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それでも俺が好きだと言ってみろ.03
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「・・・分かりました」
「じゃあ、すぐ用意しろ」
「は、はいっ・・・」
桜庭に連れて行かれたのは、ごく普通の定食屋だった。
「好きなもの頼め」
「・・・はい」
和香は、なぜ誘われたのか、その理由も分からないまま、手ごろな値段の定食を注文した。
「お前、このあと時間あるか?」
「な、何ですか・・・?」
和香は桜庭という人物のことがまだ何も分からないのに、こんなにも急接近していいものか迷う。
だが、それは桜庭にしても同じだろう・・・。
一体この人は何を考えているのか。
注文した料理が運ばれてきたが、桜庭は和香に話しかけることはなく、ただ黙々と料理を口に運んだ。
和香が食べ終わるのを見計らって、桜庭はもう一度同じ質問をしてきた。
「これから何か用事はあるのかと聞いている」
「い、いえ・・・、特に何も・・・」
「そうか、じゃあ俺についてこい」
「はい・・・」
和香はそう答えるしかなかった。
電車に乗り約十分ほど行った駅で降りた。
その間も桜庭は何も話さない。
和香も話しかけられる雰囲気ではなく、仕方なく桜庭の後を歩いた。
五分程歩いただろうか、「ここだ」と桜庭が言った場所はごく普通のマンションだった。
「どこですか?」
「俺のマンションだ」
「ええっ!」
いくら上司とはいえ、部下をいきなり自宅マンションに連れてくるだろうか。
和香は桜庭に対し言い知れない不気味さを感じた。
「お前は今日から俺の部下だ。所長からは俺のやり方でやっていいと許可をもらった」
「だけど・・・、ここは会社じゃありません」
「それなら、お前はもうクビだ」
「・・・えっ!」
「何度も言わせるな、クビだよ」
「・・・そんなの困ります」
「だったら、俺の言うことを聞け」
どういうことなんだろう・・・。
そもそも、桜庭さんに自分をクビにする権限などあるのだろうか・・・。
そんな考えが和香の頭の中に浮かんだ。
だけど・・・、会社には会社の事情があるのだ。
何しろ、今日の所長の態度は妙に桜庭に遠慮しているように感じられた。
「分かりました」
和香の口は勝手にそう答えていた。
人の能力には限界がある。
和香は高校生の時、テレビの特集を見てゲノム研究が人の役に立つことを知り、研究者になるという夢を持った。
しかし、ゲノム研究が有名になるにつれ、優秀な人間が集まる様になり、簡単にその職に就くことが難しくなった。
そんなわけで、和香はゲノム研究関連の会社に散々落ちまくり、一旦は興味のない住宅関連会社に入ったものの、やはり諦めきれず、中途採用をしていた今の会社にやっとのことで入社したのだった。
やっと掴んだ夢を、そんなに簡単に諦めるわけにはいかないのだ。
「じゃあ、すぐ用意しろ」
「は、はいっ・・・」
桜庭に連れて行かれたのは、ごく普通の定食屋だった。
「好きなもの頼め」
「・・・はい」
和香は、なぜ誘われたのか、その理由も分からないまま、手ごろな値段の定食を注文した。
「お前、このあと時間あるか?」
「な、何ですか・・・?」
和香は桜庭という人物のことがまだ何も分からないのに、こんなにも急接近していいものか迷う。
だが、それは桜庭にしても同じだろう・・・。
一体この人は何を考えているのか。
注文した料理が運ばれてきたが、桜庭は和香に話しかけることはなく、ただ黙々と料理を口に運んだ。
和香が食べ終わるのを見計らって、桜庭はもう一度同じ質問をしてきた。
「これから何か用事はあるのかと聞いている」
「い、いえ・・・、特に何も・・・」
「そうか、じゃあ俺についてこい」
「はい・・・」
和香はそう答えるしかなかった。
電車に乗り約十分ほど行った駅で降りた。
その間も桜庭は何も話さない。
和香も話しかけられる雰囲気ではなく、仕方なく桜庭の後を歩いた。
五分程歩いただろうか、「ここだ」と桜庭が言った場所はごく普通のマンションだった。
「どこですか?」
「俺のマンションだ」
「ええっ!」
いくら上司とはいえ、部下をいきなり自宅マンションに連れてくるだろうか。
和香は桜庭に対し言い知れない不気味さを感じた。
「お前は今日から俺の部下だ。所長からは俺のやり方でやっていいと許可をもらった」
「だけど・・・、ここは会社じゃありません」
「それなら、お前はもうクビだ」
「・・・えっ!」
「何度も言わせるな、クビだよ」
「・・・そんなの困ります」
「だったら、俺の言うことを聞け」
どういうことなんだろう・・・。
そもそも、桜庭さんに自分をクビにする権限などあるのだろうか・・・。
そんな考えが和香の頭の中に浮かんだ。
だけど・・・、会社には会社の事情があるのだ。
何しろ、今日の所長の態度は妙に桜庭に遠慮しているように感じられた。
「分かりました」
和香の口は勝手にそう答えていた。
人の能力には限界がある。
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しかし、ゲノム研究が有名になるにつれ、優秀な人間が集まる様になり、簡単にその職に就くことが難しくなった。
そんなわけで、和香はゲノム研究関連の会社に散々落ちまくり、一旦は興味のない住宅関連会社に入ったものの、やはり諦めきれず、中途採用をしていた今の会社にやっとのことで入社したのだった。
やっと掴んだ夢を、そんなに簡単に諦めるわけにはいかないのだ。
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