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それでも俺が好きだと言ってみろ.77

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 居酒屋からの帰り道、スマホにメッセージが届いた。

 一つは真から、もう一つは桜庭からだった。

 真からは「これから会えない?」とあり、桜庭からは「今すぐ来い」とあった。



 早乙女と話す前だったら、迷わず桜庭のところに飛んでで行っただろう。

 しかし、正直今の和香は桜庭に対して疲れ切っていた。



 求められるのは確かに嬉しい。

 だけど、先の見えないその関係を落ち着いて見つめ直したとき、もう一歩も前に進めない様な感覚に襲われた。

 反対に真は、つきあっていた頃には気がつかなかった一面を見ることが出来きた。



 真なら、こんなダメダメな自分に喝を入れてくれるかもしれない。

 そんな期待が和香の背中を押した。



 桜庭には「どうしても用があっていけません。すみません」と返事をした。

 真には「今から家に帰るから、来られる?」と返した。

 桜庭からは「クソ野郎!役立たずめ」という罵倒が返ってきたがそれっきりだった。



 会社をクビになるのは嫌だし、現実を突きつけられるのは死ぬほど怖いが、これで今の桜庭にとって自分はどれほど価値があるのかが分かるかもしれない。

 真からは「すぐ行くよ」と返ってきた。



 自分もすぐ帰らないと・・・。

 和香は帰り道を急いだ。



 アパートについて少しすると、チャイムが鳴った。

 真であることを確認するとドアを開けた。

「どうぞ」

「おじゃまします」



 真がわざわざ訪ねてきたのは、桜庭とのことが関係していることは確実だろう。

 でも、不思議と真は和香の味方の様な気がしていた。

 きっと頭ごなしに説教したりはしないだろうと・・・。



「あの、この間は私のために・・・、ありがとう」

「そんなこと言わなくていいよ。僕が勝手に余計なことしたんだから」

「でも・・・」

 真は本当に自分のことを心配して行動してくれたのだ。
 
 勝手な理由で別れ話を持ち出したのは和香なのに。



「ねえ、単刀直入に聞くけど、和香ちゃんは、あの人のこと好きなの?」

 真の表情は真剣だったが、問い詰める様な緊迫した雰囲気はなかった。

「な、何言ってるの・・・、そんな訳ないじゃない」

 和香は真の口から飛び出したとんでもない言葉に激しく動揺した。



「この間・・・、あの人の家に行った時、少し話をしたんだ。その時僕は、何となくあの人は和香ちゃんのことが好きなんじゃないかって思ったんだけど」

「まさか、あり得ない・・・」

「そう?ないとは言い切れないと思うけど」

「まあ君・・・、どうしてそんなこと言うの?」



 和香に理不尽に別れを告げられたというのに、真はいったい何がしたいのだろう。

 そもそも、今日和香のところに来た目的は何なのだろう。



「そうだよね・・・、和香ちゃんにフラれた僕が、何してんだって感じだよね」

「そういう訳じゃないけど・・・」

「自分でもバカだと思うんだけど・・・。僕よりも仕事と、その男のことを選んだ和香ちゃんのことを、いつまでも心配してるなんてさ・・・」

 そうはっきり言われては、それ以上何と言えばいいのか分からなくなる。
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