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それでも俺が好きだと言ってみろ.28
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「す、すみません、すぐ朝食の用意を・・・」
「台所勝手に使った」
桜庭はとうの昔に起きて、ローテーブルには二人分の朝食が用意されていた。
「す、すみません、すみません」
なんという体たらく。
昨日も朝食つくってもらったし・・・。
これじゃあ、本当にセックス以外価値がないと言われても仕方がない。
「いいから、早く起きて食え」
「は、はい、いただきます」
和香は昨日とまったく同じ情けない状況で、本当だったら美味しいであろう桜庭さん手作りの朝ごはんを、よく味も分からずに口の中に放り込んだ。
そして二人で家を出た。
やはり桜庭は無言のままオフィスに着いた。
オフィスに入るといつもと少しだけ何かが違った。
そうだ、赤ちゃんの泣き声がしないのだ。
和香が三村に尋ねる前に、ミーティングが始まった。
「え~、今日から、伊沢さんの旦那さんが育休を取って赤ちゃんをみてくださるそうだ。これで、伊沢さんにも思う存分能力を発揮してもらえます。頼んだよ、伊沢さん」
伊沢は嬉しそうに頭をさげた。
和香は今の日本で男性が育休を取るのはまだまだ難しいことくらい知っている。
だから、色々と聞きたいことはあったけれど、とりあえず今は仕事だと、みんなのあとにつづいた。
昼休みになり、猪俣と話していると、外から帰ってきた早乙女が声を掛けてきた。
彼は下手な女子より世間話が大好きなようだ。
「伊沢さんの旦那さんね、大学院の教授なんだよね~。大学の時からつきあってて、伊沢さんがまだこの会社で働いてた頃に結婚したんだ。二人とも超優秀で、美男美女でまったく嫌になるよね~」
「は、はあ・・・」
新人二人はそう答えるしかない。
「おまけに可愛い赤ちゃんまで生まれちゃって、もう、幸せの絶頂だよね。ただ、その陰で泣いてる奴がいるって知らないのは罪深いんだけど・・・」
それだけ言うと早乙女は去っていった。
「今のってどういう意味だろう?」
「さぁ・・・」
早乙女の言葉は気になるが、しっかり休んでおかないと午後から持たない。
和香はいつも通り机に突っ伏して仮眠をとった。
「宗理、元気そうで良かった」
「・・・別に、俺は普通ですよ」
「私が辞めるころ、ちょっと体調崩してたでしょ」
「・・・ああ、まあ・・・季節の変わり目とか俺弱いんで」
遠くから聞こえてくる話し声で和香は目を覚ました。
スタッフルームで桜庭と伊沢が立ち話をしていた。
二人が話しているのをまともに見たのはこれが初めてだったし、何となく伊沢に対する桜庭の態度がおかしかったので、和香はまだ寝たふりをしてずっと聞き耳をたてていた。
いつも和香の前では毒しか吐かない桜庭が、伊沢の前では別人の様に大人しい。
「やっぱ、宗理かわいい」
伊沢はクスッと笑うと、桜庭の頭をなでた。
「や、やめてくださいよ・・・、いい大人つかまえて可愛いとか・・・」
和香は、閉じていた目を薄っすら開けて桜庭を盗み見た。
「台所勝手に使った」
桜庭はとうの昔に起きて、ローテーブルには二人分の朝食が用意されていた。
「す、すみません、すみません」
なんという体たらく。
昨日も朝食つくってもらったし・・・。
これじゃあ、本当にセックス以外価値がないと言われても仕方がない。
「いいから、早く起きて食え」
「は、はい、いただきます」
和香は昨日とまったく同じ情けない状況で、本当だったら美味しいであろう桜庭さん手作りの朝ごはんを、よく味も分からずに口の中に放り込んだ。
そして二人で家を出た。
やはり桜庭は無言のままオフィスに着いた。
オフィスに入るといつもと少しだけ何かが違った。
そうだ、赤ちゃんの泣き声がしないのだ。
和香が三村に尋ねる前に、ミーティングが始まった。
「え~、今日から、伊沢さんの旦那さんが育休を取って赤ちゃんをみてくださるそうだ。これで、伊沢さんにも思う存分能力を発揮してもらえます。頼んだよ、伊沢さん」
伊沢は嬉しそうに頭をさげた。
和香は今の日本で男性が育休を取るのはまだまだ難しいことくらい知っている。
だから、色々と聞きたいことはあったけれど、とりあえず今は仕事だと、みんなのあとにつづいた。
昼休みになり、猪俣と話していると、外から帰ってきた早乙女が声を掛けてきた。
彼は下手な女子より世間話が大好きなようだ。
「伊沢さんの旦那さんね、大学院の教授なんだよね~。大学の時からつきあってて、伊沢さんがまだこの会社で働いてた頃に結婚したんだ。二人とも超優秀で、美男美女でまったく嫌になるよね~」
「は、はあ・・・」
新人二人はそう答えるしかない。
「おまけに可愛い赤ちゃんまで生まれちゃって、もう、幸せの絶頂だよね。ただ、その陰で泣いてる奴がいるって知らないのは罪深いんだけど・・・」
それだけ言うと早乙女は去っていった。
「今のってどういう意味だろう?」
「さぁ・・・」
早乙女の言葉は気になるが、しっかり休んでおかないと午後から持たない。
和香はいつも通り机に突っ伏して仮眠をとった。
「宗理、元気そうで良かった」
「・・・別に、俺は普通ですよ」
「私が辞めるころ、ちょっと体調崩してたでしょ」
「・・・ああ、まあ・・・季節の変わり目とか俺弱いんで」
遠くから聞こえてくる話し声で和香は目を覚ました。
スタッフルームで桜庭と伊沢が立ち話をしていた。
二人が話しているのをまともに見たのはこれが初めてだったし、何となく伊沢に対する桜庭の態度がおかしかったので、和香はまだ寝たふりをしてずっと聞き耳をたてていた。
いつも和香の前では毒しか吐かない桜庭が、伊沢の前では別人の様に大人しい。
「やっぱ、宗理かわいい」
伊沢はクスッと笑うと、桜庭の頭をなでた。
「や、やめてくださいよ・・・、いい大人つかまえて可愛いとか・・・」
和香は、閉じていた目を薄っすら開けて桜庭を盗み見た。
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