大丈夫ですから」
覚悟する時間がほしいと言った彼に、どうか時間を与えて欲しい。それを誰に祈ればいいのかわからなくて、ロゼッタはただ「大丈夫」だと言い続けた。彼のためではない。ロゼッタ自信にも覚悟が必要なのだ。そのための時間が欲しかった。
「…………ロゼッタ? なぜ泣いて……?」
目を開けたレオは最初にロゼッタの名を呼ぶ。彼女はその言葉に安堵した。
レオはしばらくロゼッタの顔をぼうっと見つめていた。そして自分の手が彼女の細い腕を強くつかんでいることに気がついて慌てて離す。その表情はひどく驚いていた。
「レオさん……?」
「…………」
レオは額を押さえ、少し伸びた茶色の髪をかきあげた。あらわになった瞳はいつもと変わらぬ空色。ロゼッタが優しい色だと感じていたその瞳が、どこか冷たい。
「……イルミナート王太子殿下?」
少しの沈黙の後、呼びたくない名前をロゼッタは口にした。
「いいえ、違います。私の名前は……ジェラルド・レオナール・ルベルティです」
ロゼッタのよく知っているはずの声、よく知っているはずの顔。けれど見たことない無機質な表情の青年は、そう名乗った。
それは王太子行方不明事件の重要参考人にして、ルベルティ家の跡取り――――つまりは、ロゼッタの義理の従兄の名前だった。
レオは明らかに健康そうだし幽霊にも見えない。ロゼッタが否定するとレオは首を横に振った。
「私は、あなたの言う『イルミナート』という人物と『レオ』は別の人間だと思っています」
「そんなはず、ありません! だって『紋章』を持つ人はバレスティ国に三組しかいないし、母様は王家のものだと断言していました!」
「そういう意味ではありません。……ロゼッタは人の心は何でできていると思いますか?」
「……何って、心はその人の中に最初からあるものでしょう?」
レオの問いはロゼッタには理解できないものだ。心は最初から存在している。何でできているかなんて聞かれても、医学の知識が乏しい彼女が正確に答えることはできないのだが、とにかく存在しているものだ。
「違います。私の心は比喩ではなく、全てロゼッタでできています。あなたとのたった十日間の思い出だけでできています」
レオの言葉をロゼッタは理解できなかった。ただ、いつもの甘い言葉とは違うのだということだけは伝わる。
「何を、何を言ってるんですか?」
「全てを思い出した時、私の想いはどこに行くと思いますか?」
そのことは、以前にロゼッタも疑問に思ったことがあった。彼の気持ちが記憶喪失による勘違いだったとしてその「間違った感情」は記憶を取り戻した時に、どこへ行くのだろうかと。
「その私は、本当に私なんでしょうか? あなたを好きでない私はもはや私ではありません」
「それは……」
「思い出したら、私は消える。過去の私と今の私は別の人間なんです。少なくとも感情だけは」
レオにはどうしても自身に魂が繋がった相手がいるとは思えなかったのだ。ほかの感情だったら「ただ忘れてしまっているだけだ」と受け入れる余地があるのかもしれない。
けれどロゼッタに対する想いだけは、ほかの者が入り込む余地がない。ほかの誰かを愛する『レオ』はもはや彼ではない。
そう考えた時に、少なくとも意識だけは、元の自分とは別なのではないかと考えた。そうでなくてはならないと感じたのだ。
「もし『伴侶』がいたとして、私はとっくにその人間を裏切っています。それでも無事でいられるのは、本当の私は眠っているからではないかと思うのです」
レオが消えてしまう。その突然の告白にロゼッタは呆然となる。
「今日、私の戦いを見て、ロゼッタはどう思いましたか?」
「……強いと思いました。とても」
「それは、あなたの母君と比べてどうですか? 王太子は『契約の紋章』の力で内戦を終わらせたのでしょう? それほどの力がありましたか?」
レオは確かに強い。魔法を使っていないように見せかけるために力を制御しての戦いだったので、真の実力はわからない。
でも、例えばアレッシアが同じ人数の敵を相手にしたら、きっと指を一度鳴らせば終わるだろう。戦い方が違うのだから比較は難しいが、レオがアレッシアに比べて圧倒的に強いとはロゼッタには思えなかった。むしろ、派手さならアレッシアの方が上だ。
「『契約の紋章』の力は本当にこんなものなのでしょうか? 『紋章』の力もイルミナートという人物も眠っている。私はそう思います」
「嘘、嘘です……そんなの……そんなの、残酷です!」
レオが苦しそうな表情で、それでも淡々と語る。その冷静さすらロゼッタにはひどく悲しく感じて自然に涙が溢れる。
「だから、もう少しだけ時間がほしい……」
都へ着いたら、本当のレオを知る人物がたくさんいるだろう。そして何より魂の繋がったヴィオレッタがいる。彼女のことを思い出したら本当にレオは消えてしまうのか。その証明は誰にもできないというのに。
「覚悟をする時間を、くれませんか?」
レオの言う覚悟とは自分が消えてしまうことに対する覚悟なのだ。
「……私は、私は嫌です! 私のことを好きじゃなくなっていいから! 勘違いだった、何やってたんだろうって思っていいから! 消えるなんて言わないでっ!」
このままのレオでいてほしいと願うことは罪だ。彼はロゼッタのものではないのだから。彼はヴィオレッタとバレスティ国のために存在する尊い存在――――。それでも、彼女はレオがいなくなるのは嫌だった。
「ロゼッタ……申しわけありませんでした。私の存在そのものがあなたを傷つけるものになってしまいました」
「そうです!! ……もう遅いんです、今更そんなこと言われても……」
もう、ロゼッタの心の中にもレオがいるのだ。それをなかったことにはできない。彼に告げることは絶対にできないが、彼への想いはロゼッタの中で少しずつ育ってしまった。
「少しだけ……」
「…………?」
「レオさんの心が消えてしまったら、きっと私の心も少しだけ消えますね」
ロゼッタは涙を拭い、無理に笑う。声は少し震え、拭ったそばから新しい涙が溢れるが、それでも必死に笑った。
「今はあげません。絶対あげない! でも、もし本当にあなたがいなくなるのなら……。ほんの少しだけ、私の心を持っていってください。そうしたら、……そうしたら、寂しくないでしょう?」
本当は少しではない。きっと心を抉られて全てを持っていってしまうのだ。
