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それでも俺が好きだと言ってみろ.60

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 桜庭は和香の身体を自分の隣に移動させると、そのまま上に覆いかぶさり、キスをした。

 っ!!!



 大人しく口を閉じている和香の唇に舌をねじ込むと、むさぼるような口づけをした。

 っ!・・・・なぜ?



 舌を追い回されるうち、自然とそれに応えていた。

 舌と舌を絡ませた濃厚なキスが続いた。



 まださっきのセックスの息も整っていないままのキスで、呼吸困難に陥りそうになる。

 いや、本当はキスをされた嬉しさで心臓が止まりそうになったのだけれど。



 何で読んだのか忘れたけれど、セックスとキスは意味が違うと書いてあったような気がする。

 セックスはただ性欲を満たすもので、キスは愛情表現であると・・・。

 それが本当なら、桜庭は和香に対して少しくらいは愛着を感じてくれているのだろうか。



 ただ、桜庭がセックス依存であるなら、それは当てはまらないかもしれない。

 己の欲求を満たすためなら、何だってするのだろうから。

 しばらくキスを続けて満足したのだろうか、桜庭の唇が離れていった。



「シャワー浴びてくる」

 そう言って、桜庭はベットから出ていった。



 今日もまったく訳が分からない体の結びつきだった。

 だけど、和香は幸せだった。

 桜庭に呼ばれない夜のことを思えば、今日の様な日は本当に幸せな日だ。



「お前も行ってこい」

「はい」

 桜庭に言われ、和香もシャワーを浴びた。

 時刻は既に夜中の一時を回っている。

 シャワーを終え、リビングに行くと桜庭はソファに座って水を飲んでいた。



「泊っていけ」

「・・・はい」



 和香の望んだとおり、桜庭は泊っていけと言った。

 思わず笑みがこぼれそうになるのを必死でこらえた。



 絶対に笑ったりしたらダメだ。

 桜庭は嫌がる和香をいじめるのが好きなのだから。
 
 和香が喜んでいるなどと知ったら、もう絶対に呼ばれないだろう。



「寝るぞ」

「・・・はい」



 和香は桜庭について寝室に入った。

 さっきまでセックスをしていたベッドは乱れたままだ。

 桜庭の匂いで満ちている。



 二人でベッドに入ると、またしても桜庭は和香を抱き枕の様にして腕を回してきた。

 喜ぶでもなく抗うでもなく、そのままそれに従った。



 本当は自分からも桜庭を抱きしめてみたかった。

 そんなことは永遠に許されないと分かっている。

 だから、せめてこうして抱きしめられる幸せを噛みしめよう。



 しばらくすると、桜庭の寝息が聞こえてきた。

 桜庭さん・・・。

 和香の胸は切なさで息苦しいほどに痛んだ。

 この歪んだ関係を・・・、いったいいつまで続くかも分からない不安定な関係を・・・、和香は心の底から離したくないと思った。
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