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それでも俺が好きだと言ってみろ.66

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 早乙女はその辺のオバサンばりに受け答えがうまい。



「そうなのよ~。まあ、順調に育ってる証拠なんだけどね」

「あんまり無理しないで、仮眠とってくださいね」
 
 植松も心配そうに声を掛ける。



「ありがとう、皆に心配かけるなんて、私もまだまだね」

「いやあ、本当に無理しなくていいからね。僕たちばかり助けてもらって、伊沢さんが倒れたりしたら、旦那さんに大目玉くらっちゃうよ」

 三村は優しいのだが、発言がどうもヘタレであることは否めない。

「分かりました、ありがとうございます」



 昼休みが終わり、皆は話を終えると作業場に移動していった。

 和香は伊沢の顔を気付かれないようにチラリと見た。



 早乙女が言った通り、その目の下にはくっきりとクマができている。

 ある程度は化粧で隠せるが、全体的に疲れている感じは否めない。

 それは和香も一緒なのだけれど・・・。

 伊沢はベースが綺麗な分、ちょっとした変化でも皆の目に留まるのだろう。



 こういう時、桜庭はどういう気持ちでいるのだろうか。

 何も言わないけれど、話は全部聞こえているはずだ。

 そして、伊沢のことを誰よりも、神経質なほどに気にしているのは桜庭なのだ。



 その後は仕事に追われ、あっという間に一週間が過ぎて今日は金曜日だ。

 和香が危惧したとおり、桜庭からの呼び出しは一度もない。



 平日は仕事があるため、オフィスで顔を見ることくらいはできる。

 しかし、土日となるとそれも叶わず、悶々とした時間を過ごすことは明白だ。

 和香は朝から深いため息をついてばかりだった。



「竹内さん、今日はえらくため息ばかりついてるね」

 弁当を広げながら、猪俣といつもの会話が始まる。



「そ、そうだった?ごめん、うっとうしいよね」

「そういう訳じゃないけど、やっぱり金曜日は一週間の疲れがたまってるからね。今週の土日はあまりハメを外さないようにね!」

「猪俣君て、お母さんみたい。若いくせにちゃんとしすぎだよ」



「そうかな~、まあ、学生の時からあだ名は「裁判長」とか「委員長」とか堅苦しい感じのばかりだったからな~。僕には普通でも、周りから見たらきっと、そうなんだろうね」

「アハハ、面白い。・・・あ、ゴメン、笑ったりして。でも、それでいじめられたりしてた訳じゃないなら、きっと皆は猪俣君には一目置いてたんだね」

「そうなのかな~、よく分かんないや」

 そう言いながら、猪俣は今日も自慢の手作り弁当をおいしそうに頬張った。

 そんな和やかな時間は外から帰ってきた先輩たちの騒ぎで突然終わりを迎えた。



「伊沢さん、こっちで休んで・・・」

 早乙女に寄りかかり、伊沢はおぼつかない足取りでオフィスに戻ってきた。



「伊沢くん、こっちへ!」

 三村と早乙女は、伊沢を仮眠室へと運んでいった。

 伊沢は「・・・はい」と力ない声で答えた。

 容体は芳しくない様だ。



「大丈夫ですか!」

 猪俣が立ち上がって駆け寄った。

 和香もその後に続く。
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