27 / 47
理不尽な要求.26
しおりを挟む
加奈子は、先日克己に誘われたドライブの日を迎えていた。
夏希に選んでもらった服を身につけてはみるものの、とても落ち着いてはいられない。
髪形やメイクを何度もチェックしてみるが、余り気合が入りすぎても恥ずかしいけれど、いつもとはチョット違った雰囲気にして克己との関係を前進させたいという願望もある。
そんなことをしているうちに予定の時間になっていた。
「克己さんがいらしたわよ~。」
1階から美和子のウキウキした声がする。
もしかすると加奈子よりも興奮しているかと思うほど、美和子も舞い上がっている。
そんな母の姿を見て美和子は逆に冷静さを取り戻すことができた。
「じゃあ、行ってきます。」
母に見送られて玄関のドアを開けると、克己の愛車であるポルシェのカブリオレが横づけされている。
克己は紳士らしく助手席のドアを開けてくれた。
「行先は僕が決めていい?」
「は、はい。」
すっかりかしこまった加奈子に、いつも通りにしてよと克己は言った。
「そ、そんなの無理…。」
加奈子はすっかり一人の恋する女の子になってしまっている。
「僕はいつもの加奈子ちゃんとドライブしたいんだけどな?無理?」
克己にそう言われると、変に硬くなってせっかくのドライブが楽しめないなんてもったいない。
「や、やってみます。」
加奈子が鼻息あらく答えると、克己は愉快そうに笑った。
「その調子!今日はね、僕の知り合いがやってる海辺のレストランまで行こうと思ってるんだ。彼の腕は確かだし、新鮮な魚介類が手に入るからね、きっと気に入ると思うよ。」
克己は常連である加奈子の食の好みもほぼ把握している。
加奈子が肉料理よりも魚介好きなのももちろん知っていて、今日のプランにしてくれたのだろう。
そんな克己の心遣いに、加奈子はまたしても惚れてしまうのだった。
「克己さんドライブよく行くんですか?」
加奈子はそれとなく探りを入れてみる。
「ああ、若い頃は夜な夜な走りに出てたけど、今は休みの日の気分転換程度だよ。」
などと軽くかわされてしまう。
「加奈子ちゃんは休みの日は何してるの?」
「わ、私ですか。」
これと言って自慢できるような趣味もないし、気が付けば家業の喫茶店の雑用で休みがつぶれることも多い。
「これと言って何もしてないです。」
「若い子が勿体ないな~。」
お店では喫茶店のお客さんが持ってくる溢れんばかりの情報をネタにオバちゃんトークを繰り広げている加奈子だが、何だか今日はそういう話をする気にはなれなかった。
一体何を話そうかと頭の中で話題になりそうなものを一生懸命探してみるのだが、生活範囲が狭いだけに、そんなものが見つかるはずがない。
「私、こうやって考えると、何か家の事やってるだけですね。」
「親孝行ないい娘じゃない?」
「でも、親は早くお嫁に行って欲しいみたいで。」
口に出してしまった後で、加奈子はとんでもないことを言ってしまったことに気づく。
好きな相手にそんな事を言うおバカがどこにいるのだろう。
相手を困らせるだけなのに。加奈子は赤くなったり青くなったりと顔色を目まぐるしく変えながら、自分の愚かさを後悔していた。
「へえ、それで加奈子ちゃんも早くお嫁に行きたいの?」
おっと、これは天然ボケか?それともまさか加奈子の気持ちに全く気付いていない?このドライブもただのお馴染みさんに対するサービス?
「そ、そりゃ私も普通にお嫁には行きたいですよ。」
加奈子は克己に直接思いを伝えてはいなけれど、これまでけっこうあからさまに好きだというアピールはしてきたつもりだ。
それが克己には全く届いていなかったのだろうか。
だとしたら、このドライブはデートではなくなる。
夏希に選んでもらった服を身につけてはみるものの、とても落ち着いてはいられない。
髪形やメイクを何度もチェックしてみるが、余り気合が入りすぎても恥ずかしいけれど、いつもとはチョット違った雰囲気にして克己との関係を前進させたいという願望もある。
そんなことをしているうちに予定の時間になっていた。
「克己さんがいらしたわよ~。」
1階から美和子のウキウキした声がする。
もしかすると加奈子よりも興奮しているかと思うほど、美和子も舞い上がっている。
そんな母の姿を見て美和子は逆に冷静さを取り戻すことができた。
「じゃあ、行ってきます。」
母に見送られて玄関のドアを開けると、克己の愛車であるポルシェのカブリオレが横づけされている。
克己は紳士らしく助手席のドアを開けてくれた。
「行先は僕が決めていい?」
「は、はい。」
すっかりかしこまった加奈子に、いつも通りにしてよと克己は言った。
「そ、そんなの無理…。」
加奈子はすっかり一人の恋する女の子になってしまっている。
「僕はいつもの加奈子ちゃんとドライブしたいんだけどな?無理?」
克己にそう言われると、変に硬くなってせっかくのドライブが楽しめないなんてもったいない。
「や、やってみます。」
加奈子が鼻息あらく答えると、克己は愉快そうに笑った。
「その調子!今日はね、僕の知り合いがやってる海辺のレストランまで行こうと思ってるんだ。彼の腕は確かだし、新鮮な魚介類が手に入るからね、きっと気に入ると思うよ。」
克己は常連である加奈子の食の好みもほぼ把握している。
加奈子が肉料理よりも魚介好きなのももちろん知っていて、今日のプランにしてくれたのだろう。
そんな克己の心遣いに、加奈子はまたしても惚れてしまうのだった。
「克己さんドライブよく行くんですか?」
加奈子はそれとなく探りを入れてみる。
「ああ、若い頃は夜な夜な走りに出てたけど、今は休みの日の気分転換程度だよ。」
などと軽くかわされてしまう。
「加奈子ちゃんは休みの日は何してるの?」
「わ、私ですか。」
これと言って自慢できるような趣味もないし、気が付けば家業の喫茶店の雑用で休みがつぶれることも多い。
「これと言って何もしてないです。」
「若い子が勿体ないな~。」
お店では喫茶店のお客さんが持ってくる溢れんばかりの情報をネタにオバちゃんトークを繰り広げている加奈子だが、何だか今日はそういう話をする気にはなれなかった。
一体何を話そうかと頭の中で話題になりそうなものを一生懸命探してみるのだが、生活範囲が狭いだけに、そんなものが見つかるはずがない。
「私、こうやって考えると、何か家の事やってるだけですね。」
「親孝行ないい娘じゃない?」
「でも、親は早くお嫁に行って欲しいみたいで。」
口に出してしまった後で、加奈子はとんでもないことを言ってしまったことに気づく。
好きな相手にそんな事を言うおバカがどこにいるのだろう。
相手を困らせるだけなのに。加奈子は赤くなったり青くなったりと顔色を目まぐるしく変えながら、自分の愚かさを後悔していた。
「へえ、それで加奈子ちゃんも早くお嫁に行きたいの?」
おっと、これは天然ボケか?それともまさか加奈子の気持ちに全く気付いていない?このドライブもただのお馴染みさんに対するサービス?
「そ、そりゃ私も普通にお嫁には行きたいですよ。」
加奈子は克己に直接思いを伝えてはいなけれど、これまでけっこうあからさまに好きだというアピールはしてきたつもりだ。
それが克己には全く届いていなかったのだろうか。
だとしたら、このドライブはデートではなくなる。
0
お気に入りに追加
349
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる