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誰かイケメン達を止めてくれませんか!!.19

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 家について、玄関を開け、二階にあがり、自分の部屋のドアを開けた。

 いた。

 今日はもういらっしゃった。

 今は流行りの2・5次元ミュージカルの人気俳優 セシルくんだ。



「会いたかったよ」

 いきなりですか?初対面ですけど。

 みゆうは憧れのセシルくんに会えたことはもちろん嬉しい。

 だけど、さすがにもう疲労がハンパないのだ。

 彼らがみゆうの部屋を訪れるたびに、彼らは仕事に穴を空けてくる。

 翌日のニュースでその事実を知るたびに、自分の経験したことは幻ではなかったのだと半分くらいは思う。

 だけど、映画やドラマじゃあるまいし、そんなテレポーテーションとか信じられる訳ないし。

 そうなると、今まさに起こっているこの事象も、いったい何なのか分からないのだ。

 だけど、実際に彼らは話すことも触れることも出来る。

 いや、少なくとも、そう感じることは事実だ。

「僕のミュージカルのパートナーの衣装を着てみてくれないか」

 セシルくんはきらびやかな刺繍が施されたドレスを手にしていた。

「いいんですか?」

 みゆうはそのあまりの豪華さにひるんでしまう。

「もちろん、そのために持ってきたんだ」

 セシルくんはそう言うと、すばやくみゆうのそばに移動した。

 そして、目に止まらぬ早さでみゆうの着ている制服を脱がしてしまった。

「きゃっ、きゃあああ~っ!!!」

 みゆうが気づいた時にはもう下着だけにされていた。

 そうだ、舞台俳優は早や着替えの名人なのだ。

 う、うう、こんな地味な下着がバッチリ見られてしまった。

 みゆうはショックで泣きたくなる。

 しかしセシルくんはそんなことにはおかまいなく、みゆうにその豪華なドレスを着せていく。

 あっという間に着付けが終わると、そのあまりの重量でみゆうは立っているのがやっとだった。

「ほら、思った通り。すごく似合う」

 セシルくんはみゆうの体を鏡の方にくるりと向けた。

「え、ええ~っ!!これが私?」

 いつの間にかカツラまでつけられている。

 こう言ってはなんだが、まんざらでもないと思ってしまった。

 女の子なら一度はこんなドレスに憧れるだろう。

 それをセシルくんに着せてもらえるなんて、こんな贅沢なことがあっていいのだろうか。

 そういうセシルくん自身も、例のごとく舞台衣装のままだ。
 
 サラサラの金髪、彫が深く色白の顔、吸い込まれるような瞳はまさに王子様そのものだ。


 その美しい顔立ちは豪華な衣装にまったく負けていない。

「ほら、手を出して」

 セシルくんに言われるまま、みゆうは手を出した。

 その手を取ると、セシルくんはみゆうの腰に手を回した。

 セシルくんのスマホからミュージカルの音楽が流れ始める。
 
 セシルくんに身を任せ、みゆうはぎこちないながらもダンスをしていた。

 あらためて至近距離で見るセシルくんは、スッと通った鼻梁にたっぷりとまつ毛をたたえた形の良い瞳、ほどよい厚みの唇はセシルくんのセクシーシンボルだ。

 やっぱりめちゃくちゃカッコイイ。

「ダンス上手だね」

 耳元でささやかれ、腰が砕けそうになる。

 握られている手、腰に回されている手、どちらもとんでもないことだ。

 セシルくんがカッコいいのももちろんだけど、こんなお姫様みたいな扱いを受けていることは、夢を見ているように幸せだ。

 しかし、そんな幸せな時間は突然終わりを迎える。

「僕、そろそろ帰らないといけないんだ」

 ああ、例のパターンだ。

 いつものように舞台の最中か、もしくは練習の最中に抜け出してきているのだろう。

 セシルくんはドレスを着せた時と同じスピードでみゆうを着替えさせた。

 みゆうが恥ずかしがっていることなどおかまいなしだ。

 セシルくんは名残惜しそうに、みゆうから離れると衣装を手に部屋を出て行った。

 取り残されたみゆうは、慣れてきたとはいうものの、やはりそのギャップにしばらく呆然とする。

 セシルくん。カッコよかった。

 一度だけ見に行ったことがある2・5次元ミュージカル。

 そのキャストの中でもひときわ輝いていた。

 それ以来すっかりセシルくんのファンになった。

 学生の身分では、そうそうミュージカルを見に行けるわけではない。

 だから、普段はDVDを見たり、ツイッターをチェックしたり、ツイキャスで彼の声を聴くのが楽しみだった。

 そんな憧れのセシルくんに会えた、はず…。
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