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そうだったの!!.01

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 さくらの家につくとインターホンを押した。

「は~い。」

 さくらの母だろう。のんびりとした感じの声が返ってくる。

「夜分にすみません。家庭教師の武田君の友人の小野木と言います。さくらさんに急ぎの届け物がありまして、取り次いでいただけないでしょうか?」

「あら、武田君のお友達?ちょっと待ってね。」

 さくらの母はそう言うと、二階に向かって呼びかけた。

「さくら~、武田先生のお友達の小野木さんって方がいらっしゃったわよ~。」

(うそ、なんで?啓太が家に?)

 さくらはバタバタと階段を下りると玄関に向かう。

「知ってる人なの?」

「うん。武田先生を紹介してくれた人。」

「まあ、そうだったの。」

「ちょっと、出てくる。」

 さくらはそう言うと、部屋着にパーカーを羽織って家を出た。

 そこには、いつもと違って神妙な表情をした啓太が立っていた。

「近くに公園あるから、行こ。」

「う、うん。」

 さくらに言われ、啓太はあわてて答える。

 公園に着くまでの間、どちらも何を話してよいか分からず無言のまま歩いた。

「そこのベンチに座ろう。」「うん。」

 さくらに言われるまま、啓太はベンチに腰を下ろす。しばらくの沈黙のあと、たまらず啓太が口を開いた。

「さっきの話しなんだけど…、その隠すつもりとかは無くて、つい忙しくて言いそびれてただけで…。気分を悪くさせちゃってごめん。」

「べ、別にあやまることなんてないでしょ。啓太の好きなようにしたらいいことじゃん。」

「それはそうなんだけど…。」

「私に言う義務なんてないんだし…。」

「でも、さくらちゃん何か怒ってるみたいだから…。」

「べ、べつに怒ってなんかないし…。」

「でも、なんか機嫌が悪いって言うか…。」

「で、なんで家まで来てんの?」

「そ、それは、なんか、今会わないとさくらちゃんに会えなくなっちゃうような気がして…。お、おかしいよね、そんな訳ないのに…。はは…。」

 へらへらと話す啓太にさくらはついにキレてしまった。

「私に会えなくしようとしてるのはそっちでしょう?訳分かんないこと言わないでよ!」

「え、そ、それどういう事?」

 さくらの権幕に、啓太は恐る恐る尋ねる。

「何がどういう事よ!スウェーデンに行って教授の助手になるんでしょ?そうなったら、私たち会えなくなるじゃん。」

「ああ、そのことね。」

 呑気に言い放つ啓太にさくらの怒りは収まらない。

「何が、そのことね、よ。私がどんな気持ちになったかも知らないで!」

 さくらの口から、勝手にそんな言葉が飛び出す。

「…?どんな気持ちになったの?」

 啓太は探る様に尋ねる。

「そ、それは…。」

 そう言われるとさくらは急に困った表情になる。

「ねえ、さくらちゃんが怒ってる理由って何?」

 改めて冷静に問われるとさくらはしどろもどろになる。

「それはその、その事を考えただけで何だか胸が締め付けられるくらい苦しくて、泣きそうになっちゃうくらい悲しくて…。とにかく、啓太に会えなくなるのが嫌なの!」

 さくらの話を黙って聞いていた啓太は、何の気なしに言った。

「まるで、さくらちゃん僕に恋してるみたいだね。」

 そう言っておきながら啓太は一転して驚きの声をあげる。

「ええー!さくらちゃん僕のこと、す、す、好きなの?」

 勝手に話を進める啓太に圧倒されながらも、さくらは啓太の言っていることが間違っていないことにようやく気付いた。

(あたし、いつの間にか啓太の事、本気で好きになってたんだ!ど、どうしよ~!)

 さくらは何も言い返すことが出来ず、その顔はみるみるうちに真っ赤になっていった。

 そんなさくらだったが、ふと疑問に思うことがあった。

 どうして啓太は今日わざわざ家に来たのかという事だ。

 今まで啓太がさくらに対して、そんな積極的な行動を起こしたことがあっただろうか。

 いつもとは何かが違う。

 そんなものが啓太からも感じられる。


 とりあえず、さっきの啓太の質問はスルーして、今度はさくらが啓太を問い詰める。

「啓太さ、さっき、今会えないとずっと会えないと思って家に来たって言ったよね。私に会えないと何か困るの?」

 考えてもいなかった問いに、今度は啓太がしどろもどろになる。

「そ、それは、な、なんだろう?分からないけど、さくらちゃんがいない生活なんて考えられないっていうか、これからもずっと一緒にいたいっていうか…。んん?これじゃ、まるで、僕もさくらちゃんのこと好き?なのか…?」

 そう言ったまま啓太は固まった。

「うわー!!びっくりした!さくらちゃん、僕、さくらちゃんのことが好きみたい!」

 それを聞いて、さくらはぷっと吹き出し、その後は二人とも声をあげて笑った。散々笑った後、お互い見つめ合うと妙な恥かしさが襲ってくる。

 どちらからともなく手をつなぐと、啓太が言った。

「これから家来る?」

「うん…。行く。」
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