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それでも俺が好きだと言ってみろ.24

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 和香は猪俣と別れ、速足で最寄り駅へ向かった。

 さすがに連チャンはないだろうと、勝手に決めつけていたが、なんと、昨日と同じ場所にまた人影が見えた。



 恐らく桜庭だ。

 どうしよう・・・。

 いくら何でも二日も同じ服は勘弁して欲しい。

 しかし、桜庭を無視することなどあり得ない。

 和香が近づくとやはりそこにいたのは桜庭だった。



「おい、今日はお前のうちに行く」

「えっ・・・、う、うちですか?」

 まさかの展開に、和香は思わず声をあげてしまった。



「女は着替えがどうのとか、面倒くさい。だから、俺がお前のうちに行く」

「で、でも、今度は桜庭さんの着替えが・・・」

「今朝、一式持ってきたから大丈夫だ」



 ええっ・・・、なんて用意のいいことだろう。

 セックスのためならどんなことも苦じゃないんだな・・・。

 和香は自分の置かれている立場を忘れて、もはや関心してしまった。



「うちは、桜庭さんの住んでいる様な素敵なお部屋じゃないですよ」

「なんだ、汚部屋か」

「ち、ちがいますよ。ただ、古いだけです」

「そんなことはまったく問題ない」



 それはそうだろう・・・、セックスするのに、建物が古いとかそんなことどうでもいいことなのだから。

「分かりました」

 だけど、部屋も狭いし・・・、急に泊まるって言われても・・・。



 和香も女の子だ。

 男性が泊ると分かっていれば、もう少し綺麗にしておきたかった。

 なんて、そもそも真という彼氏がいながら、他の男を泊める、しかもセックスをすることを前提に、という時点で、かなりのことが間違っているのだが。



「どうぞ・・・」

 桜庭は何も言わず和香の部屋に入った。

「思ったほど汚部屋じゃないな」

「・・・だから、古いだけです」



 やっぱり桜庭が家にいるというのは、想像以上に居心地が悪い。

 というか生きた心地がしないといった方がいいだろうか。

 壁には真とのツーショット写真が飾ってあるし、キッチンには真用のお茶わんや箸、そして洗面所には真の歯ブラシが置いてある。

 桜庭には彼氏がいることは伝えたが、真にかかわるものを見られるのは何だか嫌だった。

 だけど、今から慌てて隠しても時すでに遅しだ・・・。



「これが、お前の彼氏?」

「は、はい・・・」

「何か想像どおりで笑える」

 どんな想像をしていたのだろう。

 そもそも、桜庭が和香の彼氏を想像したことが信じられないのだが。



「真面目ないい子ちゃんって感じ」

「・・・」

 そう言われても、桜庭に対して何と答えるのが正解かが分からない。

「セックスつまんなそうだな。お前、こいつとセックスしてイケるの?」

 な、何てことを・・・。

 だが痛いところを突かれたと言わねばならない。
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