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真面目な話.02
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翌日、さくらは啓太に昨日のことでもう少し相談に乗ってほしいから、都合がつく日があるかメールをしてみた。
やはり忙しいようですぐには返事が返ってこなかったが、夜になってようやく返信があった。
『来週末までは、忙しいけどその後の日曜だったら時間とれるよ。』
『ほんと?じゃあ、啓太の家に行っていい?』
『いいよ。朝の10時くらいならちゃんと目が覚めてると思うから、そのくらいに来れる?』
『うん。じゃあ10時行くね。』
『わかった。』
なんだか最近は啓太に助けてもらってばかりだなぁとさくらは何だか居心地が悪い。
最初はさくらが啓太を一人前の男にしてあげる約束で恋愛ごっこを始めたはずなのに、今は立場が逆転してしまっている。
男女の関係に関しては、さくらの方が経験豊富だが、やはりそれ以外の部分は啓太の方が大人であることは自然なことだ。
それが分かっていても、元来負けず嫌いの性格が災いしてイライラしていまう。
私が啓太にしてあげてることって、啓太にとってはあんまり必要ないことなのかな~?
これまで自分の生き方に疑問を持ったこともなければ、自信がゆらぐこともなかったのに、最近はそれが片っ端から崩れていくような気がして、さくらは今までに味わったことのない不安を抱いていた。
そんな気持ちのままでも、高校の友人たちとは薄っぺらな付き合いしかしなくて済むから、いつもと様子が違うとは誰も気付く者はいなかった。一人を除いては。
その一人というのは、例の俊哉だった。
次の日の放課後、遊びに行く気もしないし、かといって家に帰っても面白いことなんて何も無い。
自分の席で携帯をいじっていると、俊哉が声を掛けてくる。
「さくら、なんか元気なくない?」
「べつに。」
平静を装い答えるさくらに、俊哉はさらに食い下がる。
「やっぱ、なんか変だよ。悩みとかあるんだったら、俺聞くよ。」
「なにもないってば!」
さくらは思わず声を荒げてしまう。
「ほら、やっぱり変だ。さくらがそんなふうに怒るなんて今までなかったし。」
「うるさいな。ほっといて。」
核心をつかれ、さくらは思わずカッとなり、教室を出て行こうとする。
「ま、待ってよさくら。」
教室を出たところで俊哉はさくらを引き止める。
「俺、そんなに頼りない?」
「そんなことないけど…。」
「俺、さくらが困ってるの見てるとつらいんだ。この間もなんか変だったし。」
「…。」
「俺には言いにくい?」
「…。」
「俺、今まで言えなかったけど…。さくらが好きだ。」
「えっ…。」
「さくらは真剣に付き合うのとか嫌いみたいだから、言えなかったけど、さくらが困ってるのに何の力にもなれない存在なんて、俺嫌なんだ。」
「そ、そんなこと、きゅ、急に言われても…。」
「それは、ごめん。っていうか、こんなの急なのが普通でしょ。告白してんだから。」
俊哉は開き直ったのか、普段とは別人の様に大胆だ。
「俊哉って、けっこうはっきり言うんだね。」
塞ぎこんだ表情だったさくらの顔が少しほころぶ。
「俺、さくらに嫌われたくなかったから、適当なつきあいに合わせてたけど、ほんとはそんな風に付き合いたくなかった。それは、俺が卑怯だったと思ってる。でも、今みたいにさくらが困ってるときに頼ってもらえない存在なんて、もう嫌なんだ。」
「うん…。」
さくらは俊哉がそんな風に思っていてくれたなんて、思ってもいなかったけれど、その気持ちはうれしかった。
「俊哉、ありがとう。でも、これは自分でちゃんと考えたいんだ。心配させちゃったのはゴメン。それと、告白については…、もう少し時間ちょうだい。」
「うん。わかった。いっつも笑顔のさくらが見たいなんて俺の我がままだけど、やっぱりさくらは笑顔が似合うよ!」
「ははっ、調子いいな~。」
「あ、さくらが笑った。」
「うるさ~い。」
やはり忙しいようですぐには返事が返ってこなかったが、夜になってようやく返信があった。
『来週末までは、忙しいけどその後の日曜だったら時間とれるよ。』
『ほんと?じゃあ、啓太の家に行っていい?』
『いいよ。朝の10時くらいならちゃんと目が覚めてると思うから、そのくらいに来れる?』
『うん。じゃあ10時行くね。』
『わかった。』
なんだか最近は啓太に助けてもらってばかりだなぁとさくらは何だか居心地が悪い。
最初はさくらが啓太を一人前の男にしてあげる約束で恋愛ごっこを始めたはずなのに、今は立場が逆転してしまっている。
男女の関係に関しては、さくらの方が経験豊富だが、やはりそれ以外の部分は啓太の方が大人であることは自然なことだ。
それが分かっていても、元来負けず嫌いの性格が災いしてイライラしていまう。
私が啓太にしてあげてることって、啓太にとってはあんまり必要ないことなのかな~?
