眺めのよい城。

おんきゅう

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不機嫌な理由。

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空がとても高い、窓を開けるとヒンヤリとした空気が部屋に入ってきた、秋深しってやつかな。

朝は苦手だけど、お腹は空くから朝ごはんを作る。パパは喫茶店の準備があるから、私が目覚める前に家を出てしまう。昔はいつも明るいママがいてイタズラ好きなネコがいて、それなりに賑やかな家だった。ママは2年前、ネコはそれよりずっと前に天国に旅立ってしまった。私の不機嫌が始まったのは、この家から賑わいが消えてから。

大学に入ってから自分の感情をコントロールする事が難しくなってきた。いつも些細な事でイライラして、そのイライラがつい顔に出てしまう。だから大学に入って友達が1人も出来ない、そりゃ何時も不機嫌な顔をしていれば、誰も近寄ってきてはくれない。高校時代はそれなりに笑顔を作れたし、けっこう男女共にモテていた方だと思う。あの頃の友達が今の私を見たら驚くだろうな。

朝ごはんをパパッと作って1人で食べる、昔は料理なんて全部ママが作ってくれたから全く出来なかったのに、今ではそれなりに出来るようになった。だからって上手い訳ではない、簡単な料理しかできない。掃除も洗濯も基本は私がやる、どちらかと言うとキレイ好きな私は散らかっているのが嫌いだ。だからアイツが店に入ってきてから、より気になり出した。

アイツ、悠人は真面目で愛想が良くてお客さんからのウケも良い、けど何処か抜けている所がある。ネクタイが曲がっていたりシャツが出てたり、たまにチャックが空いていてヒヤヒヤする事もある。軽くサラッと指摘してあげればよいのに、私はつい声を荒げてしまう。その度に申し訳なさそうな顔をするわりに、5分もすればケロッとしている所もまたイラッとする。

でも本当は弟が出来たみたいで内心は嬉しい、私のイライラやワガママにも嫌な顔せずに付き合ってくれる。こんないいヤツなのに、私は相変わらずキツい態度で接してしまう。何度も改めようと思った、けど実行に移すのは難しい。ちょっとでも笑顔を作れば悠人だってきっと安心するだろうし、色々な事が円滑に進むはずなのに。

朝ごはんを食べ終えて、私は大学に行く準備をする。今日は朝から授業があるからダルい、でも悠人も今日は大学に来るはずだし、昼ごはんは一緒に食べようかな。でも最近アイツは大学の友達も出来てきたみたいだし、私なんかと一緒にいてもつまんないよね…。上がったり沈んだり、私の感情の起伏は嫌になるくらい激しい。

今日は休むかな…。こんな時ママがいてくれたら、大きな声で私を学校に送り出してくれたはず。でも今は家に私一人、誰もいってらっしゃいと言ってくれる人はいない。そう考えていたらいつの間に、涙がポロポロとこぼれてきた。私は準備を辞めてベッドに潜り込んだ、こんな状態ではとても大学になんて行けない。

かと言って昂った感情を抑える事が出来ないので、眠る事もできない。私はスマホを取り出し何となくSNSを眺める。世の中には色んな人がいる、ネガティブな投稿からポジティブな投稿、だからなんだ?という意味不明な投稿、幸せいっぱいな投稿、犬ネコのカワイイ投稿、そのどれもが今の私にとってはただ虚しい。

最近フォローした珠子さんの投稿も出てきた「神社の紅葉が見頃を迎えました」という写真付きの投稿だった。キレイだけど、素直にキレイだと思えない私は本当に病んでるな。スマホを見るのを辞めて、私はただただ天井を見上げて思考を停止しようと努めた、そうすれば眠気もやってくるだろう。

が、その努力も無駄に終わる。私はやはり大学に行ってヒマを潰そうと、またノソノソと準備を始める。こんな事をほぼ毎日繰り返す日々、もはや心の病気なのかも。今何時だろう、スマホを見るとメールが届いていた。悠人からだ

「おはようございます!今日は大学行きますよね?ちょっとレポートに手間取っていまして、アドバイス頂けると嬉しいです、よろしくお願いします!」

はぁ?そんな事自分で何とかしなさいよ、と送り返してやろうかと思った。でも頼られるのは悪い気分ではない、本当に困ったヤツ。私は一言「いいよ」とだけ送る、するとすぐに返信が返ってくる。

「ありがとうございます!締切り間近なので助かります!学食おごります!」

ぷっ、思わず笑ってしまった。

「私が大食いなの知ってるよね?覚悟しといてね。」

少し意地悪だったかな?でもアイツの事だからきっと大丈夫だよね。曇り模様の心の隙間から少しだけ晴れ間が見えてきた。と言っても問題は解決した訳ではない、今日はいいけど明日はどうなるの?そんな事はどうでもいい、考えたって答えは出ない。今はただアイツの困った顔を見ていっぱいイジってやるんだ。

「えーと、お手柔らかにお願いします…」

私は準備をすませて玄関のドアを開ける。外のヒンヤリした空気を吸い込んで、大学へと向かう。
















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