兄と妹のイケナイ関係

星野しずく

文字の大きさ
上 下
2 / 39

兄と妹のイケナイ関係.02

しおりを挟む
 中学ではバレー部で3年間汗を流したみのりも、夏休みの地区大会敗退を最後に卒部し、他の部も卒部を機に受験一色に変わる。

 夏休みは図書館で勉強する子も多いけれど、みのりは将貴も受験生ということもあって、あわよくば勉強を見てもらえないだろうかという淡い期待を抱いていた。

 そして、普段は一緒にいる時間も限られることから、堂々と将貴と一緒にいられる夏休みはありがたすぎる環境だった。

 みのりと将貴は朝食を終え二階に上がり、それぞれの部屋でお勉強タイムとなるはずだった。

 みのりは、勉強に取り掛かろうとしてはみたものの、すぐそばにいる将貴のことが気になってしょうがない。

 こんな調子では勉強は一向にはかどらないことを悟ったみのりは、一か八か将貴に勉強を教えてもらう作戦に討って出ることにした。


「しょうにぃ~、数学分かんないとこあるから教えて~。」

 みのりは甘えた口調で将貴の部屋をノックする。

 みのりの部屋と将貴の部屋は二階にあり、廊下を挟んで向かい合わせの位置にある。

 よくある日本の一戸建ての造りで、主寝室やリビング、キッチンやお風呂は一階だ。

 夏休みは学生だけの特権で、父も母も仕事で日中は二人きりだ。

 これまでの長い休みは二人とも部活動のため、家にいることはほとんどなかった。

 だから、これがはじめての二人だけで迎える夏休みなのだ。

「ねぇってば~。」

 と言いながらドアを開けると、将貴はベットでいびきをかいて眠っている。

「なんだ~。また寝てるの~?」

 みのりはベッドの端に腰掛ける。


 兄妹といえど、お互いの顔をまじまじと見ることはあまり無い。

 特にお互い思春期を迎えてからはそうだった。

 久しぶりに間近で見る将貴の顔。

 当然のことながら兄妹といえど似ている訳はなく、くりっとした黒目、腰まで伸びた髪も黒く、典型的な日本人といった容姿のみのりに比べ、将貴は色素が薄いのか目の色は薄茶で髪も染めていないのに薄い茶色で細く柔らかい。

 どこかで外国の血が入ったのかと思う程で時々ハーフと間違えられるらしい。

 陸上部だった彼は、程よく日焼けした身体に均等にしなやかな筋肉が付いている。

 そんな兄の体をこの時とばかり舐めるように見つめる。

「きれい…。」

 思わずそんな言葉が漏れてしまった。

 そして、みのりの頭の中によからぬ考えが浮かぶ。

 (どう見ても将兄はぐっすり眠っている。今ならキスできる!)

 将貴が目を覚ましたら大変な事になるその行為を、みのりは、あまり深く考えることも無く行動に移してしまった。

「んんっ…。」

 その直後、将貴が目を覚ます。


「あれっ、みのり?こんなとこでなにしてんの?」

「数学教えてって言っても返事が無いから、部屋に入ってみたら、いびきをかいて寝てるんだもん。ちゃんと勉強しなきゃだめでしょ。」

 そう言われ、将貴はだるそうに起き上がる。

「あぁ~っ、家ってのはどうしても気がゆるんでだめだな~。ファミレスでも行くかな。」

「えっ、だっ、だめだよ。私、教えてもらいたいところあるし、一緒に勉強したらだらけないし。だから、お願い!」

 必死に頼む妹に将貴は条件を出した。

「そうだな~。俺の言うことちゃんと聞くなら、一緒に勉強してやってもいいよ。」

「うん。わかった。ちゃんと言うこときくから。」

 暢気に答えるみのりに、不敵な笑みを浮かべながら将貴は言った。

「よし、じゃあ、さっそく始めよう。」

 将貴はベッドから立ち上がると窓側にあるローテーブルに移動する。

「数学の問題が分からないんだっけ。持って来いよ。」

「うっ、うん。持ってくる。」

 みのりはウキウキする気持ちを悟られないよう緩んだ口元を必死にかくしながら、部屋に戻って問題集とペンケースを持ってくる。

「どれ、どこだ。」

 将貴が顔を近づけてくる。

 男臭い香りと(と言っても決していやな匂いじゃなくて、みのりにとっては何とも言えない色気のある香りだ)、高校生になってから付け始めた柑橘系のコロンがふわっとみのりの鼻をくすぐる。

 それだけで、免疫の少ないみのりはドキドキしてしまう。

 将貴は問題を近くで見ようと、みのりの横にどっかと座り直す。

(えぇー。ちっ、近い。)

 みのりは説明を始める将兄の声なんか全く耳に入らなくなっていることを悟られないよう必死だった。

(これじゃあ何のために教えてもらってるのか分からないよー。)

 そんな嘆きは自分勝手なもので、将兄がそばにいるだけで、普通じゃいられなくなるのは自分が一番分かっていたはずなのに…。


 そんな事を考えていると、何か温かいものが唇に触れた気がした。

 ハッと我に返ると、将兄の顔がすぐそばにある。

「えっ、いっ、今、何したっ?」

「んっ?キスだけど。」

 耳を疑うような言葉が将兄の口から飛び出した。

「な、何してんのーっ!!」

 みのりは真っ赤になって口を押さえる。

「だって、さっき、みのり俺にキスしたでしょ。だから、そういうことも教えて欲しいのかな~と思って。」

 いつもの意地悪なんだと思い、赤くなった自分が余計に恥ずかしくなる。

 でも、胸は異常な程に高鳴って、普通に振舞うのが難しくなる。

「そっ、そんな勉強は、将兄から教えてもらわなくても結構です。」

 みのりは、うれしさに顔がゆるみそうなのをこらえ、わざと怒ったふりをする。

「へぇ~、そういうこと教えてくれる相手いるんだ。」

 馬鹿にしたように将兄は言う。

「ばっ、ばかにしないでよっ!そんな相手くらいちゃんといるんだから。」

「ふ~ん。知らなかったな。みのりもそんな年頃になったか。」

 えらそうに言う将兄に、ムカつきながらもこれ以上話すと墓穴を掘りそうなので、そこは黙ってスルーした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...