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兄と妹のイケナイ関係.32
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冬休みになり、二人ともいよいよ本格的に受験モードに入る。
将貴はクリスマスの余韻など全く感じさせることなく、自分のペースで黙々と受験勉強を進めていた。
みのりの方はといえば、あの日のことが余りに鮮烈すぎて頭から離れない。
家の中で将貴と顔を合わせると、あの日のことがリアルに思い出され、しばらくは勉強が手につかないといった困った状況だった。
みのりには塾に行くという選択肢があったが、黒木君と一緒の塾という理由から、将兄に行くなと言われている。
しかし、塾自体は、みのりに合っていたし何より、将兄と二人っきりで同じ屋根の下にいては、とても勉強に集中出来そうにない。
将兄の言いつけを破ることになってしまうけど、黒木君と会わないように、それとなく講師の先生にクラスを変えてもらって塾に行くことにした。
(でも、将兄には何て言おう。私の嘘はすぐばれるしな~。必死で勉強しなければならない理由を言う訳にはいかないし。困ったな~。)
とりあえず、朝顔を合わせてしまうと、どこに行くのか聞かれてしまうから、うんと早く起きて、塾の時間まではファミレスで友香に付き合ってもらって一緒に勉強する。そして、塾では冬季講習を受けて、夕食に間に合うように帰るという生活パターンで出来るだけ将貴と顔を合わさないように過ごしていた。
冬休みは2週間程度の短い休みだ。毎日忙しく過ごしているうちに、明日はもう大晦日だった。
両親も年末の休みに入っており、大晦日ぐらいはゆっくり過ごしてはどうかと言われ、久しぶりに家族で食卓を囲むことになった。
みのりは将貴と一緒に食事をすることは、クリスマス以来避けていたので余計に緊張してしまう。
将貴はといえば、全く普段と変わらない調子で、みのりに声をかけて来る。
「どうだ、勉強の方はうまくいってるか?」
「うっ、うん。なんとか。」
「何とかじゃだめだろう。俺がいつでも見てやるから、分からなかったら言うんだぞ。」
将貴は何食わぬ顔で言ってのける。
(く~っ!何で将兄だけ平気なの~?私だけドキドキして、バカみたい。)
「わかってる!」
ちょっと怒ったようにみのりが言うと、
「ご機嫌ななめだな。やっぱりちょっと息抜きが必要だな。どうだ、今夜は一緒にゲームでもするか?」
などと気安く言ってくる。
(そっ、そんなこと出来るわけないでしょう!どうせゲームだけで済む訳ないんだから。)
などと、勝手に想像を膨らませたみのりは、
「いい、いいよ、今日は早く寝るから。寝たら元気でるし。」
そう言って、将貴の誘いを必死に断った。
「なんだよ~。付き合い悪いな~。せっかく優しい兄貴が疲れた妹を癒してやろうとしてるのに。」
(将兄は絶対に私のことをからかって楽しんでる。)
頭にきたみのりは、それ以上将貴に付き合うことなく自分の部屋に戻ると、ベッドにもぐり込み眠ってしまった。
目を覚ますともう年が明けていた。
シャワーを浴びようと1階に下りていくと、将貴がリビングのソファでテレビを見ていた。
「おっ、起きたか。明けましておめでとう、みのり。」
「お、おめでとう。将兄。」
みのりは少し気まずそうに答える。
「なあ、今日初詣一緒に行くか?」
「う、うん。」
昨日はちょっと子供みたいだったと反省し、素直になろうと心を入れ替える。
お母さんの手作りのおせちとお雑煮をお腹一杯食べた後、二人で初詣に出かける用意をしていると、
「みのり、お着物着ていく?」
そうお母さんに聞かれて、
「えっ、いいの?」
みのりは嬉しそうに答える。
「こんな時じゃないと、なかなか着せてあげられないから。」
そう言うと、祖母に買ってもらってなかなか着る機会がなかった着物を出してくる。
薄い水色に小花が散りばめられた小紋はみのりのお気に入りだ。
「うわ~、やっぱりかわいい。早く着せて、お母さん。」
「わかったから、和室にいきましょ。」
「は~い。」
みのりは出かける前からはしゃいでいる。
着付けが終わり、部屋から出たみのりは将貴のもと急ぐ。
「ねえ、将兄、どう?」
「おお、まさに孫にも衣装だな。」
「えl、何それ~。ひど~い。」
「うそうそ、すっごく似合ってるよ。」
