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それぞれの事情.02
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啓太は、さくらに付き合ってみたらと言われたものの、どうやって切り出したものかと、さっきから携帯とにらめっこしている。
しかし、こういう事に割く時間があるなら研究の方に回したいというのが啓太の今の正直な気持ちだ。
意を決して高森さんにメッセージを送る。
『今週、都合が良い日があったら、一緒に食事でもどうですか?もしOKなら、都合のいい日を教えてください。』
一瞬の迷いはあったものの、思い切って送信する。とりあえず今できることはやった。
啓太は急いで研究室に戻ると遅れを取り戻すべく机に向かった。
一段落したところで携帯を見ると、高森さんから返信が届いていた。
『もちろんOKです。明日の夜はどうですか?』
「ふう~。明日ね。だけど、お店はどうやって決めたらいいのかな。こんなことまでさくらちゃんに聞いたらまずいよね。」
自分ひとりで何とかしたいところだが、啓太の恋愛スキルはまだ普通のの大学生レベルまで達していないのが現実だ。
情けないと思いつつもまたさくらに助けを求めることになってしまった。
『高森さんと夕食に行くことになったんだけど、お店ってどうやって探したらいいのかな?』
送信してしばらく待っていると、さくらから返信が帰ってくる。
『ネットの食べログで調べるとオススメのお店がいっぱい出てくるよ。キーワードに女子、オシャレ、創作料理で検索したらそれに合ったお店が出てくるから、その中から行きやすい場所とかで決めればいいよ。あと、予算とかも書いてあるからチェックしてね。それと、服装なんだけど…、あたしがつきあってあげるから今日買いに行かない?』
ファッション…。これまた啓太の苦手な分野だ。
動きやすさと洗濯のしやすさを最も重視しているせいで、普段は夏はTシャツに短パン、冬はトレーナーにジーンズと決っていた。
それよりもちゃんとした格好となるといきなりスーツになってしまい、中間のちょっとオシャレな服装というものは全く持っていなかった。
(仕方ない、これもさくらちゃんに頼るしかないな。)
『悪いけど、お願いできる?5時くらいに僕んちに来れるかな?』
返信にはOKと記されていた。
なんとか捻り出した短い時間で啓太は買い物を済まさなければならない。
家の前で待っていると、向こうからかけてくるさくらが目に入る。
「ゴメン、ちょっと遅れちゃった。」
「い、いいよ。僕の方こそ急にお願いしちゃってゴメンね。」
「いいの、いいの。オシャレに興味が出るなんてスゴイ進歩じゃん。」
「そ、そう言う訳じゃないんだけど…。さすがに、Tシャツとジーパンじゃマズイかなと…。」
「もう、テレない、テレない!」
さくらは啓太の背中をバンバン叩くと、早速お目当てのショップへ向かう。
先日の美容院も印象が良かったが、今日連れられてきたメンズショップも啓太の雰囲気に合ったナチュラルテイストで親しみやすいお店だった。
ショップ店員さんとさくらが一緒に見繕ってくれたものを試着してみる。
試着室から出ると、さくらが満足気な表情で上から下まで舐めるように眺めて、店員さんと何やらワイワイ盛り上がっている。
いいのか悪いのかちっとも分からない啓太は、たまらず尋ねた。
「ねえ、どう、かな?」
「どうかなって、啓太、メチャクチャ似合ってるの分かんないの?店員さんと、モデルやれるかもって盛り上がってたのに。」
「う、うそでしょ?こんなんでいいの?」
啓太のためにさくらと店員さんが選んだコーディネートは、薄いブルーとホワイトのストライプのボタンダウンシャツに白いスリムジーンズにジャージ素材の紺色のジャケットだ。
爽やかでインテリっぽい雰囲気が啓太には似合いすぎて、笑ってしまうくらいだ。
と言っても、黒ぶちメガとその奥の睫毛ビッシリの艶かしい瞳に黒髪(ついこの間例の美容室でカットしたばかり)、スリムで180cm近い身長の啓太がそれなりの服装をすれば誰が見てもイケメンの仲間入りだ。
そんな啓太を見て嬉しいはずなのに、胸の奥が締め付けられるように苦しくて、さくらは戸惑う。
(啓太を一人前にして、誰かと付き合えるような男にする楽しいゲームのはずだったのに、私最近楽しめなくなってる…。)
「さくらちゃん、よく分からないけど、これに決めるよ。僕余り時間が無くて…。せっかく来てもらったのに、今日は夕ご飯ご馳走できそうに無いんだ。ごめんね。今度、ちゃんとお礼するから。」
「そんなのいいよ。啓太がいい男になるのが私の楽しみなんだから!」
明るく振舞ってはみたものの、心の中はすっきりしないままだった。
じゃあ、と言って啓太は研究室に舞い戻って行った。
(あ~あ、行っちゃった。高森さんとどうなるのかな~。な~んて、うまくいってくれないと私はいつまでも恋愛ごっこしてないといけなくなっちゃうんだから…。困るんだから…。)
ままならない自分の気持ちを吹っ切るように、さくらは友達がたむろしてるであろう街に吸い込まれていった。
しかし、こういう事に割く時間があるなら研究の方に回したいというのが啓太の今の正直な気持ちだ。
意を決して高森さんにメッセージを送る。
『今週、都合が良い日があったら、一緒に食事でもどうですか?もしOKなら、都合のいい日を教えてください。』
一瞬の迷いはあったものの、思い切って送信する。とりあえず今できることはやった。
啓太は急いで研究室に戻ると遅れを取り戻すべく机に向かった。
一段落したところで携帯を見ると、高森さんから返信が届いていた。
『もちろんOKです。明日の夜はどうですか?』
「ふう~。明日ね。だけど、お店はどうやって決めたらいいのかな。こんなことまでさくらちゃんに聞いたらまずいよね。」
自分ひとりで何とかしたいところだが、啓太の恋愛スキルはまだ普通のの大学生レベルまで達していないのが現実だ。
情けないと思いつつもまたさくらに助けを求めることになってしまった。
『高森さんと夕食に行くことになったんだけど、お店ってどうやって探したらいいのかな?』
送信してしばらく待っていると、さくらから返信が帰ってくる。
『ネットの食べログで調べるとオススメのお店がいっぱい出てくるよ。キーワードに女子、オシャレ、創作料理で検索したらそれに合ったお店が出てくるから、その中から行きやすい場所とかで決めればいいよ。あと、予算とかも書いてあるからチェックしてね。それと、服装なんだけど…、あたしがつきあってあげるから今日買いに行かない?』
ファッション…。これまた啓太の苦手な分野だ。
動きやすさと洗濯のしやすさを最も重視しているせいで、普段は夏はTシャツに短パン、冬はトレーナーにジーンズと決っていた。
それよりもちゃんとした格好となるといきなりスーツになってしまい、中間のちょっとオシャレな服装というものは全く持っていなかった。
(仕方ない、これもさくらちゃんに頼るしかないな。)
『悪いけど、お願いできる?5時くらいに僕んちに来れるかな?』
返信にはOKと記されていた。
なんとか捻り出した短い時間で啓太は買い物を済まさなければならない。
家の前で待っていると、向こうからかけてくるさくらが目に入る。
「ゴメン、ちょっと遅れちゃった。」
「い、いいよ。僕の方こそ急にお願いしちゃってゴメンね。」
「いいの、いいの。オシャレに興味が出るなんてスゴイ進歩じゃん。」
「そ、そう言う訳じゃないんだけど…。さすがに、Tシャツとジーパンじゃマズイかなと…。」
「もう、テレない、テレない!」
さくらは啓太の背中をバンバン叩くと、早速お目当てのショップへ向かう。
先日の美容院も印象が良かったが、今日連れられてきたメンズショップも啓太の雰囲気に合ったナチュラルテイストで親しみやすいお店だった。
ショップ店員さんとさくらが一緒に見繕ってくれたものを試着してみる。
試着室から出ると、さくらが満足気な表情で上から下まで舐めるように眺めて、店員さんと何やらワイワイ盛り上がっている。
いいのか悪いのかちっとも分からない啓太は、たまらず尋ねた。
「ねえ、どう、かな?」
「どうかなって、啓太、メチャクチャ似合ってるの分かんないの?店員さんと、モデルやれるかもって盛り上がってたのに。」
「う、うそでしょ?こんなんでいいの?」
啓太のためにさくらと店員さんが選んだコーディネートは、薄いブルーとホワイトのストライプのボタンダウンシャツに白いスリムジーンズにジャージ素材の紺色のジャケットだ。
爽やかでインテリっぽい雰囲気が啓太には似合いすぎて、笑ってしまうくらいだ。
と言っても、黒ぶちメガとその奥の睫毛ビッシリの艶かしい瞳に黒髪(ついこの間例の美容室でカットしたばかり)、スリムで180cm近い身長の啓太がそれなりの服装をすれば誰が見てもイケメンの仲間入りだ。
そんな啓太を見て嬉しいはずなのに、胸の奥が締め付けられるように苦しくて、さくらは戸惑う。
(啓太を一人前にして、誰かと付き合えるような男にする楽しいゲームのはずだったのに、私最近楽しめなくなってる…。)
「さくらちゃん、よく分からないけど、これに決めるよ。僕余り時間が無くて…。せっかく来てもらったのに、今日は夕ご飯ご馳走できそうに無いんだ。ごめんね。今度、ちゃんとお礼するから。」
「そんなのいいよ。啓太がいい男になるのが私の楽しみなんだから!」
明るく振舞ってはみたものの、心の中はすっきりしないままだった。
じゃあ、と言って啓太は研究室に舞い戻って行った。
(あ~あ、行っちゃった。高森さんとどうなるのかな~。な~んて、うまくいってくれないと私はいつまでも恋愛ごっこしてないといけなくなっちゃうんだから…。困るんだから…。)
ままならない自分の気持ちを吹っ切るように、さくらは友達がたむろしてるであろう街に吸い込まれていった。
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