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それでも俺が好きだと言ってみろ.27

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 身長も体重も平均で、特に筋肉質でもない真の体をセクシーだと感じたことはない。

 だが、それを不満に思ったこともなかった。

 それに比べて、桜庭は長身の細身で色白で、男性なのに妙な色気がある。



 和香の人生で桜庭の様な人物と知り合うこともなかったし、ましてや、こんなにも親密な関係になったことなどない。

 目新しさに惑わされているだけなのかもしれない。

 だけど、和香の中で桜庭の存在が大きくなってしまっていることは確実だ。

 おそらく桜庭にとっては、性欲を解消する数人の相手の中でも、もっともお手軽な存在でしかないだろうが・・・。



「お先・・・」

 そんな不埒な妄想を繰り広げていた和香の目の前に、腰にタオルを巻いただけで、上半身を露出したままの桜庭が現れた。

 風呂上がりの肌はまだ濡れていて、色素の薄い乳首がエロティックで、見てはいけないものを見てしまった様に目を逸らした。



「あっ・・・、どうも・・・」

「お前も早く入れよ。さっさと寝るぞ」

「は、はいっ・・・」

 自分の家なのになぜか桜庭に命令され、和香は慌ててシャワーを浴びた。



 「ベッドで寝てください」という和香の言葉を「うるさい早く寝ろ」と言って遮ると、桜庭はソファで体を丸めて眠る態勢に入った。

 和香は仕方なく押し入れからタオルケットを引きずり出すと、そっと桜庭の体に掛けた。

 当然のことだが、連日の激務で桜庭も疲れているのだろう。

 あっという間に寝息が聞こえてきた。



 瞼を閉じてもなお美しいその顔を、じっくり見るのは今しかないと思い、和香はまじまじと眺めてしまった。

 あんなひどいことを言ったりしたりされたのに、どうしてこんなことをしているのか和香自身にも理解できなかった。

 でも、眠いのにこうして眺めていたくなるくらいには、和香の心は桜庭に傾いていることは確かだった。



 だけど自分はきっと浮かれているんだ。
 
 桜庭に激しく求められるセックスは、毎秒毎秒、自分が女であることを強烈に実感させてくれる。



 真という彼氏はいるけれど、彼とのセックスはたぶんごく普通のセックスで、決してそれが悪いわけじゃない。

 だけど、依存症である桜庭のセックスは普通ではない代わりに麻薬の様に魅力的だ。

 危ないと分かっていても一度味わったら離れられなくなる。
 


 だから、桜庭の周りには切れることなく常にセフレがいるのかもしれない。

 入社したばかりで本当なら、頭の中は仕事でいっぱいのはずなのに、和香の頭の中はセックスに占領されていた。

 ベッドに横になってもなお、そんな不埒なことを考えていた和香もいつの間にか眠りに落ちていった。



「おい、お前はいつもどうやって起きるんだ?」

 目を開けるとしわくちゃのTシャツを着た桜庭が立っていた。

 桜庭さんって、やっぱり色っぽい・・・。

 起きて一番に頭に浮かんだことがエロくて、和香は自分がすっかり色ボケしていると自覚する。

 これはマズい・・・。

 まだ仕事も一人前に出来ないのに、頭の中がそんなことで一杯なんて、自堕落にも程がある。
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