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ホストと女医は診察室で.36
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「慶子さん、兄さんとはホストと客の関係?それ以上はないって言える?」
「ど、どうしてそんなこと聞くの?」
「答えられないってことは、それ以上の関係なんだね」
「わ、私は何も言ってないじゃない」
「兄さんとそんな関係なら、僕と会ってもさぞかしつまらないだろうね。兄さんは女性でも男性でもうまく楽しませることが出来る人だからね」
「ちょっと、和希さん、どうしたの?」
我を忘れて話し続ける和希に、慶子は取りつく島がなかった。
「心の中ではバカにしてたんだろう?僕のつまらない話を聞いて笑ってたんだろう」
「和希さん!!」
慶子はひときわ大きな声で叫んだ。
和希は驚いて慶子の顔を見つめた。
「ごめん、言い過ぎた。今、タクシーを呼ぶから」
和希はタクシー会社に電話をして、慶子のいる部屋に戻ってくるとソファに座り両手で顔を覆った。
「みっともないところ見せちゃったな…」
「和希さんのことバカになんてしてないです。お兄さんのこと黙ってたのは私が悪かったわ。ごめんなさい。私、実は、お兄さんのお店でも飲みすぎてすごく迷惑をかけちゃったから、出来れば言いたくなかったの。お兄さんは確かに人気者だし、人を楽しませるのが上手だけど、私は和希さんと話しててもちゃんと楽しいわ。信じてくれる?」
慶子は真剣な気持ちで言った。
「ありがとう。取り乱してごめん。僕は兄のことが大好きだけど、同じ位兄に対してコンプレックスがあるんだ。兄は僕のことなんか全く気にしないで生きてるけど、僕はいつでも兄と自分を比較してしまう」
「そう…、でも、和希さんはまだ社会に出たばかりなんだもん。先を歩いてるお兄さんのことが気になるのは当り前よ」
「慰められると余計に凹むな…」
「もう、甘えん坊ですね。まあ、私たちは友達なんでしょ?今日は帰るけど、また誘ってください」
慶子はマンションの前にタクシーが来たのを確認すると、和希に別れを告げて部屋を出た。
ああ~、自分から「また誘って」なんて余計なこと言っちゃった。
もう、和希さんがあんな風に取り乱すから悪いんだぞ!
いや、違った、その前に自分が和希を聖夜と間違えたのが失敗だった。
いやいや、その前にお酒を飲みすぎたのがそもそもの失敗だ。
結局自分が悪いのだ。
慶子は和希とは違う意味で自己嫌悪に陥りながら家に帰った。
慶子はああ言ってくれたけど、和希は自分のあまりに情けない発言に気持ちは落ち込むばかりだ。
「くそっ!」
和希は冷蔵庫から缶ビールを取り出すと一気にそれを飲み干した。
聖夜はホストの仕事を少しずつ減らし、いよいよ自分の店のオープンに向けて動き始めていた。
物件探しから人材集め、商材の買い付け、そして様々な手続きとやることは山積みだ。
そんな忙しい最中にもふと慶子のことが頭をよぎる。
慶子自身も独立開業している身だ。
当然こういった手順を踏んで開業にこぎつけたのだ。
あの細い体で患者は勿論のことスタッフに対しても全責任を負っているわけだ。
そう思うと自分が診察を受けたときの慶子の必死な形相が愛おしく思えてくる。
「ど、どうしてそんなこと聞くの?」
「答えられないってことは、それ以上の関係なんだね」
「わ、私は何も言ってないじゃない」
「兄さんとそんな関係なら、僕と会ってもさぞかしつまらないだろうね。兄さんは女性でも男性でもうまく楽しませることが出来る人だからね」
「ちょっと、和希さん、どうしたの?」
我を忘れて話し続ける和希に、慶子は取りつく島がなかった。
「心の中ではバカにしてたんだろう?僕のつまらない話を聞いて笑ってたんだろう」
「和希さん!!」
慶子はひときわ大きな声で叫んだ。
和希は驚いて慶子の顔を見つめた。
「ごめん、言い過ぎた。今、タクシーを呼ぶから」
和希はタクシー会社に電話をして、慶子のいる部屋に戻ってくるとソファに座り両手で顔を覆った。
「みっともないところ見せちゃったな…」
「和希さんのことバカになんてしてないです。お兄さんのこと黙ってたのは私が悪かったわ。ごめんなさい。私、実は、お兄さんのお店でも飲みすぎてすごく迷惑をかけちゃったから、出来れば言いたくなかったの。お兄さんは確かに人気者だし、人を楽しませるのが上手だけど、私は和希さんと話しててもちゃんと楽しいわ。信じてくれる?」
慶子は真剣な気持ちで言った。
「ありがとう。取り乱してごめん。僕は兄のことが大好きだけど、同じ位兄に対してコンプレックスがあるんだ。兄は僕のことなんか全く気にしないで生きてるけど、僕はいつでも兄と自分を比較してしまう」
「そう…、でも、和希さんはまだ社会に出たばかりなんだもん。先を歩いてるお兄さんのことが気になるのは当り前よ」
「慰められると余計に凹むな…」
「もう、甘えん坊ですね。まあ、私たちは友達なんでしょ?今日は帰るけど、また誘ってください」
慶子はマンションの前にタクシーが来たのを確認すると、和希に別れを告げて部屋を出た。
ああ~、自分から「また誘って」なんて余計なこと言っちゃった。
もう、和希さんがあんな風に取り乱すから悪いんだぞ!
いや、違った、その前に自分が和希を聖夜と間違えたのが失敗だった。
いやいや、その前にお酒を飲みすぎたのがそもそもの失敗だ。
結局自分が悪いのだ。
慶子は和希とは違う意味で自己嫌悪に陥りながら家に帰った。
慶子はああ言ってくれたけど、和希は自分のあまりに情けない発言に気持ちは落ち込むばかりだ。
「くそっ!」
和希は冷蔵庫から缶ビールを取り出すと一気にそれを飲み干した。
聖夜はホストの仕事を少しずつ減らし、いよいよ自分の店のオープンに向けて動き始めていた。
物件探しから人材集め、商材の買い付け、そして様々な手続きとやることは山積みだ。
そんな忙しい最中にもふと慶子のことが頭をよぎる。
慶子自身も独立開業している身だ。
当然こういった手順を踏んで開業にこぎつけたのだ。
あの細い体で患者は勿論のことスタッフに対しても全責任を負っているわけだ。
そう思うと自分が診察を受けたときの慶子の必死な形相が愛おしく思えてくる。
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