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ホストと女医は診察室で.03
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「はい、わかりました」
聖夜はすっかりホストの顔になって、フロアへ出て行った。
「どうだ、真也。仕事は楽しいか??」
「いえ、まだ、こなすので精一杯で。でも、聖夜さんみたいに、いっぱい指名がもらえるホストになれるよう頑張ります」
「真也は、ベビーフェイスだから、聖夜みたいな色気より、甘さをだしていくといいと思うな」
「あ、ありがとうございます」
かつての名ホスト?の常川店長にありがたいアドバイスをもらい、真也もサポートとしてフロアに出て行った。
「るっせえよ。こんなのは怪我でも何でもねえよ」
「でも、血が出てるじゃないですか」
「こんなもん、なめときゃ治るんだよ。はい、終わり」
「聖夜さん、そんなことしちゃダメですって」
まるでデジャヴの様な光景がクリニック慶子の待合室で繰り広げられていた。
「あ、あの、ほかの患者さまのご迷惑になりますので…」
恐る恐る声を掛ける看護師に、「す、すみません」と謝るのはやはり真也だった。
「お前が悪いんだぞ、このくらいでビビって腰抜かすから」
「だ、だって、あんな大男に殴られて、大丈夫な訳ないじゃないっすか。骨折れてたら大変ですよ」
一向に静まらない二人を見かねて、佐原婦長が診察の順序を変えるよう看護師に指示した。
「次の方、どうぞ」
扉を開けて入って来た聖夜の顔を見て、慶子はまたしても声を上げそうになってしまった。
医師である以上、どんな病気やケガも一通り診察することはできるが、一応看板は美容皮膚科だ。
なぜ、聖夜の様な患者が自分のクリニックを訪れるのか、慶子には正直分からなかった。
行くなら、整形外科が正解だろう。
「今日は、どうされましたか?」
「こんなケガ、なんでもねえって言うのに、また、こいつが大騒ぎするから、仕方なく来てやったんだよ」
「随分、腫れが酷いですし、裂傷もありますね。まず、レントゲンを撮ってから、傷の手当をします」
「はあ?めんどくせえな。なんでレントゲンなんか撮るんだよ。こんなケガなんでもねえんだって。なあ、医者なら見ただけでだいたい分かるだろ?」
「また、そんな無茶言って。すみません、先生…。ほら、聖夜さん、お願いだから言うこと聞いてくださいよ~」
真也は必死に聖夜をなだめようとする。
「い、医者だからって、何でもかんでも見ただけで分かる訳じゃありません!」
慶子は医療を侮辱したような聖夜の態度に、またしても我を忘れ声を荒げてしまった。
慶子は本当だったら、こんなたちの悪そうな連中と関わりあいにはなりたくなかったが、医師と患者という関係では仕方がない。
しかし、美容皮膚科の看板を掲げているクリニックに、皮膚科や美容が目的ではなく、一度目はただの風邪、そして今回は顔面を殴られたと思われるケガでの来院だ。
男性が来ることも当然想定内だったが、こんな形でホストがしばしばやって来ることになることなど、一ミリも想像していなかった。
しかし、医師としてやれるだけのことはやろう。
真面目なくらいしか取り柄がない慶子は、気を取り直して、この面倒な患者に向き合おうと決めた。
「聖夜さん。あなたホストなんですよね。レントゲンでちゃんと見てみないと、あなたの顔が元通りにならないかもしれませんよ。商売道具であるお顔がそうなってしまってもいいんですか」
聖夜はすっかりホストの顔になって、フロアへ出て行った。
「どうだ、真也。仕事は楽しいか??」
「いえ、まだ、こなすので精一杯で。でも、聖夜さんみたいに、いっぱい指名がもらえるホストになれるよう頑張ります」
「真也は、ベビーフェイスだから、聖夜みたいな色気より、甘さをだしていくといいと思うな」
「あ、ありがとうございます」
かつての名ホスト?の常川店長にありがたいアドバイスをもらい、真也もサポートとしてフロアに出て行った。
「るっせえよ。こんなのは怪我でも何でもねえよ」
「でも、血が出てるじゃないですか」
「こんなもん、なめときゃ治るんだよ。はい、終わり」
「聖夜さん、そんなことしちゃダメですって」
まるでデジャヴの様な光景がクリニック慶子の待合室で繰り広げられていた。
「あ、あの、ほかの患者さまのご迷惑になりますので…」
恐る恐る声を掛ける看護師に、「す、すみません」と謝るのはやはり真也だった。
「お前が悪いんだぞ、このくらいでビビって腰抜かすから」
「だ、だって、あんな大男に殴られて、大丈夫な訳ないじゃないっすか。骨折れてたら大変ですよ」
一向に静まらない二人を見かねて、佐原婦長が診察の順序を変えるよう看護師に指示した。
「次の方、どうぞ」
扉を開けて入って来た聖夜の顔を見て、慶子はまたしても声を上げそうになってしまった。
医師である以上、どんな病気やケガも一通り診察することはできるが、一応看板は美容皮膚科だ。
なぜ、聖夜の様な患者が自分のクリニックを訪れるのか、慶子には正直分からなかった。
行くなら、整形外科が正解だろう。
「今日は、どうされましたか?」
「こんなケガ、なんでもねえって言うのに、また、こいつが大騒ぎするから、仕方なく来てやったんだよ」
「随分、腫れが酷いですし、裂傷もありますね。まず、レントゲンを撮ってから、傷の手当をします」
「はあ?めんどくせえな。なんでレントゲンなんか撮るんだよ。こんなケガなんでもねえんだって。なあ、医者なら見ただけでだいたい分かるだろ?」
「また、そんな無茶言って。すみません、先生…。ほら、聖夜さん、お願いだから言うこと聞いてくださいよ~」
真也は必死に聖夜をなだめようとする。
「い、医者だからって、何でもかんでも見ただけで分かる訳じゃありません!」
慶子は医療を侮辱したような聖夜の態度に、またしても我を忘れ声を荒げてしまった。
慶子は本当だったら、こんなたちの悪そうな連中と関わりあいにはなりたくなかったが、医師と患者という関係では仕方がない。
しかし、美容皮膚科の看板を掲げているクリニックに、皮膚科や美容が目的ではなく、一度目はただの風邪、そして今回は顔面を殴られたと思われるケガでの来院だ。
男性が来ることも当然想定内だったが、こんな形でホストがしばしばやって来ることになることなど、一ミリも想像していなかった。
しかし、医師としてやれるだけのことはやろう。
真面目なくらいしか取り柄がない慶子は、気を取り直して、この面倒な患者に向き合おうと決めた。
「聖夜さん。あなたホストなんですよね。レントゲンでちゃんと見てみないと、あなたの顔が元通りにならないかもしれませんよ。商売道具であるお顔がそうなってしまってもいいんですか」
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