兄と妹のイケナイ関係

星野しずく

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兄と妹のイケナイ関係.34

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「今日の事、将貴には内緒ね。あんなことしたの知ったら、シスコンのあいつのことだから、俺、殺されちゃうかもしれないからさ。」

「あんなことってどんなことだ。」

 背後から、ただならぬ気配とともに、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 振り返ると、そこには将貴が立っていた。

「おい、和哉、ちょっとこっちに来てもらおうか。」

 呆然と立ち尽くすみのりを置き去りにして、二人はその場から立ち去る。

「みのりはちゃんと塾に行くんだぞ。」

 将貴はしっかり釘を刺していく。

 取り残されたみのりは、しばらく呆然と立ちつくしていたが、何とか気を取り直して働かない頭のまま塾へと向かった。

「何でお前がここにいるんだよ。」

 高梨は不機嫌そうに言う。

「それは、こっちの台詞だよ。お前、みのりに何をした。」

「べっつにー。俺のお気に入りの展望台に連れて行ってあげただけだよ。」

「それで、そこで何をしたんだ。」

「一緒に、景色を眺めただけだよ。」

「嘘をつくんじゃない。」

「なんのことだよ。だいたい、何でお前があんなとこにいるんだよ。」

「お前の取り巻きの女の子達が親切に教えてくれたんだよ。これから、年下の可愛い子とデートだからってカラオケの誘いを断られたってな。」

「くそっ、余計なことを。」

「ということで、お前の計画はバレバレだったから、ここで待ってたって訳。女の子には優しいお前が、みのりを塾に遅刻させる様な事はないと思ったしね。」

「何でもお見通しって訳か。」

「だから、白状してもらおう。まあ、お前が言わないなら、みのりのから聞くことになるけど。あいつを苦しめたくないしなー。」

 チクリと痛いところを突いて来る将貴の心理作戦が思考回路の単純な高梨は苦手だった。

 高梨は言い訳するのも面倒になって、つい本当の事を口にしてしまう。

「ちょっと、あいさつのキスをしただけだよ。」

「なんだって?」

「だから、軽くキスしただけだよ。」

 その瞬間、高梨の右頬を、将貴が思い切り殴りつける。

「軽くってなんだよ。お前、あいつが俺の妹だってわかってるだろう。」

「いってーな。そんなこと分かってるよ。だけど、お前のもんじゃねえじゃん。何で俺殴られなきゃいけない訳?」

 高梨にそう言われて、将貴は答えに詰まる。

(みのりと俺は付き合っているけど、他人から見たらただの兄妹だ。兄妹というだけでは不十分だろうか…。)

「俺の大事な妹を、お前みたいな軽い男のおもちゃにされるのを黙って見てる訳ないだろう。」

「何で、おもちゃにするって決めてんの。俺が本気だったらいい訳?」

(それは、それで困るな…。)

 将貴は答えに窮する。

「お前が女の子に本気になった事なんて、今まであったのかよ。」

「う~ん、そう言われると…。無いかな。」

「ほら見ろ、そんなやつにみのりを好きに資格はない。だいたい、お前は女の子に不自由なんてしてないだろうが。」

「まあ、そうなんだけど。だからかな、俺に簡単になびくような女の子には飽きちゃたんだよね。みのりちゃんは、俺がいくらアプローチしても全然興味ないって感じで新鮮なんだ。」

「そんな理由でキスとかしてんじゃねーよ。今度手出しやがったら、ぜってー許さねーからな。」

「ふうん。シスコンもここまで来ると病気だな。まあ、お前が何と言おうと、みのりちゃんが俺のこと好きになれば文句ないだろう?ということで、俺はまだあきらめてないから。」

 そう言い残すと高梨はバイクにまたがり走り去っていった。

「くそっ、和哉のやつ何考えてんだ。」

 将貴は黒木君に続き、次々と現れるライバルに頭を抱えた。



 そんな事があったこともあり、将貴はみのりの塾が終わるまで近くのファミレスで時間をつぶしていた。

 みのりの塾が終わる時間に合わせてファミレスを出ると、塾のそばでみのりを待っていた。

 塾から出てきたみのりは、将貴が立っているのを見て気まずそうにしている。

「みのり、一緒に帰ろう。」

「う、うん。」

 そう答えたものの、高梨君とのことをどう言っていいのか、言葉が出てこない。

「話は、高梨から全部きいたよ。」

「えっ。」

「あいつ、隠し事とかできねーから、バッカみたいにあらいざらい話してくれたよ。」

「そ、そうなんだ…。」

 みのりは、自分の不注意であんなことになってしまい将貴に怒られる事を覚悟していた。

 しかし、将貴はみのりが不注意であることより、高梨の女性に対する自信が気がかりだった。

 あれでは、誰が何と言おうと、みのりに対するアプローチをやめる気はないだろう。

(くそっ、俺のみのりに勝手にキスなんかしやがって、今回はあれで済んだけど、次は何をしてくるか分かったもんじゃない。あ~あ、みのり、お前は自分の可愛さをもっと自覚してくれよ。俺もいつもお前に張り付いている訳にもいかないし…。ほんとにどうしたものか…。)

 将貴は途方に暮れてしまった。

 みのりを余り怯えさせるのも問題だが、自分がいかに魅力的かという事はもう少し自覚してもらいたい。
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