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理不尽な要求.33

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 家に帰ると、安野酒店は例のブルーベリーの発泡日本酒割という商品をきっかけに、女性客が増えており、今は仕事帰りのOLさんが数人来店していた。

 夏希はいつもはこんな時間には町内の人しか来ないので店から家に入ってしまうが、さすがに新しいお客さんがいる時はそんな訳にもいかず、店の裏側に回って住宅部分の玄関から入った。

 部屋に入ってすぐにスマホの着信音が鞄の中から聞こえる。

 慌てて取り出すと、雅史からだった。

 緊張がバレないように深呼吸をしてから通話ボタンを押す。

「もしもし。」

「今、大丈夫?」

 久しぶりに聞く雅史の声に夏希は泣きそうになる。

「はい。今家に着いたところです。」

 何とか、泣かないで答えた。

「もっと早く連絡出来ると良かったんだけど。今から来れないか?」

「だ、大丈夫です。行けます。」

 夏希は嬉しい気持ちが声に出てしまいそうになるのを必死に我慢した。

 今帰ったばかりなのに出かけようとする夏希を見つけた光子は、「あら、出掛けるの?」と当然聞いてくる。

「ちょっと、仕事で忘れてた事があって。急ぎなんだ。」

 嘘は嫌だったが、仕事というのが一番心配をかけないで済む。

「あら、そう。無理しないようにね。」

「は~い。」

 夏希は後ろめたさよりも雅史に会える喜びの方が勝っている事に罪悪感を覚えながらも、一刻も早く雅史に会いたかった。


 車を飛ばし雅史の隠れ家まで急ぐ。

 いつも通り車を停めて室内につながる扉からリビングへと向かう。

 リビングにはこの間と同じようにバスローブを羽織った雅史がソファに腰を下ろしている。

「やあ、急に呼び出して悪かったね。」

 夏希に気づくと立ち上がって、飲み物を持ってきてくれた。

「いえ、特に予定はありませんでしたから。」

 顔の筋肉が緩みそうになるのをこらえながら答える。

「このところ立て続けに予定が入って、なかなか連絡出来なかったよ。久しぶりだね。」

 雅史は夏希のそばに来ると肩をそっと抱いた。

「…っ!」

 夏希はビクッと体を震わせた。

 雅史に触れられる事に慣れていない夏希は、たったそれだけの事でも過剰に反応してしまう。

「僕に触られたくない?」

「ち、ち、違います。」

 夏希は目一杯首を振って否定する。

「そう?」

 雅史は誤解したのだろうか、横顔が少し曇っているように見える。

「シャワーを浴びてきてくれるかい?」

「はい。」

 夏希は言われるままにシャワールームへ向かった。

 この間と同じバスローブが用意してある。

 夏希はそれを羽織るとリビングに戻った。

「こっちへ。」

 雅史はベッドルームへと夏希を連れて行く。

「ベッドに横になって。」

 夏希は言われるままにベッドに体を横たえる。

 期待をしてはいけないと分かってはいるけれど、今では夏希は雅史に好意を持ってしまった。

 純粋に、結ばれたいという欲望が芽生えている。

 この状況でそれを悟られない様にするのはかなりの困難を強いられた。

 すでに胸はうるさい程に高鳴り、きっと顔もうっすらと赤みを帯びているだろう。
 
 雅史は夏希のバスローブを留めている腰ひもを外すと、前をはだけ全身を露わにする。
 
 夏希は顔を見られない様に顔を雅史とは反対方向に向けた。

「僕の方を見て。」

 すかさずそう言われ、すでに真っ赤になった顔をおずおずと雅史の方に向ける。

 雅史は夏希の足首をそっとつかむと、指先を口に含んだ。

「…っ!!き、汚いです。」

 シャワーを浴びたばかりでスリッパを履いていたとはいえ、足の指を舐められ経験など一度も無い。

 夏希は足を引っ込めようとするが、「いいから。」と雅史に制され、諦めて受け入れる。

 雅史は指を口に含み熱い舌で指の間をねっとりと舐め続ける。

 軽く甘噛みされ夏希は「はうっ…!」と声を上げる。
 
 指の1本1本を丁寧に時間をかけて舐め上げられ、右足から左足へと彼の行為は移される。

 足先への愛撫が丹念に行われるうち、雅史の唾があごから滴り落ちていく。

 初めての感覚に、夏希は戸惑いながらも彼の口から伝わる熱に夏希はとろけそうになる。

「…っん、…くっ、は、ああっ、あっ、あんっ…。」

 しだいに夏希の口からは淫らな声が漏れ始める。

 口を押えようとすると、やはり止められる。

 夏希は、自分から出ているとは思いたくない様な声を我慢することは出来なかった。
 
 雅史はタオルで口を拭うと、夏希の足も丁寧に拭いてくれた。

 そして今度は夏希をうつ伏せにすると、バスローブを腰までまくり上げ、露わになった白いお尻に顔を近づける。

 両手で優しく撫でながら、軽く甘噛みをされる。

 さらに割れ目の付近を熱い舌が何度もなぞる。

 しだいに雅史の唾液で夏希の割れ目が濡れていく。

「…あっ、はぁっ…。」

 夏希の体は雅史の執拗な愛撫で苦しい程に敏感になっている。

 そして、もっと触れて欲しい、彼にメチャクチャにされたいなどと、信じたくないような欲望が芽生えている。

 雅史は夏希の尻をベッドに押し付けるように力強く揉んだ。

 夏希の陰部がベッドに擦り付けられ、より強い刺激が与えられる。

「ああっ…、あっ、あっ、ああっー!!」

 夏希は枕に顔を埋めているが、その声は隠しきれるものではなかった。

 雅史は夏希のももをグッと広げると、今度は両手でもも全体をさすり始める。

 広げられたことで、夏希の陰部は雅史の目に晒されていることになる。

 夏希は枕をギュッと握りしめ、その恥ずかしさに耐えようとした。
 
 雅史の手が膝裏からももの付け根にスライドする。

 ももの付け根辺りをグイグイと揉まれると、夏希の我慢は限界に近くなる。

「あっ、あっ、あ、もうっ、しな、いで…、くだ、さい…。」

「どうした?嫌かい?」

 そう聞かれると、夏希は答えに困る。

 もっと、して欲しいなんて口が裂けても言えない。

 けれど、この火照った体はどうしたらいいのだろう。

 夏希はもう頭がおかしくなりそうだった。

「いやじゃ…、ない、です…。」

「だったら、どうして?」

「わたし…、おかしく…、なっちゃう…。」

「…。」

 雅史は夏希の答えをどうとらえたのだろう。

「おかしくなるのは嫌かい?」

「い、嫌です…。」

「そう…。」

 雅史は今まで夏希のももから手を離すと、めくれ上がっていたバスローブを元通りに整えた。

「今日はこのくらいにしよう。また、連絡するよ。」

 雅史は夏希の服を取りに行きベッドの上に置いた。

 そして、リビングに戻ろうと夏希に背を向けた。

「雅史さん。」

 いつもは言われたとおりそのまま帰る夏希が、珍しく何かを訴えようとしている事に、雅史は少し驚いた様子で振り返る。

「何だい?」

 後先考えず呼びかけたものの、言いたいことをそのまま言う訳にはいかない。

 本当はあの女性のことを聞きたい。

 だけど、自分はそんな立場にはないのだ。

「あ、あの。私、私から何かしなくてもいいんでしょうか?」

 夏希は心の中とは全く関係ないことを口にしていた。

「何かって?」

 逆に問われて、答えに窮する。

「その、愛人の事とかよく分からないので…。今のままでいいのかと…。」

「君も何かしたいってこと?」

 雅史は少しおかしそうに言った。

「そ、それは…。私ばかり、その、色々していただいて…、申し訳ないというか…。」

「…そう。僕は僕のしたいようにしてるだけだから、君も君のしたいようにしてくれて構わないよ。」

 雅史は顎をさすりながら、楽しそうに夏希を見つめた。

「わ、私のしたいようにですか…?」

 夏希は戸惑いがちに言葉を繰り返した。

「君がどうしたいのか、今度会うのが楽しみだ。じゃあ。」

 雅史はそう言い残し、さっさとリビングに行ってしまう。

 残された夏希は服に着替えながら、頭の中は迷宮に迷い込んだようになっていく。

 車に乗り込み家に帰る道すがら、夏希は雅史の言葉を思い出していた。

(私のしたいようにって。それは、さっきから私が考えていたことで…、それは雅史にはとても言えないほど淫らなことで…、それを今度会った時に私から雅史にする…?む、む、無理、無理、絶対無理!!)

 夏希の頭の中では勝手にいやらしい妄想が渦巻き、一人車の中で絶望的な気持ちになる。

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