87 / 96
それでも俺が好きだと言ってみろ.87
しおりを挟む「将来のことって・・・、それはやっぱり伊沢さんと結婚したいってことですか?」
「なんでそうなるんだよ!俺にとって伊沢さんはずっと憧れの研究者なんだ。そりゃあ、伊沢さんに対する気持ちが憧れなのか恋なのか分からずに混乱してた時期はあった。だけど、今はもう恋なんかじゃなかったって分かってる。それに、俺はあんな優秀な人にはふさわしくない事も分かってる」
「えっ・・・、だって伊沢さんが結婚して、妊娠したときはそのショックで体調を崩して・・・、それでセックス依存症になったって・・・。それは嘘だったんですか?」
「誰だよそんなこと言った奴は!俺は伊沢さんが研究者としての仕事を諦めならなくなることがショックだったんだよ。子どもが何人も生まれたら、彼女の人生の大半は子育ての時間に奪われる。女だからっていう理由だけで、そんな理不尽な状況に追い込まれるのが我慢ならなかった。それだけだ・・・」
「それだけ・・・」
和香はそれまで緊張していた体が急激に弛緩してその場に座り込んだ。
「伊沢さんとはそういうことがしたかったわけじゃない。自分が目標としてた人が目の前から消えて、その虚無感から精神的におかしくなっただけだ。たぶん酒でもギャンブルでもなんでもよかったんだろう。俺の場合は一時的にセックスに溺れただけで」
「伊沢さんのことは・・・、本当に好きっていう気持ちはないってことなんですね?」
「しつこい奴だな!畏れ多くてそんな気になれねえよ」
「・・・分かりました」
「それにしても、俺のことばっかり根掘り葉掘り聞きやがって、お前はどうなんだよ」
「わ、私ですか・・・」
「お前の元カレは俺なんかよりよっぽどイカレてるぞ。どうしてくれるんだ?」
「そ、それは・・・、本当にすみません」
「で、お前は俺の色んな事を聞いてどうしたいんだよ」
「どうしたいんでしょう・・・?」
「なんだそれ?自分の気持ちも分からないくせに、偉そうに人に色々聞いてんじゃねえよ」
「・・・すみません」
「お前・・・、この間、俺が来いって言った時、どうして断った?」
「・・・もう先が見えないことは辞めようと思ったからです」
「先が見えない?どういう意味だ・・・」
「それは・・・、桜庭さんは伊沢さんのことが好きで、自分なんかもう必要ないっていう意味です」
「だから、それは違うって言ってるだろう!」
「そんなこと知りませんでしたから!私は、もうずっと、桜庭さんのことで頭がいっぱいで、だから、桜庭さんが伊沢さんを諦めないのなら、もう自分はこれ以上桜庭さんとそういう関係を続けるのは耐えられないって思ったんです・・・」
「俺のことで頭がいっぱいって・・・」
「知りません・・・、桜庭さんにはセフレがいて、植松さんがいて、そのうえ伊沢さんのことが好きで・・・、それを考えるたびに、私は醜いくらい嫉妬して、でも桜庭さんには嫌われたくなくて・・・、でももうそんなことにもホトホト疲れてしまったんです・・・」
「何勝手に決めつけて・・・。えっ、嫉妬って・・・」
「そうですよ・・・、バカみたいですけど、桜庭さんにしてみたら性欲のはけ口でしかないのに、私は他の女性たち全てに嫉妬するようになったんです。もう、自分はおかしくなったと思いました。でも、本当なんですから仕方ないんです。だから、こんなおかしな自分はもう会社を辞めてもいいから、桜庭さんとの関係を終わりにしなければと思いました」
「はぁ~、お前、自分で勝手に暴走するタイプだな・・・」
「何とでも言ってください・・・。もう、私の人生はここで一度終わりなんです。また一から仕事を探します・・・。やっと採用された会社を去るのは辛いですが、仕方ありません」
0
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる