64 / 96
それでも俺が好きだと言ってみろ.64
しおりを挟む
ほどなく真から電話がかかってきた。
桜庭に目で伺いを立てる。
「出ろよ」
「もしもし・・・」
「和香ちゃん・・・、大丈夫?」
「ご、ごめんなさい・・・」
桜庭がすぐ隣で聞き耳を立てている状態で、どう説明すればいいのか分からず、言葉が出ない。
「その人に脅されたりしてない?」
「・・・それは」
その通りだ・・・。
だけど、和香の中では仕事を失う事と桜庭を失うことが同じ位、いやもしかしたら桜庭を失うことの方が重要かもしれない。
「まあ君・・・、ごめんなさい・・・」
「いいよ・・・、和香ちゃんが選んだ道だから・・・。だけど・・・、和香ちゃんが心配だよ」
「・・・あ、ありがとう」
真があくまでも自分を信じてくれていることが、余計に和香を苦しめる。
「もし、どうしても困ったら、連絡してきて・・・。僕はいつでも和香ちゃんの味方だから」
「まあ君・・・、ありがとう・・・」
電話は切れた。
「いい子ぶりやがって!!どこまでもつまんねぇ奴らだな!ああ~、面白くねぇ、面白くねぇんだよ!」
桜庭は拳でテーブルを思い切り叩いた。
「・・・す、すみません」
「ハッ!お前は謝ってばかりだな!他にもっと面白いこと言えねえのかよ。クソ野郎はどこまで行ってもクソだな」
桜庭はすっかり機嫌が悪くなってしまい、収拾がつかない。
「もう帰れ、早く帰れよ!」
「は、はいっ・・・」
和香はカバンを掴むと大急ぎで桜庭の部屋を飛び出した。
別に急ぐ必要はないのに、和香は駅までの道を思い切り走った。
とてものんびり歩いているような気持ちにはなれなかった。
どうしよう・・・、桜庭を怒らせてしまった。
また、しばらく呼んでもらえなくなるのだろうか。
桜庭の自分勝手な行動に振り回されたというのに、和香の桜庭を求める気持ちはますます強くなっていた。
ふと真に送りつけた映像の事を思い出した。
それを見れば少しでも慰めになるだろうか・・・。
いや、きっともっと寂しい気持ちが強くなってしまうだけだ。
この手で実際に触れられないのなら、そんなものは和香を苦しめるだけだから。
そんな不安定で落ち着かない気持ちのまま、土日を過ごし、また月曜日がやってきた。
桜庭と同じオフィスで働けるだけでも、今の和香にとっては嬉しいと思える。
どうせ職場では桜庭に話しかけられることはなかったから、土曜のことがあろうがなかろうが、特に何も変わらない。
ただ、和香が気にしているのは仕事が終わったあとのことだけだった。
自分が呼ばれなければ、他の誰かが呼ばれているはずで、それを想像しながら一人で過ごす夜ほど寂しくて、胸が苦しいことはないのだから。
先週と同じく助っ人のおかげで、仕事は特に問題なく進んだ。
そして、分析依頼の件数も徐々にではあるが減少傾向にあった。
番組の放送から約一ヶ月が経過し、また新しい情報に世間の人々は飛びついているのだろう。
桜庭に目で伺いを立てる。
「出ろよ」
「もしもし・・・」
「和香ちゃん・・・、大丈夫?」
「ご、ごめんなさい・・・」
桜庭がすぐ隣で聞き耳を立てている状態で、どう説明すればいいのか分からず、言葉が出ない。
「その人に脅されたりしてない?」
「・・・それは」
その通りだ・・・。
だけど、和香の中では仕事を失う事と桜庭を失うことが同じ位、いやもしかしたら桜庭を失うことの方が重要かもしれない。
「まあ君・・・、ごめんなさい・・・」
「いいよ・・・、和香ちゃんが選んだ道だから・・・。だけど・・・、和香ちゃんが心配だよ」
「・・・あ、ありがとう」
真があくまでも自分を信じてくれていることが、余計に和香を苦しめる。
「もし、どうしても困ったら、連絡してきて・・・。僕はいつでも和香ちゃんの味方だから」
「まあ君・・・、ありがとう・・・」
電話は切れた。
「いい子ぶりやがって!!どこまでもつまんねぇ奴らだな!ああ~、面白くねぇ、面白くねぇんだよ!」
桜庭は拳でテーブルを思い切り叩いた。
「・・・す、すみません」
「ハッ!お前は謝ってばかりだな!他にもっと面白いこと言えねえのかよ。クソ野郎はどこまで行ってもクソだな」
桜庭はすっかり機嫌が悪くなってしまい、収拾がつかない。
「もう帰れ、早く帰れよ!」
「は、はいっ・・・」
和香はカバンを掴むと大急ぎで桜庭の部屋を飛び出した。
別に急ぐ必要はないのに、和香は駅までの道を思い切り走った。
とてものんびり歩いているような気持ちにはなれなかった。
どうしよう・・・、桜庭を怒らせてしまった。
また、しばらく呼んでもらえなくなるのだろうか。
桜庭の自分勝手な行動に振り回されたというのに、和香の桜庭を求める気持ちはますます強くなっていた。
ふと真に送りつけた映像の事を思い出した。
それを見れば少しでも慰めになるだろうか・・・。
いや、きっともっと寂しい気持ちが強くなってしまうだけだ。
この手で実際に触れられないのなら、そんなものは和香を苦しめるだけだから。
そんな不安定で落ち着かない気持ちのまま、土日を過ごし、また月曜日がやってきた。
桜庭と同じオフィスで働けるだけでも、今の和香にとっては嬉しいと思える。
どうせ職場では桜庭に話しかけられることはなかったから、土曜のことがあろうがなかろうが、特に何も変わらない。
ただ、和香が気にしているのは仕事が終わったあとのことだけだった。
自分が呼ばれなければ、他の誰かが呼ばれているはずで、それを想像しながら一人で過ごす夜ほど寂しくて、胸が苦しいことはないのだから。
先週と同じく助っ人のおかげで、仕事は特に問題なく進んだ。
そして、分析依頼の件数も徐々にではあるが減少傾向にあった。
番組の放送から約一ヶ月が経過し、また新しい情報に世間の人々は飛びついているのだろう。
0
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる