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それぞれの事情.04
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家に帰ると、啓太は昨日のお礼がてら、さくらに今日のデートの結果をメールする。
『昨日は服選びに付き合ってくれてありがとう。その甲斐あってオシャレになったねって褒められちゃったよ。』
『へえ、よかったね。それで、付き合うことにしたの?』
『ううん。そういう話はしなかった。僕が彼女と別れたって話したら、急に遠慮しはじめて。』
『ふ~ん。意外だね。あんなにガツガツしてたのに。』
『高森さん、積極的なんだけど、けっこう気遣いが出来る人だから。別れたばかりだからって、気を使ってくれたみたい。』
『そう。じゃあ、初彼女はお預けだね。』
『そうだね。』
『また、困ったことあったら、連絡して。』
『うん。ありがとう。おやすみ。』
『おやすみ。』
文面では平気そうにしていたさくらだったが、その心中は決して穏やかではなかった。
啓太の恋愛を応援してあげなくちゃいけないのに、付き合う事にはならなかったと聞いて何故だかホッとしている自分に戸惑う。
(啓太とは恋愛ごっこのはずなのに。あたしどうしちゃったんだろう…。付き合える男なんていっぱいいるのに、どうして啓太のことがこんなに気になっちゃうの…。)
さくらは気を許したら気づいてしまいそうな本当の気持ちを知るのが怖くて、必死に目を逸らした。
さくらはあいかわらずの平和な特に不満の無い毎日にイライラしていた。
(何か面白いこと無いかな~。啓太との恋愛ごっこは高森さんの事があるからお預けだし。)
そんなさくらに友達の一人である池崎俊哉が声をかけてくる。
「さ~くら、今日ひま?」
「あ、うん。別に用はないけど。」
「久しぶりにどう?」
こういう誘い方の時は、適当に遊んでそのあとエッチもという意味だ。
さくらは啓太と出会う前はそんなつきあいを平気でしていたけれど、最近はあまり気乗りがしなくて、そういう遊びからは遠のいていた。
「う、うん。そうだね、久しぶりに遊ぼっか。」
俊哉の父親は飲食店を何店舗も経営していて、彼はいわゆるおぼっちゃんだから、いつもおごってくれるし、さくらには色々買ってくれたりもする。
性格は悪くないし見た目も悪くないけど、さくらにとっては遊び相手の一人でそれ以上でもそれ以下でもない存在だ。
しかし、俊哉の方はちょっと事情が違っていた。
実を言えば、俊哉は真剣にさくらの事が好きなのだけれど、さくらは誰かと真剣に付き合うスタイルを好まないということを十分理解している。
だから、不本意ではあるけれど、さくらのそばにいられる唯一の手段としてこういう関係で付き合っていた。
本当は自分の気持ちを打ち明けて、ちゃんと付き合いたいけれど、そんな事を言ってしまえばウザがられて話をすることさえも出来なくなってしまうかもしれない。
そんな事になるくらいなら、どんな関係でもいいから、さくらをつなぎとめておきたかったのだ。
授業が終わると二人はいつもたまり場になっているゲームセンターへ行ってクレーンゲームをやったり、プリクラを撮ったりしてぶらぶらと過ごした。
そしてそれにも飽きてくると、そろそろホテルに行こうかと、どちらも口に出して言う訳ではないけれど、遊びを切り上げてホテルに向かう。
二人は慣れた様子でエントランスをくぐると適当に部屋を決めエレベーターで部屋に向かう。
特に甘い雰囲気になることもなく、普通に雑談を交わしながら部屋に入ると、二人ともテキパキと制服を脱ぎシャワーを浴びた。
啓太のときとは違い、さくらはベッドに横になると、そのまま動こうとしない。
それはいつもの事で俊哉は一人爆発しそうな興奮を悟られないようにしながら、さくらの体を愛撫する。
その間も、さくらは余り声をあげる事もなく、俊哉にされるがままだった。
もう自分が限界に近づいてきた俊哉はさくらに「入れるよ。」と一応確認をとる。
「うん。」とだけさくらは答え、俊哉を待つ。
俊哉の方はといえば、本当はもう愛撫をしているだけでイッてしまいそうなくらいなのだが、そんな情けない姿をさらしてしまったら、もう二度と体を合わせることができなくなってしまうかもしれないという恐怖から、必死でこらえていたせいで、挿入して数回で限界に達してしまう。
「ん、く…。は、はあ、はあ…。」
俊哉の呼吸だけが静かな部屋に響き渡る。
「さくらの中よかったよ。」
そんな俊哉の言葉に、さくらは思わす背を向けてしまう。
(今までこんな気持ちになったことなかったのに…。なんだか、すごく辛い…。)
「さくら、どうした?具合でも悪い?」
俊哉は心配してくれるが、自分でもどうなっているのか分からないさくらは、どう言っていいのか言葉が見つからない。
「ううん。大丈夫。でも、もう帰るね。」
さくらの機嫌を損ねるような事をしてしまったのではないかと気が気ではない俊哉は、
「ねえ、俺何か悪いことしちゃったかな?」と不安げにきいてくる。
「そんなんじゃない。ただ、ちょっとだけ気分が悪くなっちゃっただけ。気にしないで。」
「そんなこと言ったって、気になるよ~。」
「女の子はいろいろあるの。」
「そ、そうなんだ。」
そんな風に言われるとそれ以上は追求出来ない。
俊哉はすっきりしない気持ちのまま支払いを済ますと、ホテルを出た。
「家まで送っていこうか?」
「ううん。大丈夫。ほんと、今日はなんか、ゴメン。」
「そんな…。でも、また遊ぼうよ。ホテルとかはなしでもいいからさ。」
「うん。わかった。」
少し笑顔になったさくらに、俊哉はホッとする。
「じゃあ、気をつけて。」
「うん。じゃあね。」
『昨日は服選びに付き合ってくれてありがとう。その甲斐あってオシャレになったねって褒められちゃったよ。』
『へえ、よかったね。それで、付き合うことにしたの?』
『ううん。そういう話はしなかった。僕が彼女と別れたって話したら、急に遠慮しはじめて。』
『ふ~ん。意外だね。あんなにガツガツしてたのに。』
『高森さん、積極的なんだけど、けっこう気遣いが出来る人だから。別れたばかりだからって、気を使ってくれたみたい。』
『そう。じゃあ、初彼女はお預けだね。』
『そうだね。』
『また、困ったことあったら、連絡して。』
『うん。ありがとう。おやすみ。』
『おやすみ。』
文面では平気そうにしていたさくらだったが、その心中は決して穏やかではなかった。
啓太の恋愛を応援してあげなくちゃいけないのに、付き合う事にはならなかったと聞いて何故だかホッとしている自分に戸惑う。
(啓太とは恋愛ごっこのはずなのに。あたしどうしちゃったんだろう…。付き合える男なんていっぱいいるのに、どうして啓太のことがこんなに気になっちゃうの…。)
さくらは気を許したら気づいてしまいそうな本当の気持ちを知るのが怖くて、必死に目を逸らした。
さくらはあいかわらずの平和な特に不満の無い毎日にイライラしていた。
(何か面白いこと無いかな~。啓太との恋愛ごっこは高森さんの事があるからお預けだし。)
そんなさくらに友達の一人である池崎俊哉が声をかけてくる。
「さ~くら、今日ひま?」
「あ、うん。別に用はないけど。」
「久しぶりにどう?」
こういう誘い方の時は、適当に遊んでそのあとエッチもという意味だ。
さくらは啓太と出会う前はそんなつきあいを平気でしていたけれど、最近はあまり気乗りがしなくて、そういう遊びからは遠のいていた。
「う、うん。そうだね、久しぶりに遊ぼっか。」
俊哉の父親は飲食店を何店舗も経営していて、彼はいわゆるおぼっちゃんだから、いつもおごってくれるし、さくらには色々買ってくれたりもする。
性格は悪くないし見た目も悪くないけど、さくらにとっては遊び相手の一人でそれ以上でもそれ以下でもない存在だ。
しかし、俊哉の方はちょっと事情が違っていた。
実を言えば、俊哉は真剣にさくらの事が好きなのだけれど、さくらは誰かと真剣に付き合うスタイルを好まないということを十分理解している。
だから、不本意ではあるけれど、さくらのそばにいられる唯一の手段としてこういう関係で付き合っていた。
本当は自分の気持ちを打ち明けて、ちゃんと付き合いたいけれど、そんな事を言ってしまえばウザがられて話をすることさえも出来なくなってしまうかもしれない。
そんな事になるくらいなら、どんな関係でもいいから、さくらをつなぎとめておきたかったのだ。
授業が終わると二人はいつもたまり場になっているゲームセンターへ行ってクレーンゲームをやったり、プリクラを撮ったりしてぶらぶらと過ごした。
そしてそれにも飽きてくると、そろそろホテルに行こうかと、どちらも口に出して言う訳ではないけれど、遊びを切り上げてホテルに向かう。
二人は慣れた様子でエントランスをくぐると適当に部屋を決めエレベーターで部屋に向かう。
特に甘い雰囲気になることもなく、普通に雑談を交わしながら部屋に入ると、二人ともテキパキと制服を脱ぎシャワーを浴びた。
啓太のときとは違い、さくらはベッドに横になると、そのまま動こうとしない。
それはいつもの事で俊哉は一人爆発しそうな興奮を悟られないようにしながら、さくらの体を愛撫する。
その間も、さくらは余り声をあげる事もなく、俊哉にされるがままだった。
もう自分が限界に近づいてきた俊哉はさくらに「入れるよ。」と一応確認をとる。
「うん。」とだけさくらは答え、俊哉を待つ。
俊哉の方はといえば、本当はもう愛撫をしているだけでイッてしまいそうなくらいなのだが、そんな情けない姿をさらしてしまったら、もう二度と体を合わせることができなくなってしまうかもしれないという恐怖から、必死でこらえていたせいで、挿入して数回で限界に達してしまう。
「ん、く…。は、はあ、はあ…。」
俊哉の呼吸だけが静かな部屋に響き渡る。
「さくらの中よかったよ。」
そんな俊哉の言葉に、さくらは思わす背を向けてしまう。
(今までこんな気持ちになったことなかったのに…。なんだか、すごく辛い…。)
「さくら、どうした?具合でも悪い?」
俊哉は心配してくれるが、自分でもどうなっているのか分からないさくらは、どう言っていいのか言葉が見つからない。
「ううん。大丈夫。でも、もう帰るね。」
さくらの機嫌を損ねるような事をしてしまったのではないかと気が気ではない俊哉は、
「ねえ、俺何か悪いことしちゃったかな?」と不安げにきいてくる。
「そんなんじゃない。ただ、ちょっとだけ気分が悪くなっちゃっただけ。気にしないで。」
「そんなこと言ったって、気になるよ~。」
「女の子はいろいろあるの。」
「そ、そうなんだ。」
そんな風に言われるとそれ以上は追求出来ない。
俊哉はすっきりしない気持ちのまま支払いを済ますと、ホテルを出た。
「家まで送っていこうか?」
「ううん。大丈夫。ほんと、今日はなんか、ゴメン。」
「そんな…。でも、また遊ぼうよ。ホテルとかはなしでもいいからさ。」
「うん。わかった。」
少し笑顔になったさくらに、俊哉はホッとする。
「じゃあ、気をつけて。」
「うん。じゃあね。」
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