これまで自分の生き方に疑問を持ったこともなければ、自信がゆらぐこともなかったのに、最近はそれが片っ端から崩れていくような気がして、さくらは今までに味わったことのない不安を抱いていた。
そんな気持ちのままでも、高校の友人たちとは薄っぺらな付き合いしかしなくて済むから、いつもと様子が違うとは誰も気付く者はいなかった。一人を除いては。
その一人というのは、例の俊哉だった。
次の日の放課後、遊びに行く気もしないし、かといって家に帰っても面白いことなんて何も無い。
自分の席で携帯をいじっていると、俊哉が声を掛けてくる。
「さくら、なんか元気なくない?」
「べつに。」
平静を装い答えるさくらに、俊哉はさらに食い下がる。
「やっぱ、なんか変だよ。悩みとかあるんだったら、俺聞くよ。」
「なにもないってば!」
さくらは思わず声を荒げてしまう。
「ほら、やっぱり変だ。さくらがそんなふうに怒るなんて今までなかったし。」
「うるさいな。ほっといて。」
核心をつかれ、さくらは思わずカッとなり、教室を出て行こうとする。
「ま、待ってよさくら。」
教室を出たところで俊哉はさくらを引き止める。
「俺、そんなに頼りない?」
「そんなことないけど…。」
「俺、さくらが困ってるの見てるとつらいんだ。この間もなんか変だったし。」
「…。」
「俺には言いにくい?」
「…。」
「俺、今まで言えなかったけど…。さくらが好きだ。」
「えっ…。」
「さくらは真剣に付き合うのとか嫌いみたいだから、言えなかったけど、さくらが困ってるのに何の力にもなれない存在なんて、俺嫌なんだ。」
「そ、そんなこと、きゅ、急に言われても…。」
「それは、ごめん。っていうか、こんなの急なのが普通でしょ。告白してんだから。」
俊哉は開き直ったのか、普段とは別人の様に大胆だ。
「俊哉って、けっこうはっきり言うんだね。」
塞ぎこんだ表情だったさくらの顔が少しほころぶ。
「俺、さくらに嫌われたくなかったから、適当なつきあいに合わせてたけど、ほんとはそんな風に付き合いたくなかった。それは、俺が卑怯だったと思ってる。でも、今みたいにさくらが困ってるときに頼ってもらえない存在なんて、もう嫌なんだ。」
「うん…。」
さくらは俊哉がそんな風に思っていてくれたなんて、思ってもいなかったけれど、その気持ちはうれしかった。
「俊哉、ありがとう。でも、これは自分でちゃんと考えたいんだ。心配させちゃったのはゴメン。それと、告白については…、もう少し時間ちょうだい。」
「うん。わかった。いっつも笑顔のさくらが見たいなんて俺の我がままだけど、やっぱりさくらは笑顔が似合うよ!」
「ははっ、調子いいな~。」
「あ、さくらが笑った。」
「うるさ~い。」
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