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それでも俺が好きだと言ってみろ.65
しおりを挟む「仕事は減ったのに、竹内さん、何か疲れてない?」
昼休み、猪俣が話しかけてきた。
「そ、そうかな?」
「うん、だって、目の下にクマが出来てるよ」
「やだ、本当に?」
和香はわざとらしくハンドミラーを取り出した。
仕事は関係ない・・・。
桜庭のことが気になってよく眠れなかっただけなのだから。
「仕事が山を越えたから、ちょっと調子に乗って夜更かししちゃったからかな~」
「ダメだよ~、ちゃんと睡眠はとらないと。健康のためにも、美容のためにも、仕事のためにもね」
「うん、そうだね、気をつける」
「あっ、本当だ竹内さん、まだ若いのに夜更かしごときでクマなんか作ってちゃダメでしょ~」
ランチを終えた早乙女が二人の話を聞きつけてやってきた。
後ろには植松もいる。
桜庭は一緒に帰ってきたが、すぐに自席へと行ってしまった。
「そ、そうですね、情けない限りで・・・」
和香は早乙女の軽いノリについていけるタイプではない。
「あ、そう言えば今日は珍しく伊沢さんもクマができてた」
「え、本当?やっぱり子育てしながらだと、寝不足にもなるよね」
植松も会話に加わってきた。
早乙女は普通の女子よりもその辺の観察力がすぐれているようだ。
「まあ、旦那さんが育休とってるんだから、普通よりは楽だろうけど・・・、夜中に赤ん坊が泣いたらやっぱり起きちゃうよね」
二人の会話に、新人二人はどう入っていいのか分からず、ただただ聞き役に徹していた。
伊沢は桜庭たちとは一緒ではなく、いつも三村と昼食に出ていた。
今日もまだ戻ってきていない。
桜庭たちにとって憧れの先輩である伊沢は、やはり少し気を遣う存在でもあるのだろうか。
和香たち新人には、まだその辺の関係性まで理解できていないが、何となくそう感じていた。
「ただいま戻りました」
三村と伊沢が入って来ると、早乙女が伊沢に話しかけた。
「伊沢さん、顔色悪いみたいですけど、大丈夫ですか?」
「あ、バレちゃった?ちょっと子どもの夜泣きがひどくて・・・」
「ああ、やっぱり。大変ですね、子育てとの両立って。旦那さんがいても、夜泣きされたらぐっすりは眠れませんよね」
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