レオが王太子イルミナートとは別の存在だと証明される瞬間。その瞬間に初めてロゼッタは誰に遠慮することもなく、罪の意識に苛まれることもなく、堂々と彼を想うことが許される。彼を想うことはロゼッタに何ももたらさない。ただ奪われるだけの未来だと知っても、それでも勝手に湧いてくる彼への想いを止めることはできない。
「本当に、レオさんは困った方ですね……」
ロゼッタが一緒にいられるのはあと数日。それならせめて彼にはできるだけ笑顔を向けていようと彼女は決心する。消えたあとの彼は思い出すら残らないのかもしれない。そうであれば余計に今を大切にしなければ……、彼女はそう思ったのだ。
***
ロゼッタは夜明け前に再び目を覚ました。夕方から寝てしまったため、それも当然のことかもしれない。隣のベッドに目をやると、いつもは静かに寝息を立てるだけのレオが酷くうなされている。
ロゼッタはそっとベッドから這い出て彼のそばに近寄る。
窓から差し込む月明かりだけでは、何も見えない。ランタンの明かりを灯すのは面倒だと思い、彼女は身につけている腕輪に触れる。
昼間の治療で使わなかった最後の水晶に指で触れ、瞳と同じその石をしっかりと『視る』。少しずつ石が輝きだし、青白い光を放つようになった。腕輪を外し、それを二つのベッドの間にある台の上に置く。 そうしてから、せめて彼の汗をぬぐってやろうと、ハンカチを持った手を彼の額へと伸ばした。
「くっ……ッタ……」
「!?」
レオはもがくように腕を伸ばし、額に伸ばされたロゼッタの腕をつかんだ。
「レ、レオさん……?」
「……ッ……、ェ、ッタ」
うなされながら呼んでいるのは、ヴィオレッタの名前だろうか、それともロゼッタの名前だろうか。自分の名前であってほしい……もしかしたら、本心ではそう願っているのではないかと思い、ロゼッタは自身のことをまた嫌悪する。
「……ロゼッタ……」
レオが呼んでいるのはロゼッタの名だった。今、ロゼッタの目の前で苦しんでいるのは記憶を失くした、ただのレオという青年。何もかも忘れた状態というものが、どれほど辛く寂しいものなのかロゼッタには知ることができない。知らないのに何度も突き放し、冷たい言葉を浴びせた。
「レオさん……。大丈夫ですよ……きっと、大丈夫ですから」
覚悟する時間がほしいと言った彼に、どうか時間を与えて欲しい。それを誰に祈ればいいのかわからなくて、ロゼッタはただ「大丈夫」だと言い続けた。彼のためではない。ロゼッタ自信にも覚悟が必要なのだ。そのための時間が欲しかった。
「…………ロゼッタ? なぜ泣いて……?」
目を開けたレオは最初にロゼッタの名を呼ぶ。彼女はその言葉に安堵した。
レオはしばらくロゼッタの顔をぼうっと見つめていた。そして自分の手が彼女の細い腕を強くつかんでいることに気がついて慌てて離す。その表情はひどく驚いていた。
「レオさん……?」
「…………」
レオは額を押さえ、少し伸びた茶色の髪をかきあげた。あらわになった瞳はいつもと変わらぬ空色。ロゼッタが優しい色だと感じていたその瞳が、どこか冷たい。
「……イルミナート王太子殿下?」
少しの沈黙の後、呼びたくない名前をロゼッタは口にした。
「いいえ、違います。私の名前は……ジェラルド・レオナール・ルベルティです」
ロゼッタのよく知っているはずの声、よく知っているはずの顔。けれど見たことない無機質な表情の青年は、そう名乗った。
それは王太子行方不明事件の重要参考人にして、ルベルティ家の跡取り――――つまりは、ロゼッタの義理の従兄の名前だった。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~
緑谷めい
恋愛
ドーラは金で買われたも同然の妻だった――
レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。
※ 全10話完結予定
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
夫が愛人を離れに囲っているようなので、私も念願の猫様をお迎えいたします
葉柚
恋愛
ユフィリア・マーマレード伯爵令嬢は、婚約者であるルードヴィッヒ・コンフィチュール辺境伯と無事に結婚式を挙げ、コンフィチュール伯爵夫人となったはずであった。
しかし、ユフィリアの夫となったルードヴィッヒはユフィリアと結婚する前から離れの屋敷に愛人を住まわせていたことが使用人たちの口から知らされた。
ルードヴィッヒはユフィリアには目もくれず、離れの屋敷で毎日過ごすばかり。結婚したというのにユフィリアはルードヴィッヒと簡単な挨拶は交わしてもちゃんとした言葉を交わすことはなかった。
ユフィリアは決意するのであった。
ルードヴィッヒが愛人を離れに囲うなら、自分は前々からお迎えしたかった猫様を自室に迎えて愛でると。
だが、ユフィリアの決意をルードヴィッヒに伝えると思いもよらぬ事態に……。
【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています
高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。
そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。
最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。
何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。
優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。
断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった
Blue
恋愛
王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。
「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」
シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。
アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる