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男って….02
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一方、さくらの男性遍歴までは知らされていない武田君はさくらに抱いていた思いを形にしたことで、新しい恋に発展するはずと、別の意味でやる気をみなぎらせていたのだった。
さくらに相談して気持ちが決った啓太は事務的に高森さんに友達からという条件付でお付き合いを申し込んだ。
高森さんはホントに私でいいのかと、何度も念を押したが、啓太が冗談を言うとも思えず、快諾してくれた。
実は高森さんも余り恋愛経験は豊富ではなく、ほぼ恋愛初心者同士のぎこちないお付き合いが始まった。
最初のデートは、理系の二人らしく科学館へ行くことになった。
カップルが行く場所ではないが、まずは友達からということで、ちょうど良いのではということだ。
企画展「素粒子とはなにか」のコーナーでは二人とも、周りが引くほど大盛り上がりだった。
正直、これはデートなのか?それともサークル活動なのか?と啓太は考え始める。
楽しければどっちでもいいのではないかと思うところだが、やはり頭がいいだけに、余計な事を考えてしまうようだ。
啓太がそんなくだらない考えに頭を悩ましていると、高森さんが少し恥かしそうにこう告げる。
「これから、小野木君家に行ってもいいかな?」
「え、僕ん家?僕ん家来ても何にもおもしろいことなんてないよ?」
啓太は高森さんの真意が分かっているのか、それとも分かっていないのか。
後者だったら、相当ヤバイ展開が待っているのだが…。
「行っちゃだめ?」
「ダメじゃないけど…。」
「じゃあ、決まり。」
(どうして女性はすぐに僕の家に来たがるのかな?ホントに何も面白いものも無いし、オシャレでもないし…。)
重症な恋愛音痴の啓太の頭の中では謎が渦巻いていた。
夕食は駅のカフェで軽く済ませ、啓太の家に向かう。
高森さんは妙にはしゃいでいるが、啓太は特に嬉しいわけでもなく、女性をどう扱ったらいいのか手探り状態のまま家についた。
「あんまり片付いてないけど、どうぞ。」
「おじゃましま~す。」
高森さんの興奮は冷めないままで、キョロキョロと部屋を見回している。
「そこに座ってて、お茶入れてくるから。」
啓太がキッチンに向かおうとすると、後ろから高森さんが声を掛ける。
「そう言えば、ここに来るの2度目だよね。」
「あ、ああ、そうだったね。」
「あの時は、びっくりしたな~。小野木君にあんな可愛い彼女がいるなんて知らなかったから…。」
急に元気がなくなった高森さんに、啓太はあわてて答える。
「で、でも、もう別れたんだから。もう彼女じゃないし…。」
「そうなんだけど、やっぱり色々考えちゃうな…。」
「色々って?」
おバカな啓太は、余計な事を平気で聞いてしまう。
「…。この部屋で、彼女といろんな事したんだろうな~って。」
「そ、そそ、そんなこと、し、してない…。」
嘘のつけない啓太は、ついアタフタしてしまう。
「もう、あんな可愛い子と付き合ってて、何も無い訳ないじゃない。いいよ、そんな、気遣わなくて。」
「別に、そういう訳じゃ…。」
どっちも恋愛初心者のはずなのだが、やはり女性に口で勝つことは出来ない。
「ねえ、彼女にしてたこと私に出来る?」
「え、ええ~っ!だって、友達からって…。」
まともに信じている啓太の方がおかしいのだが、高森さんは全くそんなつもりではなかったようだ。
「もう!私達子供じゃないんだから、友達からなんてそのままの意味な訳ないでしょ。」
「そ、そういうもんなの?」
今になって、さくらにはめられたのではないかという思いが頭をかすめる。
(さくらちゃん、僕を一人前の男にして彼女が出来るようにしてあげるって、張り切ってたもんな…。)
「だから、あたし、もう待てない。」
そう言うと高森さんは自分から着ているものを脱ぎ始める。
「ま、ま、待った~!!」
啓太は、ありったけの声でその行動を止めようとした。
「な、なに?」
「やっぱ、僕、だめだ。ごめん、高森さん。そういうこと君とは出来ない。」
「なによそれ!私のこと抱けないってこと?」
意外にも高森さんは、ものごとをはっきり言う。
「ごめん。まさか、いきなりこういう事になるとは思ってなくて。でも、それで分かったことがある。僕、やっぱり高森さんの彼にはなれないみたい。」
「ど、どうして?」
「悪く思わないで。君は一緒に学ぶ同士ではあるけど、女性として君にドキドキしたりしないんだ。だから、君の気持ちは嬉しいけど、やっぱり付き合えないよ。」
悪気は無いのだが、啓太の余りにストレートすぎるその言葉は、女性を傷つけるには十分だった。
「どうしてよ!あんな軽そうな女のことは抱けて、私は抱けないって言うの?ねえ、どうしてよ、ちゃんと説明してよ~!!」
高森さんはそれまでとは打って変わった涙声で啓太に訴える。
「そ、それは、どうしてか僕も分からない。分からないんだ。ごめん。ごめんなさい。」
「もう、いい!あたし帰る!」
高森さんは脱いだ服を身につけ、かばんを掴むと啓太の部屋を飛び出して行ってしまった。
啓太はあっけにとられて、その後姿を見ていることしかできなかった。
(まずかったかな~。でも、何て言えばよかったんだろう…。わかんないよ…。)
啓太は、後味の悪さを一人噛みしめるしかなかった。
さくらに相談して気持ちが決った啓太は事務的に高森さんに友達からという条件付でお付き合いを申し込んだ。
高森さんはホントに私でいいのかと、何度も念を押したが、啓太が冗談を言うとも思えず、快諾してくれた。
実は高森さんも余り恋愛経験は豊富ではなく、ほぼ恋愛初心者同士のぎこちないお付き合いが始まった。
最初のデートは、理系の二人らしく科学館へ行くことになった。
カップルが行く場所ではないが、まずは友達からということで、ちょうど良いのではということだ。
企画展「素粒子とはなにか」のコーナーでは二人とも、周りが引くほど大盛り上がりだった。
正直、これはデートなのか?それともサークル活動なのか?と啓太は考え始める。
楽しければどっちでもいいのではないかと思うところだが、やはり頭がいいだけに、余計な事を考えてしまうようだ。
啓太がそんなくだらない考えに頭を悩ましていると、高森さんが少し恥かしそうにこう告げる。
「これから、小野木君家に行ってもいいかな?」
「え、僕ん家?僕ん家来ても何にもおもしろいことなんてないよ?」
啓太は高森さんの真意が分かっているのか、それとも分かっていないのか。
後者だったら、相当ヤバイ展開が待っているのだが…。
「行っちゃだめ?」
「ダメじゃないけど…。」
「じゃあ、決まり。」
(どうして女性はすぐに僕の家に来たがるのかな?ホントに何も面白いものも無いし、オシャレでもないし…。)
重症な恋愛音痴の啓太の頭の中では謎が渦巻いていた。
夕食は駅のカフェで軽く済ませ、啓太の家に向かう。
高森さんは妙にはしゃいでいるが、啓太は特に嬉しいわけでもなく、女性をどう扱ったらいいのか手探り状態のまま家についた。
「あんまり片付いてないけど、どうぞ。」
「おじゃましま~す。」
高森さんの興奮は冷めないままで、キョロキョロと部屋を見回している。
「そこに座ってて、お茶入れてくるから。」
啓太がキッチンに向かおうとすると、後ろから高森さんが声を掛ける。
「そう言えば、ここに来るの2度目だよね。」
「あ、ああ、そうだったね。」
「あの時は、びっくりしたな~。小野木君にあんな可愛い彼女がいるなんて知らなかったから…。」
急に元気がなくなった高森さんに、啓太はあわてて答える。
「で、でも、もう別れたんだから。もう彼女じゃないし…。」
「そうなんだけど、やっぱり色々考えちゃうな…。」
「色々って?」
おバカな啓太は、余計な事を平気で聞いてしまう。
「…。この部屋で、彼女といろんな事したんだろうな~って。」
「そ、そそ、そんなこと、し、してない…。」
嘘のつけない啓太は、ついアタフタしてしまう。
「もう、あんな可愛い子と付き合ってて、何も無い訳ないじゃない。いいよ、そんな、気遣わなくて。」
「別に、そういう訳じゃ…。」
どっちも恋愛初心者のはずなのだが、やはり女性に口で勝つことは出来ない。
「ねえ、彼女にしてたこと私に出来る?」
「え、ええ~っ!だって、友達からって…。」
まともに信じている啓太の方がおかしいのだが、高森さんは全くそんなつもりではなかったようだ。
「もう!私達子供じゃないんだから、友達からなんてそのままの意味な訳ないでしょ。」
「そ、そういうもんなの?」
今になって、さくらにはめられたのではないかという思いが頭をかすめる。
(さくらちゃん、僕を一人前の男にして彼女が出来るようにしてあげるって、張り切ってたもんな…。)
「だから、あたし、もう待てない。」
そう言うと高森さんは自分から着ているものを脱ぎ始める。
「ま、ま、待った~!!」
啓太は、ありったけの声でその行動を止めようとした。
「な、なに?」
「やっぱ、僕、だめだ。ごめん、高森さん。そういうこと君とは出来ない。」
「なによそれ!私のこと抱けないってこと?」
意外にも高森さんは、ものごとをはっきり言う。
「ごめん。まさか、いきなりこういう事になるとは思ってなくて。でも、それで分かったことがある。僕、やっぱり高森さんの彼にはなれないみたい。」
「ど、どうして?」
「悪く思わないで。君は一緒に学ぶ同士ではあるけど、女性として君にドキドキしたりしないんだ。だから、君の気持ちは嬉しいけど、やっぱり付き合えないよ。」
悪気は無いのだが、啓太の余りにストレートすぎるその言葉は、女性を傷つけるには十分だった。
「どうしてよ!あんな軽そうな女のことは抱けて、私は抱けないって言うの?ねえ、どうしてよ、ちゃんと説明してよ~!!」
高森さんはそれまでとは打って変わった涙声で啓太に訴える。
「そ、それは、どうしてか僕も分からない。分からないんだ。ごめん。ごめんなさい。」
「もう、いい!あたし帰る!」
高森さんは脱いだ服を身につけ、かばんを掴むと啓太の部屋を飛び出して行ってしまった。
啓太はあっけにとられて、その後姿を見ていることしかできなかった。
(まずかったかな~。でも、何て言えばよかったんだろう…。わかんないよ…。)
啓太は、後味の悪さを一人噛みしめるしかなかった。
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