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それでも俺が好きだと言ってみろ.30

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 しかし、夜の桜庭を知っている和香は、植松と桜庭はどんなセックスをするのかと、つい想像してしまう。

 ああっ、もう、最近暇さえあれば、考えるのはセックスのことばっかりで、これじゃあ自分の方がセックス依存みたいだ・・・。



 今日は久しぶりにたっぷり眠れるのだから余計なことは考えないでさっさと家に帰ろう。

 和香は家路を急いだ。



 家に帰ると、今朝桜庭が使った茶碗やコップ、箸が彼がこの家にいたことを主張していた。

 そして彼の香りが微かに残るタオルケットも。

 今頃桜庭は植松を抱いているのだろう・・・。



 セックスのことは考えないようにしようと思うのに、桜庭がほぼ毎日誰かの体を求めることを知ってしまった今、気にしないでおこうとしても、どうしても考えてしまう。

 あの唇で、あの手で、そして彼自身で、植松のことをどんな風に気持ちよくさせているのだろう・・・。

 そしてその時、桜庭は、植松はどんな表情を見せるのだろう・・・。

 ダメだ・・・、本当に眠れなくなりそうだ。



 和香はシャワーを浴びると、普段は寝酒なんてものはしたことがないのに、ついそんなことがしたくなった。

 真が置いていった日本酒を少しばかりグラスに注ぐと、グイッと飲み干した。

 喉とお腹がカーッと熱くなる。

 空きっ腹に飲んだからすぐに酔いが回った。

 もうこのまま寝よう。

 和香はベッドに潜り込み、ギュッと目をつむった。



 次の日出社すると、いつもは気にならなかった植松のことがどうしても気になってしまう。

 朝のミーティングでぐるりと輪になると、桜庭と植松のことを交互に見てしまった。

 本人たちを目の前にすると、よりリアルにセックスの場面を想像できてしまう。

 ああ、もう!あさイチからセックスのことを考えるなんて・・・。



 この仕事がしたくてこの会社に入って、まだ一人前にもなっていないというのに、どうしてこんなことに・・・。

 究極の選択をしたつもりだったが、やはり安直な考えだったのだろうか。

 和香は三村の話がほとんど耳に入って来ないまま、ミーティングが終わっていた。



 忙しいときほどミスのないように、細心の注意を払って行わなければならないというのに。

 おかしな妄想などしている場合ではないのだ。



 やっと迎えた昼休み、和香の脳みそは、仕事を邪魔しようとする妄想を押さえ付けるのにかなりの労力をつかったため、ひどく疲れていた。

 何で仕事じゃなくてこんなことで疲れなくちゃいけないんだろう・・・。



 しかしそんな和香の疲れを更に悪化させる、ダメ押しの様な出来事が目の前で起こった。

「どうしたの?食欲ない?」

 猪俣が心配そうに顔を覗き込んできた。

 弁当の蓋を開けたまま、余り箸が進んでいなかった。

 それというのも、今日に限って、桜庭と植松の二人が連れ立って出て行ったからだ。



「ううん、大丈夫」

 和香は慌ててご飯をかき込んだ。

「やっぱり疲れるよね~、これだけ根を詰めると」

「そうだね~」

 猪俣が勝手に解釈してくれて助かった。

 まさか、和香の頭のなかがセックスのことでいっぱいだなんて知ったら、真面目な猪俣は卒倒するかもしれない。
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