将貴は平静を装ってはいるものの内心みのりの変貌ぶりに目を奪われていた。
(ほんとにこいつは。自分がどんだけ魅力的か全く自覚がなくて困る。着飾るのはいいけど、外に連れ出すのは気が重いよ。悪い虫を追っ払うのが大変だ。)
「それじゃ、そろそろ出かけようか。」
両親は親戚におよばれのため、みのりと将貴は二人で初詣に出かける。
「なあ、みのり。あんまり長居はしないからな。着慣れない着物のせいで具合が悪くなると困るからな。」
そうは言ったものの、他の男達にみのりを見せたくないというのが本当の理由なのだが…。
初詣で訪れた神社は夏に花火大会が行われたあの場所だ。
この辺りでは一番大きな神社のため、毎年多くの参拝客が訪れる。
もみくちゃにされながら歩いていると、どこからか声がかかる。
「よう、将貴。おめでとー。」
声の主はみのりの知らない男の人で、ニコニコしながらこっちに向かって手を振っていた。
「よお、和哉。お前も来てたのか。」
将貴の知り合いらしい。
「なんだ、なんだ。かわいい子連れちゃって。お前受験生って事忘れてないか?」
そうからかわれると将貴は自慢げに答える。
「悪いかよ。俺様は余裕だから、いーんだよ。」
「へー、それはお見それしました。」
「なんてね。こいつは俺の妹のみのり。」
「こっちは高校で同じクラスの、高梨和哉。」
将貴は、二人をそれぞれ紹介する。
「うっそだろー。何でお前の妹がこんなに可愛いんだよ。」
「うっせーな。悪いかよ。」
「いや、悪かないけど、可愛すぎるだろ。」
そんなに褒められて、みのりはもう茹でダコの様に真っ赤だ。
「みのりちゃんって言うんだ。名前も可愛いなー。ねえ、みのりちゃん。よかったら、俺の彼女にならない?」
かなり軽い性格の様で、あいさつ代わりのお誘いを受けるが、将貴がバッサリと言い放つ。
「おいおい、お前は女に不自由してないだろ。中学生にまで手を出す必要ある?」
「えー、中学生なの?着物きてるせいかな、大人っぽく見えるから、もう高校生かと思ったよ。」
「ま、そういうことだから。女のケツばっか追っかけてないで、神様に志望校落ちない様ちゃんとお願いしといた方がいいんじゃないの。」
「ははっ、そりゃそうだ。」
そう言いいながら、高梨君は境内とは反対側に歩き出す。
「なんだあいつ。マジ落ちるぞ。」
将貴は笑いながらつぶやいた。
将貴はクリスマスの余韻など全く感じさせることなく、自分のペースで黙々と受験勉強を進めていた。
みのりの方はといえば、あの日のことが余りに鮮烈すぎて頭から離れない。
家の中で将貴と顔を合わせると、あの日のことがリアルに思い出され、しばらくは勉強が手につかないといった困った状況だった。
みのりには塾に行くという選択肢があったが、黒木君と一緒の塾という理由から、将兄に行くなと言われている。
しかし、塾自体は、みのりに合っていたし何より、将兄と二人っきりで同じ屋根の下にいては、とても勉強に集中出来そうにない。
将兄の言いつけを破ることになってしまうけど、黒木君と会わないように、それとなく講師の先生にクラスを変えてもらって塾に行くことにした。
(でも、将兄には何て言おう。私の嘘はすぐばれるしな~。必死で勉強しなければならない理由を言う訳にはいかないし。困ったな~。)
とりあえず、朝顔を合わせてしまうと、どこに行くのか聞かれてしまうから、うんと早く起きて、塾の時間まではファミレスで友香に付き合ってもらって一緒に勉強する。そして、塾では冬季講習を受けて、夕食に間に合うように帰るという生活パターンで出来るだけ将貴と顔を合わさないように過ごしていた。
冬休みは2週間程度の短い休みだ。毎日忙しく過ごしているうちに、明日はもう大晦日だった。
両親も年末の休みに入っており、大晦日ぐらいはゆっくり過ごしてはどうかと言われ、久しぶりに家族で食卓を囲むことになった。
みのりは将貴と一緒に食事をすることは、クリスマス以来避けていたので余計に緊張してしまう。
将貴はといえば、全く普段と変わらない調子で、みのりに声をかけて来る。
「どうだ、勉強の方はうまくいってるか?」
「うっ、うん。なんとか。」
「何とかじゃだめだろう。俺がいつでも見てやるから、分からなかったら言うんだぞ。」
将貴は何食わぬ顔で言ってのける。
(く~っ!何で将兄だけ平気なの~?私だけドキドキして、バカみたい。)
「わかってる!」
ちょっと怒ったようにみのりが言うと、
「ご機嫌ななめだな。やっぱりちょっと息抜きが必要だな。どうだ、今夜は一緒にゲームでもするか?」
などと気安く言ってくる。
(そっ、そんなこと出来るわけないでしょう!どうせゲームだけで済む訳ないんだから。)
などと、勝手に想像を膨らませたみのりは、
「いい、いいよ、今日は早く寝るから。寝たら元気でるし。」
そう言って、将貴の誘いを必死に断った。
「なんだよ~。付き合い悪いな~。せっかく優しい兄貴が疲れた妹を癒してやろうとしてるのに。」
(将兄は絶対に私のことをからかって楽しんでる。)
頭にきたみのりは、それ以上将貴に付き合うことなく自分の部屋に戻ると、ベッドにもぐり込み眠ってしまった。
目を覚ますともう年が明けていた。
シャワーを浴びようと1階に下りていくと、将貴がリビングのソファでテレビを見ていた。
「おっ、起きたか。明けましておめでとう、みのり。」
「お、おめでとう。将兄。」
みのりは少し気まずそうに答える。
「なあ、今日初詣一緒に行くか?」
「う、うん。」
昨日はちょっと子供みたいだったと反省し、素直になろうと心を入れ替える。
お母さんの手作りのおせちとお雑煮をお腹一杯食べた後、二人で初詣に出かける用意をしていると、
「みのり、お着物着ていく?」
そうお母さんに聞かれて、
「えっ、いいの?」
みのりは嬉しそうに答える。
「こんな時じゃないと、なかなか着せてあげられないから。」
そう言うと、祖母に買ってもらってなかなか着る機会がなかった着物を出してくる。
薄い水色に小花が散りばめられた小紋はみのりのお気に入りだ。
「うわ~、やっぱりかわいい。早く着せて、お母さん。」
「わかったから、和室にいきましょ。」
「は~い。」
みのりは出かける前からはしゃいでいる。
着付けが終わり、部屋から出たみのりは将貴のもと急ぐ。
「ねえ、将兄、どう?」
「おお、まさに孫にも衣装だな。」
「えl、何それ~。ひど~い。」
「うそうそ、すっごく似合ってるよ。」
将貴は平静を装ってはいるものの内心みのりの変貌ぶりに目を奪われていた。
(ほんとにこいつは。自分がどんだけ魅力的か全く自覚がなくて困る。着飾るのはいいけど、外に連れ出すのは気が重いよ。悪い虫を追っ払うのが大変だ。)
「それじゃ、そろそろ出かけようか。」
両親は親戚におよばれのため、みのりと将貴は二人で初詣に出かける。
「なあ、みのり。あんまり長居はしないからな。着慣れない着物のせいで具合が悪くなると困るからな。」
そうは言ったものの、他の男達にみのりを見せたくないというのが本当の理由なのだが…。
初詣で訪れた神社は夏に花火大会が行われたあの場所だ。
この辺りでは一番大きな神社のため、毎年多くの参拝客が訪れる。
もみくちゃにされながら歩いていると、どこからか声がかかる。
「よう、将貴。おめでとー。」
声の主はみのりの知らない男の人で、ニコニコしながらこっちに向かって手を振っていた。
「よお、和哉。お前も来てたのか。」
将貴の知り合いらしい。
「なんだ、なんだ。かわいい子連れちゃって。お前受験生って事忘れてないか?」
そうからかわれると将貴は自慢げに答える。
「悪いかよ。俺様は余裕だから、いーんだよ。」
「へー、それはお見それしました。」
「なんてね。こいつは俺の妹のみのり。」
「こっちは高校で同じクラスの、高梨和哉。」
将貴は、二人をそれぞれ紹介する。
「うっそだろー。何でお前の妹がこんなに可愛いんだよ。」
「うっせーな。悪いかよ。」
「いや、悪かないけど、可愛すぎるだろ。」
そんなに褒められて、みのりはもう茹でダコの様に真っ赤だ。
「みのりちゃんって言うんだ。名前も可愛いなー。ねえ、みのりちゃん。よかったら、俺の彼女にならない?」
かなり軽い性格の様で、あいさつ代わりのお誘いを受けるが、将貴がバッサリと言い放つ。
「おいおい、お前は女に不自由してないだろ。中学生にまで手を出す必要ある?」
「えー、中学生なの?着物きてるせいかな、大人っぽく見えるから、もう高校生かと思ったよ。」
「ま、そういうことだから。女のケツばっか追っかけてないで、神様に志望校落ちない様ちゃんとお願いしといた方がいいんじゃないの。」
「ははっ、そりゃそうだ。」
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